第37話 襲撃
―――三人称視点―――
夜。
路地裏に立つ男達は、酒場から出てくる3人組を見ていた。
「ふん。ターゲットはあの男1人か。簡単な仕事だ」
男の内の1人は、腰の剣を抜いて後ろに立つ依頼人にそう告げる。
「ああ。だが他の2人は殺すなよ。俺の奴隷にするんだから」
話しかけられて返答するのは、昼間にレースケと話した奴隷商人だ。
1週間前にアイナをレースケに売った商人でもある。
彼は自分のコネを使って、暗殺や窃盗などの犯罪を行って金を稼ぐ犯罪ギルドと呼ばれる悪人たちと連絡を取り、殺しの依頼を行った。
殺すのは、レースケだ。
奴隷商人は、自分が損をしたことへの責任転嫁、そしてアイナを再び手に入れようとするため、レースケを殺そうとしている。
戦闘系スキルも戦うための技術もない商人では、冒険者であるレースケを殺すことなどできはしないとわかっている。
だからこうして金を払って殺人の依頼した。
(しかし手痛い出費だ)
暗殺の依頼料は高い。
商人としての能力が低く貯金の少ない彼からすれば、簡単に出せる費用ではなかった。
だがこれも、アイナを手に入れて売ることができればはした金だ。
ならばこれは先行投資と自分を納得させて、暗殺のための高額費用を払っていた。
それに、奴隷商人にとっては思わぬ幸運が1つあった。
それはレースケの所持するもう1人の奴隷の存在だ。
「なんだ、あいつ。もう1人女がいたのか。しかもアイナと同じくらいの美人だ。これはいいぞぉ。あいつも俺のものにして売れば、たんまりと稼げる」
奴隷商人は、ラティカの身分をよく知っているわけではない。
だがアイナと親しげに話すその様子から、彼女もレースケの奴隷だと決めつけていた。
そして、レースケを殺せば他2人の奴隷が手に入るとも思い込んでいた。
「女が2人か。見た目はかなりいいな。あの男を殺したら、俺たちもあの女どもで楽しむとするかな」
「ひゃはは! あのレベルの女は初めてだ」
「高級娼館にもいないレベルの上玉だな。あれをマワせるなら、それを依頼料にしてもいいくらいだぜ」
「1人殺して2人とヤれる。お得な仕事だ」
「いまのうちに順番決めとこうぜ」
暗殺者は全員で5人。
チームで動いている暗殺者たちだ。
1人1人の質の低さを数で補っている。
「おい。俺の奴隷だぞ。余計なことをしようとするな!」
奴隷商人は、レースケの隣にたつ2人に手を出そうとしている男たちに憤慨した。
(くそう。せっかく暗殺者を雇ったのはいいが、こんなごろつきどもだなんて)
暗殺の依頼料は高い。
商人としての能力が低く貯金の少ない彼は、優秀な暗殺者を雇うことができなかった。
だから犯罪ギルドの紹介してきた暗殺者の中でも、一番価格の低い暗殺者を雇うことしかできなかったのだ。
まるでチンピラのようなものたちくらいしか雇うことができなかった。
それでもこの奴隷商人からすれば、決して軽くない出費なのだが。
「いいかお前ら。絶対にあの2人には手を出すなよ。商品としての価値が下がる」
そう注意したところ。
「は?」
と、暗殺者たちは不満を露わにした。
「別にお前にそんなこと決める権利なくない?」
「目的は男を殺すことだろ。それさえすればいいだろうがよ」
「殺し以外でお前の注文聞く必要ある?」
奴隷商人は不機嫌になった暗殺者たちからすごまれる。
男たちの言葉は、倫理的・法律的にはともかくとして、殺し屋としては正当だった。
目的は殺しであり、それさえ達成すれば他は文句を言われる筋合いはない。
仕事はこなしているのだから。
もちろんある程度弁えた殺し屋ならばそのような無駄でリスクのあることはしない。
だがそういう手合いの殺し屋は高い。
そして奴隷商人は、そのような殺し屋へ払う高額費用を持っていなかった。
つまりは安価の殺し屋を雇った結果、質の悪い殺し屋が来たという、ただそれだけのことだ。
不利益を被ったとしても、自業自得という他ない。
「ぐ……」
奴隷商人は彼らに囲まれて冷や汗を流す。
「そ、それは……その」
「ああ?」
「……わ、わかった。少しだけなら、いいだろう。だがやりすぎるなよ。売るために、まともに生活できるくらいにはいてもらわなければいけないんだからな」
「わーってるって」
「俺ら節度もってやるからさ」
「なんならおっさんにも貸してやろうか? 俺らが散々犯した後で」
ギャハハハと暗殺者たちは笑う。
(クソ! クソ! クソ! なんでこんな程度の奴ら相手に俺が下手に回らなければいけないんだ! もっとまともな暗殺者はいないのか!)
奴隷商人は悔しさで胸がはちきれそうになる。
(それもこれも、全てあのガキのせいだ。あのガキが俺からアイナを買ったことから、全部始まっているんだ。死ね! 死ね! こいつらにぶっ殺されちまえ!)
内心で怒りを燃やしながらも、奴隷商人は暗殺者たちの言うことに頷くのみだった。
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