第4話 初仕事


 さて。この世界での初仕事を開始しますか。


 俺が受けたクエストはゴブリン退治。

 5体倒して、討伐証明部位として耳を持って帰ればいい。 


 冒険者の依頼の中でも簡単な方の仕事だ。

 

 これより簡単な仕事は街中での雑用しかない。

 雑用はもらえる金が少ないので、こちらのクエストにした。


 森の奥へと進んでいくと、ゴブリンがいた。


 低学年の小学生なみの小さい体躯に、こん棒らしき木の棒を持っている。

 受付嬢から聞いた通りの姿だ。



「ひとまず、あいつを殴り殺すか」


 俺は駆け出し、ゴブリンまでの距離を一気に詰める。

 『神拳』のおかげで身体能力が上がっている。

 一瞬でゴブリンの元へ到着し、その勢いのままに拳を振り下ろした。


 ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく、その頭ははじけ飛んだ。


「うわっ。グロイ……」

 

 頭がはじけ飛び、その中身が周りに散乱する。


「もうちょっと綺麗に殺せばよかったかな。いや、殴り殺すしかできないんだから、それは無理か?」


 頭を適度な強さで殴っていれば、原型をとどめたまま殺せるかもしれないが。

 手加減が難しいんだよな。

 適度な強さってどれくらいだ?


 無駄なこと考えて動きが悪くなるくらいなら瞬殺した方がいい。

 強いスキルを持っているとはいえ俺は新人冒険者。

 何に足元をすくわれるかわからないのだから、余計なことを考える暇はない。


 このまま全力で殴って瞬殺する方向で行こう。


 討伐証明部位の耳を拾ってポケットに入れる。


「ポケットに入れるのもなんだか衛生的に嫌だなあ」


 このクエストの達成報酬を貰ったら、入れ物を買うか。



 とにかく、討伐数はあと4体だ。


 ゴブリンは群をつくる習性がある。

 1体いたということは、近くに何体もいる可能性が高い。

 すぐ近くに他のゴブリンもいるはず


 探しながら森の中を歩いていると、ゴブリンを2体ほど見つけた。

 一気にかけて行って、まずは1体を殴り殺す。


 こちらに気づいたが、そのころにはもう遅い。

 振り向いて声を上げた時にはもうすでに殺し終えていた。

 

 もう一方のゴブリンは仲間を殺した俺に対してひるまず襲い掛かってくる。


 いさましいな。


 仲間の敵討ちだと息巻いているのか。

 それとも単純に脅威に対する防衛本能なのか。


 そんなどうでもいいことを考えていられるくらいには余裕だった。


 ゴブリンの攻撃は遅い。

 あのチンピラのリーダー格よりも遅い。


 そうか……あいつゴブリンよりも強かったんだな。

 だったらカツアゲなんてしてないで、ゴブリン殺しで生計を立てれば痛い目を見ずに済んだのに。


 残念な奴よ。



 チンピラよりも遅いゴブリンの攻撃を避け、ゴブリンの腹を蹴る。


 腹ははじけ飛び、内臓とか血とかがそこらじゅうに飛び散った。



「うおっ。きたねぇ」



 俺は軸足にしていた方の足で地面を思い切り蹴り飛ばし、大きく後ろに飛ぶ。


 普通ならバランスを崩す挙動だが、『神拳』のおかげで身体能力のあがっている俺には問題ない。

 何事もなかったかのようにストンと着地できた。


「あっぶねー」


 正直、今の瞬間は焦った。

 異世界に来てから一番焦ったまである。


 ゴブリンの内臓と体液なんてどう考えても汚くて不衛生だろ。

 避けれてよかった。


 殺した2体のゴブリンの耳を回収し、さらにゴブリンを探す。


 次も同じようにゴブリンが2体ほどいたから、殴り殺して耳を回収した。

 

 これで依頼達成だ。

 さあ、ギルドに戻ることにしよう。




 街まで戻って、俺はギルドで依頼達成の報告を行う。

 

 さっき冒険者の登録をしてくれた受付嬢に対応してもらった。


「えっ、もう達成されたのですか?」


「ああ。簡単だったぞ」


 受付嬢は、俺がゴブリンを5体倒してきたことを知ると目を丸くして驚いていた。


「いえ、たしかにそれほど難しい依頼ではありませんが。新人ならば結構時間がかかるものですのに……」


「そうかな? まあゴブリンも割とすぐ見つかったし、運が良かったのかな」


「ぜったい運だけではないですよ。ゴブリンを見つけても、戦う時に苦戦する新人は多いです。弱い魔物とはいえ、相手は死に物狂いで殺しに来ますからね」


「あー、まあ、そうなのかな」


 死に物狂いなんだ。

 一撃で殺していたからそういうのはよくわからなかった。



「ソロで5体のゴブリンをこんなにも早く討伐する新人なんて、私が見た中でも初めてです。あ、もしかして昔どこかで兵士をやっていて、魔物の討伐の経験があるのですか?」


「やってないよ。冒険者になって初めて魔物と戦ったくらいだ」


 こちとら昨日まで魔物との戦闘どころか人と喧嘩すらしたことないです。



「でしたら、もしかしてすごいスキルをもっていたり? ひょっとしてCランクとか、もしかしてBランクとか!」


「はは、それは秘密ですよ」


「ええ~もったいぶりますねえ。いつか聞かせてくださいよ?」


 受付嬢の言葉を笑って受け流す。


 本当はBやCどころかSランクのスキルを持っている。

 このSランクというのがおそらく破格のスキルであることは、先ほどの王の言葉からもなんとなく理解できていた。

 


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