第27話

「俺は、これとかこれが好きだよ。バトル物なんだけど」


「おお、なんかかっこいいね」


「うん。バトルシーンがね、迫力あって好きなんだ。人間関係もしっかり描かれてて」



好きなものの話をする人はどんな人でも輝いて見える。

嬉しそうに好きな漫画のプレゼンをする田端くんに思わず私は笑みが漏れた。



「って、ごめん。一方的にしゃべっちゃって」


「ううん。聞いてて楽しかったから全然。

じゃぁこれ、読んでみようかな。全部読んだら感想会でもしようよ」


「!、うん!あ、なら俺も太宰治とか読んでみようかな…」


「眠くなっちゃうんでしょ?無理しなくていいよ」


「でも、俺も品川さんの好きなもの楽しみたいから」



田端くんは太宰治の作品を一冊手に取る。

手に取ったのは人間失格。私が太宰治の作品の中で一番好きな小説。

でも小説初心者にはちょっと難しい話だ。

すぐに寝ちゃうといった彼を思うならもっと楽に読める小説を進めるべきなのだろうけど、私の好きなものを楽しみたいと言ってくれたのが嬉しくて、何も言わなかった。



「時間はかかると思うけど、絶対最後まで読むから…読み切ったらこれも感想会しようね」



そういって笑ってくれた田端くんは間違いなくいい人で

嬉しい反面、やっぱりちょっと後ろめたかった。

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