第14話 閑話 エピーソード「ゼロ」 フェリスの記録
フェリスは何も感じなくなっていた。この世界に「飽き」ていた
フェリスは、この世界が始まる前から存在し、この世界が終わった後も存在する。
管理者としてこの世界を動かし始めたときには夢も希望もあった。
自分が生み出した世界に期待し、人に感情移入もする。お気に入りの場所や人物に肩入れしたこともあるし、気に入らない場所や人に天罰を下したこともある。
しかし人は弱すぎた。知恵も力もない。何度、いや何千、何万回もの絶滅を繰り返す。
フェリスは魔力を追加した――――
魔力を使ったポーションの作り方を教え、魔力を使った生活しやすい環境を与えた。
それでも全滅を繰り返す。
フェリスは獣人を作った――――
弱すぎる人の上位互換だ。人と比べて強力な身体能力を持っていた。
人類の生存能力は確実に上がったがマシになっただけだ。
全滅の回数こそ大幅に減ったが全滅するたびに文明がリセットされる。
フェリスはエルフを作った――――
何度もリセットされる文明を発展させるために長寿のエルフを追加した。
これにより知識が継続されやすくなり、この世界で初めていくつかの「国」ができた。また国ができたことにより人類は集団としての力を得、全滅はほぼ亡くなった。
フェリスはドワーフを作った――――
有用な「国」を増やすべく、作業を効率化できる道具が作れるドワーフを追加した。
これにより国は増え続け、文化や人口はフェリスの手を借りずとも発展、増加することになった。
フェリスは安堵した――――
自分が作った世界が初めて自分の手を離れ動き始めた。
大きな建物ができ、大規模な街が作られ、人々が増え始めた。
最初は農具だった、次に狩猟道具、そして最後に武器ができた。
――――戦争が始まり人類は全滅した。
フェリスは絶望した――――
この世界に期待することをやめた。
世界が終われば新しく作る、そしてまた世界が終われば新しく作る。
そこには感情も希望も期待もない。ただの作業。
人や動物や植物といった区別すらない。全てはただ管理する物。
予想の範囲で発展し絶滅する。
何も目新しいこともない。ただの繰り返し。
フェリスはいつものように「世界の亀裂」を修復していた。
そこに人が落ちた。無視しても構わないエラー。
別のいくつかの管理者から連絡が入った。
「「「お前の物がうちに紛れ込んできた」」」
引き取りに行った。四つは戻ってきた。
残りの一つはいくら待っても連絡が来ない。無視しても良かった。それは気まぐれだった。繰り返しの日々に飽き、ほんのちょっと外を探索してみる。そんな軽い気持ちだった。
いくつもの世界を見た。
自分の世界と似た世界だった。
魔力があり、人々が集団化して戦闘に勝ち残って生き延びる。
魔法の運用方法や種族こそ違いがあれ、似たような世界。
それでも残りの一つは見つからなかった。
世界の墓場に行くことにした。
ここは管理者が存在しない―捨てられた世界―が集められた場所。
打ち捨てられた世界に生き物は存在せず、荒涼とした地面が広がるだけ。
こんなところに残りの一つは居ない。
そう思いつつ移動していたとき、きれいな色をした世界を見つけた。
魔力が存在しないのに見たことがない文明が発達し、人しかいない世界。
フェリスは驚いた。
最初に作ろうとして失敗した世界。いや管理者が居ない事を考えると、もっと厳しいだろう。それなのに、今の自分の世界より文明が栄えている。
その世界の中に最後の一つがいた。
最後の一つはマリと名乗った。この世界の話を聞かせてもらった。
自分の管理する物と最後に会話したのはいつだろう。
物との会話は楽しかった。作ってくれた食事はとても美味しかった。
フェリスの中で物はマリになった。
ただ、残された時間はあまりなかった。マリは老いていた。
時間がかかりすぎたのだ。
連れ戻すために管理者に連絡を取るにも管理者がいない。
――――無理やりこじ開けた。
マリを連れてきて自分の世界を巻き戻すことにした。
自分の世界の全てのものより、マリの方が大切だからだ。
代わり映えのしないこの世界を数十年巻き戻したところで大差はない。
ここまでは迷いなく一気にやった。
そして
この不思議な世界は奇妙なバランスで成り立っているようだ。
―人が人を動かし世界を動かす―
「世界を動かし人を動かす」フェリスからすると理解しがたい考え方だ。
人を使い世界を動かすために、ありえないほど細かく人が管理されていた。
管理者がいないので何か問題が起きたときに修正もできない。奇跡の上に成り立っているようなこの世界は、やり直しも効かないだろう。できるだけ影響を小さくしないとこの世界が滅びかねない。
悩んだフェリスはマリの中の「ユーゴ」を見つけた。
そしてフェリスはいつのまにか「飽きる」という感情を忘れていた。
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