第2話:僕は人間界へ帰れるんですか?

「ところで、トモヒコ・・・人間界でドジ踏んでこっちに来たんだろ?」


「まあ・・・」


そこで僕は、よせばいいのに僕の個人的情報となにが起こってここに来たのか

を、その怪しげなボブゴブリンのギモーヴさんに話して聞かせた。


「なるほどね、気の毒・・・そうやってツキのない男は女にもモテてないんじゃよ・・・可哀想に・・・」


「ツキとモテないは関係ないでしょ?」


「女にモテた試しないだろ?・・・そんな顔してるよな」


「どんな顔ですか、だいいち彼女いますよ・・・付き合ってる彼女が・・・」


「またまた・・・見栄はるんじゃないわ、女がいないことくらい顔を見たら分か

るで・・・」

「まあ・・・わしはひとりのほうが気楽でいいけどな」

「トモヒコが望むなら・・・あ・・・あ、あ」

「来た、来た、来た・・・あ・・・ちょっと待った・・・あたたたた」

「う〜・・・・痛い・・・く、苦しい・・・・!!」


そう言ってボブゴブリンのギモーヴさんは、そこにうずくまってしまった。


「えっ?急にどうしたんですか?・・痛いって?どこか悪いんですか?」


「悪いね、今朝からなんとなく兆しはあったもんで・・・じゃから前もって

薬を作っておこうと思ってたんじゃが・・・もしかしたら食中毒かもしれん」


「食中毒?・・・え〜・・・」

「あ、そうだ俺のカバンの中に胃腸薬入ってるからそれ飲んでみます?」


「胃腸薬?・・・ってなんだ?」


「食中毒やお腹の調子が悪い時に飲めばよくなるんです」

「大丈夫ですから、僕もよくお腹が痛くなるから常備してるんです」

「カットバンや傷を負った時の塗り薬とかと一緒に・・・」


「薬の調合ならわしだって得意じゃ」


「その体じゃ調合するのは無理でしょ・・・それよりこの薬よく効きますから

飲んでください・・・」


ってことでギモーヴさんに胃腸薬を飲ませてあげた。


「悪いね・・・わしはこの山で幼い妖精たちを育てて暮らしてるんだ」

「その代わりその子たちから少しづつ寿命を分けてもらっとる・・・」


「妖精なんているんですか?」


「いるよ・・・可愛い妖精たちがな・・・」

「お〜少しづつ腹の痛みが取れてきたわい」


僕の薬のおかげかどうか分からないけどギモーヴさんは調子よく元気になった。


「さっき飲んだ薬まだありますから、ここに置いておきますからね」

「もしまたお腹が痛くなったら飲んでください」


「いらんよ・・・さっきも言ったが薬ならわしも調合できるで・・・」

「でもおニイさんのおかげでウソみたいにすっきりしたよ、あんたのおかげだな」

「わしはちょっとした魔法が使えるで腹痛を治してくれたお礼にあんたが今一番

望んでること叶えてやるよ」


「そんなこと出来るんですか?」


「ああ、出来るよ?・・・トモヒコ彼女欲しいじゃろ?」


「それもありますけど・・・できたら僕は自分の世界に帰りたいです」

「ここにいてもたぶん生きて行けそうにないんで・・・」


「ワシがおるから死にゃ〜せんが・・・慣れん土地で暮らしてもの〜」

「じゃ〜お望み通り帰してやるかな」


そう言うとギモーヴさんはなにやらフラスコとか鍋とかいろいろ引っ張り出して

きた。

ガスコンロみたいなものに火をつけると水を入れた鍋をかけて草やら野菜やら見た

ことないものをバカスカ鍋に入れて煮始めた・・・闇鍋みたいだ。


「うん、これでよし・・・入れ忘れはないな・・・」


「なに作ってるんですか・・・・すごい臭いですけど・・・」


「魔法の薬じゃよ・・・友彦ともひこ・・・おまえをおまえの世界に帰すため

のな・・・」


ギモーヴさんは煮え切った鍋の中の汁をすくい取るとこれまた汚いコップに

その汁を注いだ。


「熱いからな・・・ふ〜ふ〜して飲め・・・不味くても残すなよ」


そう言ってギモーヴさんは僕にコップを渡した。


「これ飲むんですか?」


「飲まんとおまえの世界には帰れんぞ」


「あ、薬を飲む前に・・・いいものをやろう・・・さっきの腹痛の薬のお礼だ」


そう言うとギモーヴさんはなにかを持ってきた。

よく見ると、それは缶詰に見えた・・・金色の缶詰が一個。

ギモーヴさんは缶詰を下げ袋に入れて僕に手渡してくれた。


だけど、これから僕の世界に帰るのに食物の缶詰なんか必要ないのに。


つづく。





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