第17話

 この日から何故か一条は健介に付いて回る様になった。

別段、話しをするわけでもなく、只健介に張り付いている。

 数日が過ぎた頃、健介はとうとう我慢出来なくなって

「一条君、どうして僕に付き纏うの?」

と言ってしまった。

すると今度は逆に一条に

「じゃあ聞くけど、最近健介はどうして明陽兄さんと一緒じゃないの?」

と言われてしまった。

「それは……」

健介は口籠る。

「やっぱり九条さんに何か言われたんだね?」

健介の様子に一条がまた問いかけた。

「九条さんは関係無い……」

確かに九条に言われたのは事実だ。

しかし、それが原因では無い。

自分が釣り合わないことは健介自身か一番よく分かっていたからだ。

だから、尚さら他人に言われて明陽から離れたと思われたくなかった。

「それなら明陽兄さんと一緒にいてあげてよ」

「…………」

健介は俯いたまま何も答えなかった。

「明陽兄さんは今までずっと九条さんに配慮して“お気に入り”を持たなかった、それどころか他人に興味を示した事さえ無かったんだ……その兄さんが用も無いのに声を掛けるなんて、よっぽど健介のことが好きなんだよ?皆んな兄さんのお気に入りになりたがってるのに……」

「悪いけど、僕はお気に入りになったつもりはないし、そんなの……荷が重過ぎる……」 

一条を見直った健介は少し辛そうな表情だ。

「分かった。もういいよ、健介にはガッカリだ……」

一条はそう言うと健介から離れて行った。

そして、それ以降健介の後を付け回すことはなかった。








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