第32話

昼休みに入って、私は手にお弁当箱を抱え、一人教室を出た。


向かう場所は田端くんのいる教室だ。


他クラスを訪問したことがないので若干緊張しつつ、教室を覗く。

だが、田端くんの姿はどこにもない。



「誰か探してる?」



声を掛けられる。見れば、このクラスの男子生徒が一人、こちらをみて首をかしげていた。



「た、田端くんって…」


「ああ、湊?あいつ他の女子と出てったよ。一緒に食べるんじゃないかな。昼」


「あ、そうなんですか」



夏樹の言う通り田端くんはどうやらモテるらしい。

既に他の女子とご飯を食べに行ってしまったらしいので、私は弁当を抱えたまま教室へ戻る。



「あれ、睦月。なんで戻ってきてんのよ。田端くんは?」


「先約があったみたい」


「あちゃー」



私の言葉に夏樹は額を押さえる。

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