第7話「成金商人。救いを求めて」

 村から帰って二人は早々に出かけ、元老院に依頼達成の首を持たしに行き、無事認められたのだった。


「魁!見てみたまえ!先月より給料が高いよ!」

「よかったな」

魁はシャルロッテの給料明細を横から覗き見ながらそう返す。

「……血盟官というのは業績によって報酬が増えるんだな」

「依頼をこなさなきゃ生活は厳しいんだ。血盟官の収入は、ほとんどが業績給だからね。うちの家、ヴィクトリア家は昔、血盟官として名を上げて、爵位まで手に入れたから少しだけ余裕があるけど。今は……先祖に一発ずつ殴られそうだ」

シャルロッテの生まれたヴィクトリア家はかつて血盟官として多大なる功績を残したことで貴族としての地位を手に入れていた。


そのため、シャルロッテが碌に仕事をできなかったとしてもギリギリ平民と同じくらいの生活はできていたのだ。だが、魁のおかげでシャルロッテは二つほど仕事を達成することができ、いつもより多めの収入を得られたのだ。

「これも全部、魁のおかげだ。感謝してもしきれない」

「あぁ、その感謝は受け取っておこう。だが、給金はしっかり払え」

魁は目を見開いて睨むその目には、低賃金に対する恨みが宿っていた。

「う、うん……」

その様子にシャルロッテは引きながら首を縦に振る。


―――ガンガン!


「おーい!開けてくれないか?命の危機なんだぁぁ!」

ドラの向こうからは必死な叫び声に近い声が聞こえてきた。

「まさか……」

シャルロッテはその声の主に心当たりがあるのか、魁が扉を開けている後ろで顔をしかめていた。


―――ギィ


音を立てて扉が開かれると、紳士風の男が立っていた。

「おや、初めて見る顔ですね。ご機嫌よう」

男は羽飾りがついた黒のシルクハットの鍔を片メガネ越しに持ち上げながらそう言ってくる。その態度が妙に、わざとらしかった。

「……最近雇われた魁だ」

「なるほど、貴方が。よろしくお願いしますねカイ君」

そう言って男は手を伸ばしてくる。その袖のボタンにはルビーの装飾がされていた。よく見ると、袖だけではない前立てのボタンにも同じような装飾がされている。帽子やズボンは黒だというのにジャケットは深紅のベルベットで作られており、金糸の刺繍がこれでもかと施されていた。

「あぁ、よろしく頼む」

男を上から下まで見てから魁は握手をする。


「やっぱり君だったか、ラザロ」

シャルロッテは顔に手を当てて呆れたような態度をとる。

「やぁ、久しぶりだね、シャルロッテ!いきなりで悪いんだが困ったことになってね。少々お手を貸してほしんだ」

対して、ラザロと呼ばれた男は両手を広げて仰々しく話しかける。

「今度は何をやらかしたんだい」

「ほどい言われようだね。事実だけど」

嘘くさい傷ついたような顔をするラザロ。

「知り合いか?」

魁が質問をする。

「うん、彼は商人でね。何かと格安で商品を売ってくれるんだ。でも、その分何かと面倒ごとを僕に持ってくるんだ」

そう、このラザロという商人はシャルロッテに食料や血液、衣類などを用意してくれているのだ。おかげで生活費をかなり抑えられているが、こうして問題を押し付けてくるのだ。

「それで何をしたんだい?」

「ちょっとカジノで勝負したんだ。もちろん確率は完璧だったさ。でも、どうやら相手が……イカサマしてたらしくてね」                                                                                                                                                                                                                                                                                          

ラザロは蛇革のロングブーツでコツコツと屋敷内に入ってから、懐から一枚の紙を取り出す。

「その時にちょっと借金を作っちゃってね」

「借金なんて君よく作ってるじゃないか」

シャルロッテはその紙を受け取り、魁も横からのぞき込む。

「いやぁ、確かに借金なんてアクセサリーのようなものですがね。ちょっと額が……」

「十日で十割!?ちょっと法外すぎないかい?」

「ここまで来ると二倍とでも書けばいいものを……」

何度も紙を見直すが十日で元金の五割増えるという意味が書いてあった。

「元々の金額は3000ポンド(約300万円)ですから、あと三日もすれば6000万ポンドになりますね。払えなくはないですが少々痛手ですし、私をだました奴らにやる金なんて1ファーシング(一円)もありませんよ」

ラザロは先ほどまでの余裕の態度を崩して苦虫を潰したような顔をする

「それで僕にどうしろと?」

シャルロッテは顔を上げて聞いてくる。

「君の正義の力を借りたい。血盟官の権力なら可能でしょう。噂の用心棒のお力も借りてね」

「俺も有名になったもんだ」

血盟官は犯罪を犯した吸血鬼の処刑を行う立場だが、その捜査などはある程度特権が認められているのだ。故にこうしてグレーな犯罪調査を血盟官に頼ることはまれにあることなのだ。

「それできちんと見返りはあるんだろうね?」

「もちろん、君には恩がありますからね。謝礼はしますよ」

ラザロは笑顔で答える。

「恩?」

「気にしないでください」

そう言って詮索を防ぐ。魁はそれに気づき、質問を投げかける。

「それで、イカサマカジノを経営している場所と相手は誰なんだ?」

「あぁ、それはね。マフィアだよ、吸血鬼のね」

魁はなるほどと頷く。

「はぁ?なんだいそれ!?」

「どうやら、普通のことではないらしいな」

シャルロッテのさけびに魁はただ事ではないと察した。


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侍と吸血鬼~僕が雇った侍は強すぎる~ 夜野ケイ(@youarenot) @youarenot

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