第3話 盗まれたダイヤモンド
あおいと一緒に校舎内を歩いていると、壁に貼られている
うちの学校は部活動もさかんで、環境保護にも積極的なんだ。
燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミの分別はもちろん、最近話題になっているスマートゴミ箱も設置してる。制服は環境にやさしい素材が使われているんだ。
それに、なんと学校の電力のほとんどが再生可能エネルギーでまかなわれてるの!
つまり、超
「ましろ、あおい」
教室に入ると、沙織がちょいちょいと手招きした。近くには、さっきの女子生徒2人もいる。
クラスメイトの
2人とも怪我はなさそうで安心する。
ただ……。
「羽柴さん、どうしたの?」
「なんか彼女、落ち込んでるみたいで」
答えた南條さんと沙織は、そろって肩をすくめる。
羽柴さんは、見るからに元気がなくどよ〜んとした空気をまとっている。
羽柴さんは、わたしとあおい、それから南條さんと沙織を順番に見て、少しためらうように「あの……」と話し始めた。
「……実はね、お父さんの職場の大事な御守りが盗まれちゃって」
「「「御守り?」」」
わたしと沙織と南條さんが首を傾げると、彼女はうんと頷いた。
あおいも、ちょっと興味深そうな顔をしている。
「羽柴さんのお父さんは、たしか『空色リング』の代表理事だったよな」
「うえっ、そうなの!?」
「『空色リング』って、NPO法人の!?」
あおいの情報にわたしと沙織が驚くと、羽柴さんは「そうなんだよね」とちょっと笑った。
南條さんは、もともと知ってたらしい。隣でうんうんと頷いている。
「私の曽祖父が立ち上げた組織でね、お父さんは3代目代表理事なの。これは、あんまり聞かれちゃいけない話なんだけど……」
そう前置きして、羽柴さんは声をひそめた。
「その、ひいおじいちゃんが『空色リング』を立ち上げたときから大事にされてきた御守り――1000カラットのダイヤが盗まれちゃって」
「「1000カラットのダイヤ!?」」
わたしとあおいの声がハモる。
「カラットの基準がわからん。1000カラットってそんなにすごいの?」
「すごいよ!」
沙織に聞かれて、わたしは首が振り切れそうなくらいブンブンと縦にふった。
「普通の婚約指輪や結婚指輪なんかに使われるダイヤは直径3ミリから5ミリ、0.2から0.4カラットくらいで30〜40万円くらいのものが多いな。1000カラットっていうと……6から8センチくらいか」
「見てよ! こんなんと、こんなんだよ!」
あおいの説明に合わせて、わたしが定規でサイズ対比をすると、なるほどね、なんとなくわかった、と引き気味に言われた。
「さすが『最強幼なじみコンビ』、知識量が半端ない……あ、最近『風コンビ』とも言われてるんだっけ」
「「風コンビぃ?」」
「知らない? 涼風と風凪の風をとって『風コンビ』。あれ、『風風コンビ』もあるんだっけな」
南條さんの言葉に、あおいと顔を見合わせた。
「そ……そうなの? あおい、知ってた?」
「いや、全く」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「「聞いてない!!」」
「ぎゃー! ごめんごめん、言ったつもりになってた!」
沙織に向かって叫ぶと、降参だと言わんばかりに両手をあげた。
「あー、ほら、そろそろホームルーム始まるし、なんか注目浴びてるし。席にもどろーよー」
棒読みで沙織が言ったところでちょうど予鈴がなったので、仕方なく席に着く。
それにしても、ダイヤモンドが盗まれたって。
羽柴さん、大丈夫かな。
上の空の羽柴さんを見て、わたしはため息をついた。
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