Ⅲ-9

部屋の中は詩樹たちの部屋より2~3倍あるかというくらい広かった。



「「……………」」


「ん?どないしたん?黙り込んで」


「ひろいな」


「あーせやろ?ウチもこの部屋ランク、初めて入ったときびっくりしてん。

これでBランクやって!」


寮の部屋ランクは6段階有り、S.A.B.C.D.Eと別れており、学業の成績等によってランクが上がるようになっている。

一年の初めはEである。


「これでBか...。

頑張れよ詩樹。

お前が1位か2位あたりとらないとランク上がんねぇぞ」


「……何故だ?」


「俺は全教科75点を取る予定だから。

そしたら十数位くらいになって

二人平均十位にはなれるだろ」


「………人任せか」


「まあ取り敢えず座り。

何か飲むか?紅茶か珈琲か炭酸、

どれがええ?」


「俺は紅茶で」


「……ブラックで」


「りょーかい。

ちょっと待っててや」


そう言って凪はキッチンの方へ行った。

衛登たちは近いソファに座る。


「あの人テンション高いな。

お前と正反対で」


「………」


「聞こえてんで~。

ウチが何でテンション高いかってゆうとなぁ、

ま――」


「な~ぎ~、ただいま~。

………あれ?(久し振りの)お客さん?」


ガチャリと扉を開けて、制服を着た、薄紫の長髪ストレートの細身な女子が入ってきた。


「聞こえたで!

久し振りってなんや!

確かに人来るん久し振りやけど、

言わんでいいやん」


「本当の事だしいいでしょ?

しかも男の子二人も。

どっちか頂戴」


「そんなんちゃうわ!

そんな事ばっか言うんやったらまた毎日カボチャとピーマンと茄子料理にすんで!」


「え゛!!…ごめんなさいごめんなさい、

それだけは許して...。

毎日カボチャピーマン茄子...地獄だぁ...」



「………この激しく落ち込んでる人は?」


「ん?ああ、ウチの同室の北崎礼花や。

…まあ見ての通りカボチャとピーマンと茄子が苦手なんや...。

もう、れ~ちゃん、許すから泣くん止め」


凪はキッチンから出てきて、

礼花の近くに寄った。


「…ほんとに?」


「そうや。カボチャは週一、茄子ピーマンは月一にするから、な?」


「え?(カボチャ…週一"も"?)」


「そうや、いいやろ」


圧を込めて話す凪。


「え、あ、うん。あ...、いきなりキャラが壊れてる」


「…それは...、まだ取り戻せる。

取り敢えず深呼吸しー」


「…うん、すぅ~~っ、はぁ~~っ。

…ごめんなさいね。

…ふぅ、で...、このお二方は?」


「黒い方が渡邉詩樹で、

紺色の方が神崎衛登や。

二人とも一年やって」


「で、トラップの事で来たと...。

そうよね、渡邉詩樹」


そう言って礼花は詩樹を指差す。


「……何故俺だと?」


「制服が少し焦げてる。

入学初日からそうなるのはあまりないから。

凪?私のキャラ戻ってる?」


「ん~、

多分ちゃんと戻ってるで。

で...、ウチは飲みもん作ってる途中やったな。」


凪はキッチンに戻った。



(今現在俺また空気~♪)


会話に参加できなかった衛登。

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