第15章『光の先へ』

 王宮での式典から一ヶ月が過ぎた頃、アストレア王国は平穏を取り戻していた。

 アークライト遺跡は完全に崩壊し、その跡地には結界が張られていた。

 アポカリプスの残骸を調査するため、フィンを中心とした研究チームが結成されていた。


 レオは王宮の一室に専用の執務室を与えられ、王国の顧問として働き始めていた。

 彼の知識は旧文明の遺物の管理や活用方法の確立に大いに役立っていた。


 エリーシアとの関係も進展し、二人の婚約が正式に発表される予定だった。

 王女と異世界からの訪問者という異例の組み合わせに、最初は反対の声もあったが、レオが世界を救った英雄であること、そして何より二人の強い絆を見て、国王は二人の結婚を認めていた。


 ある静かな夕暮れ時、レオは王宮の塔の上から街を見下ろしていた。

 夕日に照らされたアストレアの街並みは、まるで黄金に輝いているようだった。


「ここにいると思った」


 エリーシアの声が背後から聞こえた。

 彼女は淡い青のドレスに身を包み、金色の髪は風に優しく揺れていた。


「美しい景色だね」レオは微笑んだ。「これが守るべき世界だ」


 エリーシアは彼の隣に立ち、共に景色を眺めた。


 「明日の発表式、緊張している?」

 「少し」レオは正直に答えた。


「でも、君となら何でも乗り越えられる気がする」


 彼女は優しく彼の手を握った。


「私も同じよ」


 二人が静かな時間を共有していると、突然、空が暗く変色し始めた。

 雲が不自然に集まり、紫がかった闇に覆われていく。


 レオは眉をひそめた。

 遠くから、サイレンの音が聞こえ始めた。警報だ。


 ドアが開き、ゼオンが駆け込んできた。

 彼の表情は緊迫していた。


「レオ! エリーシア様!」彼は息を切らしながら言った。


「アークライト遺跡の跡地から異常なエネルギー反応が検出された!」

「まさか……」


 エリーシアが息を呑んだ。

 彼らは急いで会議室へと向かった。

 そこには既に国王とフィン、そして王国の高官たちが集まっていた。


「状況を説明してくれ」


 国王が厳しい表情で言った。

 フィンが地図を広げながら説明を始めた。


「三時間前から、遺跡跡地の地下深くで奇妙なエネルギー波動が検出されています。そして一時間前、このような現象が……」


 彼は窓の外を指さした。空はさらに暗く、渦巻く雲の中から紫の光が漏れていた。


「アポカリプスの残骸が……活性化したのか?」


 レオは緊張した面持ちで尋ねた。

「いいえ」フィンは頭を振った。


「これは別物です。私たちの調査では、アポカリプスの本体は確実に破壊されています」

「では何が?」


 国王が問うた。


「イザークの最後の計画かもしれません」フィンは慎重に言った。


「彼は超越的存在でした。死後もなお、何らかの影響を残した可能性があります」


「調査隊は?」ゼオンが尋ねた。

「連絡が途絶えています」フィンは暗い表情で答えた。


「最後の報告では、地下深くに新たな施設が現れたとのことでした」

「新たな施設?」


 エリーシアが驚いた。


「はい。アポカリプスの下に隠されていた別の施設のようです」


 レオは思案した。


「イザークの真の目的……まだ終わっていないのかもしれない」


 彼はポケットから取り出した新しいクリスタルを見つめた。


「このクリスタルが反応している」


 確かに、クリスタルは微かに脈動し、紫と青の光を放っていた。


「僕が行きます」


 レオは決意を込めて言った。


「危険すぎる」国王が反対した。

「でも、他に誰が行けますか?」レオは静かに言った。


「このクリスタルが鍵になるはずです。それに……」


 彼はクリスタルを握りしめた。


「これは僕とイザークの最後の決着かもしれない」


 エリーシアが彼の手を取った。


「私も行くわ」

「俺も行こう」


 ゼオンが即座に言った。


「私も同行します」フィンも頷いた。


「バルゴは?」


 レオが尋ねた。


「グレイマウンテンからの帰還途中だ」ゼオンが答えた。

「連絡は取れているが、到着までに時間がかかる」


 国王は深く考え込んだ後、重い口調で言った。


「行くことを許可する。だが、娘を頼むぞ、レオ」

「命に代えてお守りします」


 レオは深々と頭を下げた。

 準備は迅速に整えられた。

 特殊部隊が彼らをエスコートし、必要な装備が用意された。

 レオは剣を取り、エリーシアは杖を携え、ゼオンは大剣を、フィンは短弓を準備した。


「出発します」レオは静かに宣言した。


 ◇

 

 アークライト遺跡の跡地は、一ヶ月前とは全く異なる光景だった。

 かつての巨大施設は崩壊し、瓦礫の山となっていた。

 しかし今、その瓦礫の間から紫の光が漏れ出し、空に向かって光の柱が伸びていた。


「以前よりも小規模だが、不吉な雰囲気だな」


 ゼオンが周囲を警戒しながら言った。

 彼らは慎重に瓦礫の間を進み、光の源へと近づいていった。

 警護の兵士たちは周囲を固め、彼らの安全を確保していた。


「調査隊の最後の位置はここです」


 フィンが地図を確認した。


「地下への入口があるはずですが……」


 レオはクリスタルを取り出した。

 それは以前よりも強く輝き、方向を示すように一点を照らしていた。


「あそこだ」


 彼らはクリスタルの導きに従い、瓦礫の間に隠された階段を発見した。

 それは地下深くへと続いていた。


「行きましょう」


 エリーシアが決意を込めて言った。

 地下への道は長く、暗かった。

 壁には古代文明の刻印が施され、時折青い光を放つ配線が走っていた。

 階段を下りること約10分、彼らは巨大な扉の前に立った。


「これは……前に見たことのない扉だ」


 フィンが驚いた声で言った。


「完全に新しい様式です」


 扉の表面には複雑な文様が刻まれ、中央には水晶のような装置が埋め込まれていた。

 レオはクリスタルを扉に近づけた。

 クリスタルと扉の装置が共鳴し、青と紫の光が交錯した。

 重い金属音と共に、扉はゆっくりと開いていった。


「準備はいいか?」


 ゼオンが剣を構えた。

 全員が頷き、彼らは扉の向こうへと足を踏み入れた。

 そこは彼らの想像をはるかに超える光景だった。


 巨大な円形の空間が広がり、その中央には小さな光の球体が浮かんでいた。

 壁面には無数のケーブルや配管が走り、床全体が青く光っていた。

 空間自体がわずかに脈動しているように感じられた。


「これは……次元転移装置?」


 フィンが驚きの声を上げた。

「違う」レオは静かに言った。


「これは『終末』ではなく『始まり』の装置だ」


 空間の中央から、かすかな声が聞こえてきた。


「よく来たな、黒崎レオ」


 光の球体が形を変え、イザークの姿となった。

 前回とは異なり、彼の姿はより明確で、ほぼ実体を持ったように見えた。


「イザーク……」


 レオは警戒しながら前進した。


「まだ生きていたのか」

「生きている、とは言えないだろう」


 イザークは静かに答えた。


「私は肉体を捨て、純粋な意識となった。アポカリプスの破壊の際、私の意識はこの隠された施設に転送されたのだ」

「この施設の目的は?」


 エリーシアが勇敢に尋ねた。

 イザークは彼女を見つめた。


「『リバース』。逆転装置だ」

「逆転?」


 フィンが困惑して尋ねた。


「アポカリプスは世界を変容させる装置だった」


 イザークは説明した。


「だが、それは失敗した。この『リバース』は、別の方法で同じ目的を達成する」


 彼の周囲のエネルギーが強まった。


「時間を逆転させ、大崩壊以前の世界に戻すのだ」

 

 全員が息を呑んだ。


「それは……不可能だ」


 フィンが震える声で言った。


「不可能ではない」


 イザークは冷静に言った。


「次元の壁を超え、時間軸そのものを操作することは、理論上可能だ。それには莫大なエネルギーが必要だが……」


 彼は上方を指し示した。

 空から流れ込む紫の光は、装置へとエネルギーを供給しているようだった。


「空の異常……」ゼオンが理解した。


「エネルギーを集めていたのか」

「そして、最後の鍵が必要だった」


 イザークはレオのクリスタルを見つめた。


「それがお前の持つクリスタルだ」


 レオはクリスタルを握りしめた。


「時間を戻したところで、何が変わる?」

「全てが変わる」


 イザークは信念を込めて言った。


「私は過去に戻り、大崩壊を防ぐ。完璧な世界を構築するのだ」

「それは傲慢です」


 エリーシアが反論した。


「歴史を変えるなんて、誰にもその権利はありません」

「権利?」


 イザークの声が冷たくなった。


「私は千年以上も生き、人類の愚かさを何度も目の当たりにしてきた。もう十分だ」


 彼の周囲のエネルギーが強まり、空間全体が振動し始めた。


「早く止めるんだ!」


 ゼオンが叫んだ。

 レオはクリスタルを掲げ、前進した。


「イザーク、これは間違っている」

「間違い?」


 イザークの目に怒りが宿った。


「お前に何がわかる。千年の苦しみを経験していない者に」

「確かに、千年の苦しみは想像もできない」


 レオは静かに言った。


「でも、だからといって世界の歴史を書き換える権利があるわけじゃない」

「私には責任がある」


 イザークは激しく言った。


「大崩壊は私の実験が原因だった。妻も娘も、多くの命が失われた。あの日に戻り、全てを正さなければならない」


 彼の言葉には、千年の孤独と後悔が滲んでいた。


「過去は変えられない」


 レオは優しく、しかし確固とした声で言った。


「大切なのは、過去から学び、未来を創ることだ」

「きれいごとだ!」イザークの怒りがエネルギーとなって空間を震わせた。


 「もう十分だ。クリスタルを渡せ」


 彼は手を伸ばし、強力なエネルギー波をレオたちに向けて放った。

 エリーシアが素早く防御魔法を展開し、衝撃から彼らを守った。


「みんな、下がって!」


 レオは仲間たちに叫んだ。


「イザークは僕が止める」

「一人では危険だ」


 ゼオンが反対した。


「大丈夫」


 レオは自信を持って言った。


「もう一人じゃない」


 彼はクリスタルを胸の前に掲げた。

 クリスタルが強く輝き、光の粒子がレオの体を包み込んだ。

 青と紫の光が彼の周りで渦を巻き、次第に形を変えていった。


「なんだ……?」


 イザークが警戒した。

 光が収束すると、レオの手には二つの武器が現れていた。

 右手には青く輝くフォトンエッジ、左手には紫黒の光を放つブラックサーベル。


「二つの鍵の力……復活したのか」


 イザークは驚きを隠せなかった。


「これが最後の決着だ、イザーク」


 レオは二つの武器を構えた。


「僕はあなたの思いも、苦しみも理解する。でも、世界の運命を一人で決めることはできない」


 イザークは冷笑した。


「言葉ではなく、力で示してみろ」


 彼は手を広げ、純粋なエネルギーの刃を生み出した。


「さあ、来い!」


 二人の戦いが始まった。

 イザークのエネルギー攻撃は強力で、空間そのものを歪ませるようだった。

 レオは二つの武器を駆使して応戦したが、二つの異なるエネルギーを同時に扱うことは依然として困難だった。


「力が足りないようだな」


 イザークは挑発した。


「二つの力は相容れない。お前の精神は引き裂かれる」


 確かに、レオは痛みを感じていた。

 フォトンエッジとブラックサーベルのエネルギーが体内で競合し、彼の集中力を奪っていた。


(どうすれば……)


 背後からエリーシアの声が聞こえた。「レオ!恐れないで!」

 ゼオンも叫んだ。「お前なら二つの力を一つにできる!」

 フィンも加わった。「二つの力は相反するものではなく、補完するものです!」


 彼らの声が、レオの心に響いた。

 そうだ、フォトンエッジとブラックサーベルは対立するものではない。

 光と闇は一つの全体の両側面なのだ。


 彼は深く息を吸い、内なる平静を見つけた。

 恐怖を受け入れ、超越する。弱さを認め、力に変える。

 孤独を感じながらも、仲間との絆を感じる。


 すると、不思議なことが起きた。

 二つの武器から放たれるエネルギーが変化し始め、青と紫が混ざり合い、新たな光を生み出した。

 それは深い紫紺色の輝きで、レオの体全体を包み込んだ。


「これは……」イザークは驚いた。

「二つの力が一つになった」レオは静かに言った。


「対立するものとして扱うから、苦しみが生まれる。受け入れ、調和させれば、新たな力となる」


 彼は二つの武器を交差させた。


「『エクシードフォトン』!」


 フォトンエッジとブラックサーベルから放たれた紫紺の光が一つの強力なエネルギー波となり、イザークに向かって放たれた。

 イザークも全力のエネルギーを放ち、二つの力がぶつかり合った。

 激しい衝撃波が空間を震わせ、床に亀裂が走った。


「なぜだ……」


 イザークの声が聞こえた。


「なぜそこまでして抵抗する?」

「これは抵抗ではない」レオは穏やかに答えた。


「これは未来への選択だ。過去に囚われるのではなく、前に進む選択」


 彼は一歩前進した。

 エクシードフォトンの光が強まり、イザークのエネルギーを押し返し始めた。


「イザーク」レオは真剣な表情で言った。


「君の千年の苦しみを否定はしない。だが、それは君一人のものだ。世界全体に押し付けることはできない」

「だが……私の責任だ」


 イザークの声は弱まりつつあった。


「あの日、全てを失った……」

「失ったものは取り戻せない」

 

 レオは優しく言った。


「だが、新たな未来を創ることはできる。それこそが、本当の責任の取り方だ」


 イザークの抵抗が弱まり、エクシードフォトンの光が彼を包み込み始めた。


「私は……間違っていたのか」


 イザークの声は次第に静かになっていった。


「間違いではない」レオは答えた。


「ただ、違う道を選ぶこともできる。過去に戻るのではなく、未来を共に創ることを」


 紫紺の光がイザークの姿を完全に包み込んだ。

 不思議なことに、その表情には安らぎが浮かんでいた。


「黒崎レオ……」イザークの最後の言葉が聞こえた。


「私は千年も待ちすぎたのかもしれない……」


 彼の姿が光となり、装置の中心へと吸収されていった。

 同時に、装置からは激しい振動が始まり、警報音が鳴り響いた。


「リバースシステム起動停止」機械的な声が響いた。


「施設自己崩壊シーケンス開始」

 

「急いで逃げろ!」ゼオンが叫んだ。


 彼らは急いで施設から脱出し始めた。

 天井から岩が落ち始め、床には亀裂が広がっていった。


 レオの手にはまだフォトンエッジとブラックサーベルがあったが、その光は徐々に弱まっていた。

 エネルギーが尽きつつあるようだった。


 彼らが階段を駆け上がると、地下からの爆発音が聞こえた。

 振動は激しさを増し、広がる亀裂が彼らの足元まで追いかけてきた。


「もう少しだ!」フィンが励ました。


 最後の力を振り絞って駆け上がると、彼らはついに地上へと飛び出した。

 直後、地面が大きく揺れ、遺跡跡地全体が沈み込むように崩壊していった。


「間に合った……」エリーシアは息を切らしながら言った。


 振り返ると、空の異常も消えていた。

 紫の雲は晴れ、通常の夕暮れの空が広がっていた。


 レオは両手の武器を見つめた。

 フォトンエッジとブラックサーベルの光は、完全に消えていた。

 最後のエネルギーも使い果たしたようだ。


「終わったんだ」レオは静かに言った。


 エリーシアが彼の横に立った。


「本当に、終わったのね」


 彼らは無事を確認し、帰還の準備を始めた。

 アストレアからの支援部隊も合流し、怪我人の手当てが行われた。

 レオはもう一度、遺跡跡地を振り返った。

 そこにはイザークの最後の言葉が響いているような気がした。


 「千年の孤独……」彼は小さく呟いた。


「誰にも背負えないものだよ」


 その夜、彼らはアストレア王国へと帰還した。

 国王は彼らの無事を心から喜び、宮廷医師たちが彼らの治療に当たった。


 ◇

 

 三ヶ月後、アストレア王国は晴れやかな雰囲気に包まれていた。

 王宮では、エリーシア王女と黒崎レオの結婚式が盛大に執り行われていたのだ。


 大広間は花で飾られ、国中から集まった貴族や市民たちで賑わっていた。

 中央には白い絨毯が敷かれ、その先には国王と神官が待機していた。


「緊張してるか?」


 ゼオンが正装したレオの背中を軽く叩いた。

 彼は王国の防衛隊長として、正式な軍服を身につけていた。


「ああ、少し」レオは笑った。「でも、とても幸せだ」


 バルゴも立派な衣装で現れ、髭を撫でながら笑った。


「よくやったぞ、若者。王女様を幸せにするんだぞ」

「もちろんです」レオは頷いた。


 フィンも緑のエルフ族の正装で参列していた。


「研究報告によると、遺跡跡地からのエネルギー反応は完全に消失しました。イザークの計画は本当に終わったようです」


 レオは小さく頷いた。


「彼も、ようやく安らぎを得たんだろう」


 音楽が鳴り始め、全員が玉座の方を向いた。

 扉が開き、エリーシアが父である国王と共に入場してきた。


 彼女は純白のドレスに身を包み、金色の髪には花冠が飾られていた。

 その姿はまさに天使のようで、見る者全てを魅了した。


 レオは息を呑むほど美しい彼女の姿に見とれた。

 エリーシアも彼を見つけると、優しく微笑んだ。


 国王が娘を連れてレオの前まで歩み、静かに彼女の手をレオに託した。


「娘を頼む」国王は静かに、しかし力強く言った。


「命を懸けてお守りします」レオは深々と頭を下げた。


 二人は手を取り合い、神官の前に進んだ。

 神官は古代の言葉で祝福を捧げ、二人の結婚を宣言した。

 彼らが誓いの口づけを交わすと、大広間は拍手と歓声で満たされた。


 祝宴は夜遅くまで続いた。

 踊りあり、宴あり、そして多くの祝福の言葉が二人に贈られた。


 夜も更けた頃、レオとエリーシアは静かな中庭に出た。

 満天の星空が、彼らの新たな門出を祝福しているようだった。


「信じられないわ」エリーシアは夜空を見上げながら言った。


「あの日、森で初めて会った時は、こんな日が来るなんて想像もしていなかった」

「僕もだ」レオは笑った。


「異世界に来て、魔物と戦い、世界を救うなんて……まるで夢のようだ」


 彼は彼女の手を取った。


「でも、君と出会えたことは、最高の運命だった」


 エリーシアは彼に寄り添った。


「私もそう思う」

「レオさん、エリーシア様」


 二人が振り返ると、フィンが近づいてきた。

 彼の表情には焦りが見えた。


「どうしたの?」エリーシアが尋ねた。

「急ぎの報告です」フィンは声を低くして言った。


「南方の国境で奇妙な現象が発生しています。旧文明の兵器らしきものが発見されたという報告が……」


 レオとエリーシアは顔を見合わせ、笑いを交換した。


「結婚式の日に?」レオはため息をついた。

「運命ね」エリーシアは微笑んだ。


「すみません」フィンは申し訳なさそうに言った。「でも、これは重要な……」

「わかった」レオは頷いた。


「バルゴとゼオンも呼んでくれ。すぐに対応しよう」


 フィンが去ると、エリーシアはレオの腕を取った。


「新婚旅行は少し延期ね」

「君が良ければ」レオは笑った。


「これが私たちの運命だろう。世界の平和を守るために」


 彼女は嬉しそうに頷いた。


「退屈な結婚生活なんて想像できないわ」


 二人は再び星空を見上げた。

 新たな冒険が始まろうとしていたが、もう恐れることはなかった。

 彼らには強い絆があり、共に乗り越えていく力があった。


 レオは自分の手を見つめた。

 フォトンエッジとブラックサーベルのエネルギーは消えたが、彼の内側には新たな力が宿っていた。

 それは武器の力ではなく、仲間との絆から生まれる真の力だった。


「行きましょう」エリーシアが優しく言った。


「新たな冒険が待っているわ」


 レオは頷き、彼女の手を握った。

 二人は星空の下、新たな旅立ちに向けて歩き始めた。


 力を恐れ、逃げていた彼は、今や力を受け入れ、責任を持って使う方法を学んでいた。

 そして何より、一人ではなく、共に歩む喜びを知っていた。


 それこそが、彼がこの異世界での冒険で得た最大の宝物だった。


 光り輝く未来へと続く道は、まだ始まったばかり。

 だが、彼らはもう迷うことなく、力強く前へと進んでいくだろう。

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異世界ビームサーベル英雄譚 〜滅びの未来と再生の剣〜 暁ノ鳥 @toritake_1

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