第2話

「いたいのいたいの、とんでいけー。」


「そんなに棒読みで言う人、はじめて見た。」


「効果ありそう?」


「別に、どこも痛くないからなあ。」


私を主に苦しめているのは、重要な決断をいきなり背負わされているというこの状況であって、頭痛はその副産物に過ぎない。

つまり、悩みの元凶をなんとかしない限り、私の体調は芳しくはならないのだ。



「それなら、よかった。元気出たんだ。」


「自分のお陰だって、ちょっと思ってるでしょ。」


「ちがうの?」


「ううん。きみのそういうところは、愛すべきところだと思うよ。」


「ほのだけ愛してくれれば、それでいいかな。」


「控え目だね、少年。」


ほんとうに生産性がない。時間だけ無為に費やしている分、マイナスと言ってもいいだろう。


「ねえ、今何考えてるの。」



悠の顔が不意に近づいて、触らずとも滑らかな肌の質感まで正しく認識できた。鼻先が触れ合いそう。触れそうで、触れない。

私たちはいつもそういう距離を保っている。


マイナス同士は弾き合ってしまうのだろうか。



「反発し合うのはかなしいから、やっぱり悠はプラスがいいなって。」


「ほのがマイナス?」


「そう。」


「じゃあ僕もマイナスでいいよ。」


「どうしてよ。」


「だって、マイナス同士、かけたらプラスでしょう?」

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