第11話 プレゼント

「南」

「世界、何?」

「俺らからのプレゼント」

「Macを開いて」

(初めて聞く声……?)

「初めてじゃない、南、うじゃうじゃいるって感じてただろ? その中の一人だよ」


 優しく優しく世界に丁寧に言われた。


「南、僕はリュイ」

「私はルシファ」


 なんてかわいい声。天使たちの声は私にとって安らぎそのものだ。


「ずっとずっと声をかけたかった」


とリュイ。


「私たちもこれからキィやクゥのように南ちゃんに関わります」


とルシファ。


 Macを開くとSafariが自動的に開いて、ホームページが立ち上がった。

 これ、もしかして私のお店?


「ああ、そう」


と世界。


「南、僕たちが作りました。南のお店です」

「このホームページは生きています。南ちゃんが話しかけると何でも自動的に動いてくれます」


 リュィとルシファが嬉しそうにホームページについて説明をし始めた。

 私はWebが唯一まだ踏み込んでいない苦手分野だった。でも、欲しかったのだ、自分のネットでのお店が!


「わかっていたので作ったの」

「南、どうですか」


 リュイとルシファが私の両肩に乗っているのがわかる。ああ、本当にどうやってこの感触が伝わってくるんだろう。かわいい……かわいい感触。


「どうかなんて、もう、もろに好みのデザイン」


 私は声にして、大きな声ではしゃいで言った。

 両手で肩の温かさを抱えるように手を回した。

 温かい……早く本当に皆にふれられるようになるといいな……


「リュイとルシファはきみの想像がとても好きなんだ」


 世界が私たちを包んでいるかのように語りかけてくる。

 依頼が来てる?ホームページ上の依頼ボタンがピコピコと動いているのが目についた。

「この店は自動的に営業をしてくれているんだ」

「南ちゃん、うさぎのイラストの発注がきています」


ルシファがそう言いながら自動的に依頼主の発注表をデスクトップ上に出してくれた。

 私はその依頼主が求めている内容をチェックして……


「あっ、南、そのまま!」


 えっ?リュイ?何?

 ポロンと音が鳴って自動的にMac上の3Dソフトのストラタが立ち上がった。

 うさぎがストラタ上に現れてくる。


「これ! 」


 私は思わず画面を見張りながら大きな声を出す。


「南のうさぎ」


 リュィのかわいい声と同時に無色だったストラタがモデリングされてカラーのうさぎに仕上がり画面上に浮かび上がる。


「南ちゃんのうさぎさんを今、リュイがストラタ上に描き出しました」

とルシファ。


「リュイとルシファはこういうことができる」


 世界がすごいことをさらっと説明してくれた。


「もちろん、万が一リュイとルシファがいなくても、自動的にこの店は3Dソフトを使って描き出すことができるようになっているよ、きみの脳の発想に反応するようにプログラミングされているんだ」

「すごい、しばらくストラタを使っていなかったからどうしようと思っていたら、あっという間に……」


 本当に美しいモデリングで、リュィたちの制作能力がかなり高いことが見てとれた。

 本棚の望遠鏡のくまがピコピコと光っている。私が興奮しているから?


「みーみ、これからは徹夜をしなくてもいっぱいお仕事はできましゅよ。いっぱいいっぱい貯金もできましゅよ!」


 キィとクゥがいつものようにすり寄ってきた。天使たちみんなの声も響いて私の周りを囲んできて……

 みんな……


「このお仕事は南ちゃんが著作権を持っていいお仕事で、百万円のお仕事です。このキャラクターからいろいろな動きをモデリングして発展していけるお仕事です」


 ルシファがまたもやかわいい声で私にその先の仕事を示唆しさしてきた。

 百万円! そんなに?

「キャラクター代としては安いでしゅが、いい条件でおそらくお直しがほとんど入らないお仕事でしゅよ」


 キィが嬉しそうにほおずりをしてきた。


「自分のホームページで入ってくるお仕事なんて、何でもありがたい。ありがとう、リュイ、ルシファ、みんな」


 温かい天使たちの声と感触の中、次々と仕事が受注されているのが目に入った。こんなに入ってくるもの?と思ってホームページをよく見てみると、すごい、……仕事例に私が今まで思い描いていたキャラクターのモデリングがずらっと並んで紹介されていた。


 リュイとルシファは私の幼少期のイメージみたいなものも全部見えている?


「みーみ、リュイとルシファはみーみのところに出てくる前から準備していたのでしゅ」


 うん、キィ、これを見ればわかるよ。感謝感謝。


「いずれそんなことはしなくても、きみは存在するだけで仕事になって行く。取り急ぎ、だ」


 世界が意味深なことを言って気配が現れたと思ったらまたすぐに消えた。

 私、リュイやルシファの想像したものもデビューさせたい。

 これは私の仕事じゃなくてみんなの仕事…… あとでちゃんと内訳をして。リュイやルシファ…… あとみんなにもサポート料がちゃんと入るようにしたい!


「南ちゃん」

「南」

「みーみ」

「みーみ」


 リュィとルシファ、キィとクゥが私に抱きついてくる感触。

 いい仕事ができそう。みんなにあとでソフトの使い方とかを聞こう。自分でも何でもできる状態になっていなきゃ!


「了解です、南ちゃん」

「了解、南」

 ルシファとリュイがまた私の両肩に乗ってきたのがわかった。




       ☆




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