第3話:缶詰の中から出来きたのはフィギュアみたいな女の子?
ギモーヴさんは缶詰を下げ袋に入れて僕に手渡してくれた。
だけど、これから僕の世界に帰るのに食物の缶詰なんか必要ないのにって思った。
「なんの缶詰ですか?ラベルもなにも貼ってないですけど?」
「その缶詰の中になにが入ってるかはこのさい教えん」
「向こうに帰ったら楽しみにしておけ、缶詰が開けば分かることじゃて、ウシシ」
「ヤラしい笑い方だな・・・なんですか?不気味ですね」
「それから、いいか?向こうに帰ったら、ガジュマルって観葉植物をひと鉢買え・・・必ず買えよ」
「分かりました・・・ガジュマルですね」
「それから缶詰は熟したら勝手に開くからな、自分で無理に開けようとするなよ」
「缶詰が開いたら、もうおまえにバラ色の人生がやって来る」
「その缶詰は女にモテない友彦に、わしからの細やかなプレセントだ」
「はあ。いまいちよく分かんないですね」
「あの・・もしかして缶詰開けたら煙が黙々出てきて僕はじじいになったりしま
せん?・・・」
「な、訳なかろう桃太郎じゃあるまいし・・・さ、これで準備よし薬を飲め」
「浦島太郎なんだけどな・・・」
「あ、飲む前に帰りたい場所を思い浮かべてから薬を飲めよ、じゃないとどこに
帰り着くか分からんからな」
僕はギモーヴさんからもらった缶詰が入った袋を肩から下げて覚悟を決めてコップ
の中の臭い汁を一気に飲み干した。
「もう来るなよ・・・友・・・」
ってギモーヴさんの声が全部聞き取れないうちに僕は目の前が真っ暗になった。
で、気がついたその場所は・・・僕の屋敷の書斎だった。
「やった!!どうやら思った場所に帰って来れたみたいだ・・・」
薬を飲み干したコップを持ったままギモーヴさんがプレゼントしてくれた缶詰は
入った袋も落とすことなくしっかり肩からさげていた。
さっきまで自分に起こったことは夢だったんじゃないかと思い返してみた。
でも間違いない、僕はさっきまで異世界にいたんだ。
で、僕は帰ったばかりで、すぐに袋から缶詰を出してキッチンテーブルの上に
置いた・・どうせ異世界の食べ物かなんかだろう。
勝手に開くって言ってたから最近の缶詰と同じで缶切りがいらないイージー
オープンなんだろうな。
慌ただしく時間が通り過ぎたけど、なにごともなく僕に日常が戻ってきた。
思わぬ出来事でまだテンションが上がったままだった僕はどの日興奮して眠れない
まま次の日、大学を休んだ。
次の日の昼近くになっても肝心の缶詰はまだ開く気配がない。
だから僕はギモーヴさんが言ったとおりチャリに乗ってホームセンターへ観葉植物を買いに行った。
たくさん並んでいた観葉植物の中から言われたとおりガジュマルを、ひと鉢選んだ。
まあ、観葉植物だから書斎の窓際に置いておけばいい癒しになってくれるだろう。
僕は他には目もくれずガジュマルだけを人鉢買って帰った。
屋敷に帰って来てキッチンテーブルの上の缶詰を見たら、なんと蓋が開いてるじゃ
ないいか?
だから慌てて缶詰の中を上から覗いてみた。
すると、丁度だっかたのか・・・缶詰から本当に小さな女の子が上半身を起こしながら大きく背伸びした。
「なにこれ?・・・めっちゃ小さいんだけど・・・でも食いもんじゃなかったんだ」
髪が紫色以外は人間の女性と変わらない・・・ただフィギュアみたいに小さくて可愛らしかった。
ただフィギュアと違うの生きてるってこと。
もちろんだけど裸だよね・・・逆に服なんか着てたらオイッ!!って突っ込んでる
ところだよな・・・。
まあ、小説だからいいけど映像になったらモザイクが入るだろうけど・・・。
缶詰の子は僕を見上げると目を細めてコロコロ笑った・・・赤ちゃんみたいに。
僕の人生はバラ色?・・・これのどこが?
こんなのちっこい子、彼女にもできないじゃん。
つづく。
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