第28話

彼に目も向けず、作業を続けながらその目的の答えを教えてあげる。





「真帆ちゃん、元気よ。」


「っ、あぁ。」


「忙しいのは分かるけど、ちゃんと会ってあげなさい。」


「今は…」


「無理なら連絡くらいは出来るでしょう?真帆ちゃんが何も言わないからって甘えちゃダメよ。」


「…おう。」





名雲君が小さく笑ったのが気配で分かり、私も眼鏡の下で目を細めて微笑んだ。





「ていうか、お前!ウンコの次はカレーかよ!!もっとマシな色のスカートねぇのか!?」


「ちょっと!今日のお昼カレーにしようと思ってたのにやめてよ!」





作業を止めてボールペンをデスクに叩きつけながら置くと、もう一度名雲君に身体を向け直す。





「誰もカレーがウンコ色なんて言ってねぇじゃねぇか!」


「今言ったじゃん!やっぱバカでしょ!?アンタってほんとバカでしょ!?」


「バカバカ言うな!」


「お食事中の方がいたらどうするのよ!本当、申し訳ありません。」


「お前、誰に謝ってんだよ?」


「マジバカ、マジ猿。」


「おい!猿は関係ねぇだろ!!」


「早く惑星に帰れ!」


「そんな映画あったけど、そんな話じゃねぇし!」


「あれ、ほんと感動するよね。涙がもう止まらない止まらない!次の日あり得ないくらい目腫れたからね。」


「俺も。あれはマジやばかった。」


「やっぱ同類だから共感しちゃうんだね。」


「何度も言うが、俺は正真正銘人間だ!!」


「正真正銘って四字熟語知ってたんだね〜。」


「それくらい知ってるわ!バカにしてんのかお前!!」


「うん。」


「っく、ああぁぁ!!マジ殴りてぇ。」


「名雲君、私もう疲れたから早く出て行って。」





シッシッと追い払うように手を振って、終わりというように名雲君に背を向ける。




ボールペンを走らせる音だけが響き渡る中、後ろで扉が開く音がして閉まる寸前に聞こえた言葉に思わず大きく口に弧を描いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

年下男子に要注意! 憂流 @uru-_-uru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ