暁の想いの告白

暁の言葉は、沙姫帆の胸に突き刺さった。


私は、また、溢れてきそうな涙を、

目に留めるのが精一杯だった。

瞬きでもしたら、頬を伝いそうだった。


私は、膝を抱えて座っていた腕の中に、

そっと顔を埋めた後、

スカートに涙を吸い取らせた。


暗いから、分からないだろうと

鞠谷は、思っていただろう。

だけど、俺は、

鞠谷が、何をしたのか、分かってしまった。


私は、素知らぬ顔で、顔を上げて、

「・・・だけど・・・・私が、今まで、

サヨナラした時も、

もう一度、一緒に居たいって言った時も、

いつも、何も言わなかったのに・・・・

でも、あの時だけは・・・戸倉君から、

言い出したサヨナラだったから・・・

嫌われたって感じた・・・・

私が、可哀そうだから、

最後に優しい言葉を・・かけたって、

そう思ったから・・・」


俺が思った通りだった。

鞠谷は、

自分に自信が無くて、相手を信じきれない。

俺は、埒が明かないと感じたから、

自分の気持ちを、告白する事にした。


「・・・俺は、何度となく言われた別れも、

やり直したいと言う言葉を、

受け入れたのは・・・・・

鞠谷が、お前が、好きだったから。

鞠谷の、不安や、寂しさを、

解かってやれなかった俺が、

悪かったと思ったからだ。

だから、何度も、後悔した。

でも、鞠谷から、逢いたいって、

また、付き合いたいって、言われた時は、

嬉しかった、だからだ。

だけど、最後に付き合った時は、

鞠谷は、俺を避けていたよな?

俺だって、

そうそう自信満々じゃあないぜ?

お前の気持ちを、

何もかも、手に取るように解らないよ?

お前は口に出さないし・・・な。

だったら、逢った事を後悔させたなら、

一緒に居たい気持ちを、

俺は、抑えて、あの時、電話した。

だけど、後悔して無いって言ったお前に、

自分から、勇気を出して、

俺を受け入れて欲しかった。

鞠谷に、今までを繰り返させたくなかった。

・・・だから、電話しておいでって言ったよ?」


理解していた、つもり・・・・

だっただけ・・・だね・・・・私。

確かに、戸倉君に、言われた時は、

嫌われたのだと感じていた。

遠まわしに、別れを告げただけだと・・・


その後で、

少しずつ理解したつもりだったけれど、

私の為だって事は、気が付いたけれど、

そんな風に思っていたなんて・・・

「・・・・・・」


「・・・何時だって、俺は、鞠谷を見てきた。

これからも、将来を含めて、

一緒に生きたいと思っている。

今までみたいな付き合い方は、したくない。

これが、俺の気持ちだ。

・・・・鞠谷は、これから、どうしたい?」


暁は、沙姫帆を見つめた。


ただ、沙姫帆は、景色をじっと見続けていて、

その視線には、気が付かなかった。

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