第9話 異世界の職業は「商人」

次の日、宿の食堂で朝食を取って街へ出かけた。


朝食は歯に悪そうな硬いパンに塩味のスープの組み合わせ。

朝食のメニューや料理のことも事前にハーミットに聞いていたので、お湯だけ用意してもらい、溶かすだけのたまごスープとお得用の袋入りクロワッサンで済ませる。

スープはみんなも欲しがったので全員分渡した。


「今日は何をするんだ?」

「商業ギルドで商人に登録して、この前のやつ売ってみるよ」


商品が売れるかどうか事前にハーミット達に確認してもらっていた。


「たぶん大丈夫なはずだ。他には?」

「ポーションが欲しいかな。できれば全種類」


ポーション代は持ち込んだ商品がいくらで売れるかにもよるが、足らなかったらハーミットたちが建て替えてくれることになっている。


「なあ、なんで商人なんだ?冒険者の方がいいだろ」


ガルルが頬杖つきながらつまらそうに聞いてくる。


「日本人舐めるなよ!戦闘どころか殴り合いの喧嘩したことあるやつなんて数えるぐらいしかいないんだぞ!俺も含め犬にも負けるやつがほとんどだ。戦いになったら俺はすぐ死ぬぞ!」

「お、おぅ、なんか悪かった。そこまでとは思っていなかった」


前にテレビで罠にかかったイノシシにとどめを刺す映像を見たが、死に物狂い襲いかかってくる動物にさえ勝てる気がしない。罠にかかっている動物相手でもプロである猟師さんの死亡事故もあるぐらいだ。平和な日本で育ったが人達が殺気を持って襲ってくる相手にまともに戦えるはずがない。


「ガルルも悪気があった訳じゃないんだ。獣人の村は物々交換が多いから商売はあまり得意じゃないんだ。」


見かねたハーミットが仲裁に入ってくれた。

気を取り直して、終わったら宿に集合することにして皆と別れる。


俺と同行するのはハーミット。

商業ギルドは街の中心部に位置し宿から少し距離がある。


昨日は余裕がなくほとんど街を見ることができなかったが結構な数の人が行き交っていて、獣人やドワーフっぽい人もちらほら見かける。少なくとも俺の住んでいる街よりも昼間人口は多そうだ。


歩いている人々の髪の色は定番の金、銀だけじゃなくピンクやブルー、赤に紫とコスプレ会場かと思うほどカラフルだ。服装は落ち着いた色合いの服が多く、思ったよりは小綺麗で生活の余裕を感じさせる人も多い。


家々もいかにも中世ヨーロッパという感じではあるが、変な匂いがするわけでもなく、窓辺に花を飾ったり庭に花壇があったりとこちらからも生活の余裕を感じさせる。

ハーミットから聞いた領民思いの領主というのは間違いないのだろう。


石畳の通りをすぎると大きな建物が見えた。


「あれが商業ギルドだ」


商業ギルドは三階建ての建物で駅前の銀行ぐらいの大きさ。

入口近くには馬車が数台止まっていた。

中に入ると市役所の受付みたいに仕切られた場所があり、ハーミットに連れられるままその一つに向かう。


「いらっしゃいませ」


受付の女性が丁寧に対応してくる。


「商業ギルドに登録したいのですが」

「初めてのご登録ですか?」

「はい」

「説明が必要ですか?」

「お願いします」


受付の女性に淡々と説明を受ける。


ギルドのランクは五つあって登録できるのは星二から五までの四つ。

星二はいくつもの店舗を保有するような大店。

星三は宿や商店、食堂など店舗営業をする人用。

星四は無店舗営業の露天や、この街以外でも馬車を使った移動の販売や買い取りができる。

星五は露天や商業ギルドと取引できる。


商業ギルドと取引するにはランクは関係ないが必ず登録する必要がある。

登録ランクは星一以外は制限はなく、新規で星二の契約もできる。

ただし、登録や更新に金銭が必要で払えない場合は登録抹消になる。


星二は登録に白金貨一枚、更新料が一年で大金貨七枚。

星三は登録料金貨三枚、更新金貨一枚、星四は登録大銀貨一枚、更新銀貨五枚。

星五は登録・更新ともに無料。


星五はこの街の独自の制度で、街に住む人々が自由に売買できるようにと今の領主が就任したときに新しく出来た制度。かなりゆるい制度だが制限事項が二つあり、一つは街の入場料の免除がないこと。もう一つは一度登録を抹消されると星五には二度と登録できないこと。

ちなみに星一は国家間をまたぐような大きな商店で国家の認証が必要。


――入場料の免除が最大の目的だからここは星4だな。

事前の情報で大銀貨が一万円ぐらいだから登録一万円に更新料五千円か。入場料が五百円だったから年間十回以上ならお得になる計算ね。


代金をハーミットに建て替えてもらいサクッと登録を済ませる。


「あと、取引をお願いしたんですが」

「少々お待ちください。担当に変わります」


さあ、ここから商売開始だ。


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