第4話 尾行した先は
放課後、部活に所属しないと決めているわたしは、朝のような勧誘から逃げるべくそそくさと学校を出る。
と、うしろからあおいがヘトヘトの顔でやってきた。
「あ。おつかれ」
「お前……何がおつかれだ。ちょっとくらい援護してくれてもよかっただろ」
「朝も追いかけられたのに、また追いかけられろって言うの?」
思いっきり顔をしかめると、あおいの眉間のしわがさらに深くなった。
放課後になった途端、うちのクラスにあおいを勧誘しようと色々な――特に環境研究会や数学同好会なんかの人たちが押し寄せてきたんだ。あと、家庭科部もいたっけ。
「それより、買い出し行くでしょ? 卵が切れかかってたよね」
「あと、調味料類も……ましろ、夕飯は何がいい?」
「え〜、どうしよっかな……ん?」
考えながら視線をそらすと、路地の奥に全身真っ黒の人影が見えた。
ジャージもパーカーも、背負っているリュックサックも全部黒だ。おまけに、あたりをキョロキョロと見回していて挙動不審。明らかに怪しい。
「ましろ、どうした?」
「あおい……あの人」
「…………怪しいな」
「だよね。尾行しよっか」
「……はっ?」
そんなハトが豆鉄砲を食らったような顔をしなくても。
「お前、本気か?」
「本気だよ?」
「…………」
ものすっごい顔をするあおい。
「いや、でも、……やめとけ」
「でも、気になるじゃん。ほら、「やめとけ」って言われたらやりたくなるやつ」
「それ『カリギュラ効果』な、前にも教えた気がするけど……」
「お願い、行かせて! 気になる」
あおいは、わたしがこうと決めたら曲げない性格だって知ってる。案の定、はあっとため息をついて、しばらく考え込んだあと、しぶしぶ首を縦にふった。
「……仕方ない。おれはましろみたいに完全に気配を消せるわけじゃないから、慎重に行くぞ」
「わーい! それじゃあ尾行、開始っ!」
「声が大きい!」
♢ ◆ ♢
怪しい男のあとをついていくと、
バレないように、隣のビル(こっちももう使われていない)の屋上から様子を伺う。
下を見ると、男が何か呼びかけて、中から人が出てきたところだった。
男たちのいるほうの廃ビルに仕掛けてきたあおいお手製の盗聴器を使って、会話を盗み聞くことにする。
『リーダー。ただいま戻りました』
『それで。結果はどうだった?』
「あおい、やっぱり二重に聞こえるからこれいいや」
「この距離から聞こえるのか!? やっぱりバケモノだな」
「バケモノって。盗聴器つくるあおいに言われたくないんですけど」
イヤホンをあおいに返して、改めて2人の会話を注意深く聞く。
「警察が動き出したみたいっす。バレるのは、時間の問題かと」
「……なら、これはしばらく保管しておいたほうがよさそうだな」
リーダーと呼ばれた男は、隅に置かれたアタッシュケースをちらりと見た。
「警察って。あいつら絶対悪いやつじゃん。あおい、あのアタッシュケースの中身って確認できない?」
「難しいな。開けてくれればいいんだが……」
「じゃあ。開けさせる?」
「や・め・ろ。バレるような行動をとるな」
あおいとやりやっていると、尾行した男の声が聞こえてきた。
「なんせ、1000カラットのダイヤモンドですからねぇ。相当高い値がつきますよ」
「「1000カラットのダイヤっ!?」」
バッと下を見る。
1000カラットのダイヤって、今朝聞いたばっかりの……!?
「シッ。あんまデカい声で言うな」
「あ……あおい、もしかして、いや、もしかしなくても!」
「ヤツらは……」
「「『空色リング』の宝石を盗んだ犯人!?」」
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