第12話 望遠鏡

「キィ……あの望遠鏡……」


 いてもいいかな……


「みーみ、望遠鏡のことでしゅね」


 すぐにキィが答えてくれた。


「あの望遠鏡、みーみの想像に反応するだけではなくて、みーみのためのものなんでしゅ」


 聞いてもいいことらしく、キィは続けて話し出してくれた。


「あたちたちの星の生きている鉱石で、テレパシーを強く導くものでしゅ」


 キィたちの星……テレパシー……

 キィたちはもしかして……


「みーみが何か想像したりしているときにエネルギーを感じてそれをあたちたちに知らせてくれたり、みーみに危険が及ぶと防御反応が働くのでしゅ」


 防御反応?

 返事をするように望遠鏡のくまがピカピカと光り出した。


「あの子もみーみを守るって言ってましゅ」

「僕たちもみーみを守りましゅ」


 キィとクゥが真剣な声で私に言ってきた。


「みーみ、あの望遠鏡、持ち歩いてほしいんでしゅ」

「みーみを強く感じることのできる石でしゅ」


 二人がとても必死に言ってくるのが感じ取れた。


「わかった……! 望遠鏡……この子、ペンダントトップになるかな」


 そう私が言った途端に、くまの形の望遠鏡の鉱石がペンダントの形になって私の首に自然にかかってきた。ペンダントトップはちゃんとくま型になっている。

 びっくり……!


「ふふふ、その子もみーみが大しゅきなのでしゅ」


とキィが耳元でささやいた。

 この子、本当に生きてる……!


「しょぉでしゅよ。生きてるんでしゅ」


 キィが楽しそうに言った。

 今はこれがキィたちがいてくれる実感。Macで見れる私のホームページとその制作元のデータ。通帳に記帳されたデザイン代、そしてこの子、望遠鏡のくまのペンダントトップ。


「みーみ、あたちたちはいつもいつもみーみを見守っていましゅ」

「何があっても僕たちはいましゅ」

「しぇかいも、あたちたちも、いつもいつも一緒にいるって、そのこと、忘れないでくだちゃい」


 キィ?クゥ?

 わかってる、いつもいつもみんながいてくれてるって、私、わかってるよ?




       ☆




(これで、もしも俺たちの声が聞こえなくなっても、南はやっていける準備ができたな)

(しぇかい……はいでしゅ……)

(しぇかい……)

(世界……)

(世界……)

(世界……)

(世界……)

(世界……)


(南に説明している時間はない……な……これから南は気付くはずだ)




       ☆

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