第20話 死神の大太刀 弐什
継続する戦いの中で、先に動きが鈍くなり始めたのは魔獣の方だった。
無作為に攻撃を繰り出す魔獣に対し、攻撃を全て打ち落とす
徐々に魔獣が後退する。正面からの打ち合いは分が悪いことを理解したのだ。
間合いに余裕ができた。
魔獣の額の一角に電流が走る。地面に紋章陣が展開。そこは
炎柱は一瞬。熱波が
魔獣が牙をむき出しにした。その表情は怒っているようにも、笑っているようにも見える。丸焼け予定だった黒衣の男は未だ健在。魔獣は攻撃が空振りに終わったことを理解した。人間ならば多少は動揺が見えるところ。しかし、相手は魔獣。即座に強烈に咆哮、それと共に両腕を広げて威嚇の構え。
「後退したのは誘い・・・得物を振り切っていたら丸焦げ、か。獣の分際でちょっとは賢い戦い方をするじゃないか。だが、残念だったな。俺の直感は捨てたもんじゃないだろう?」
魔獣である以上は紋章術を行使するであろうとは思っていた。紋章術に特化した個体や特殊事例を除き、基本的に各個体が行使できる陣は一つ。魔獣が紋章術を行使するのは本能。人間のように陣を描いて得たい効果を具現化するものではない。これまでの戦いの中で感じたのだが、この熊のような魔獣は紋章術特化の類ではない。
特殊事例の個体に関しては、
ここで奴の陣の効果を知れたのは僥倖だ。
それならば、気を配るべきはあの角。先の攻防で紋章陣の展開の直前に電流が走った。無拍子に紋章陣の展開はできないと予測を立てて対峙すべきだろう。今まで使用しなかったのはその回数に制限があると考えれば筋妻が会う。間合いの外から牽制で行使してこないのが答えではないか。
「あれはお前にとって奥の手。必殺の一撃ってところか。悪いな避けてしまって。」
人間の言葉なんて理解できないと思いつつ言ってみる。この言葉を人間相手に言ったら挑発と受け取られかねない。この言葉が伝わるなんて思っていない。
案の定、魔獣は言葉の意味を理解できていない様子。
大きく息を吸い込んだ
「とりあえず、魔獣は退けた。お前の望み通り、部下は助かった。これでお前の命は俺のものだな。ふふふ、どうしてやろうか。」
腕を組んでニヤリと笑う
「ちょ、ちょっと待ってもらえないだろうか。」
彼は二人の間で交わされた約束を知らない。
「
側近達は刀の柄に手をかけて戦う構え。
「お前たち・・・。」
俺に恥をかかせるな、
「別に取って食おうって訳じゃない。お前の主には俺の役に立ってもらう、そう言っているんだ。それにあの男はお前達の為に命を差し出すと言ったんだ。勿体無いほど良い大将だ。このまま死なすのは惜しい。それはそうと、勝てない相手に喧嘩を売るのはどうかと思うぞ。」
最後の言葉だけ聞くと煽っているように聞こえる。しかし、
「
「あぁ、言ってなかったな。
「そんな事でいいのか?」
「そんな事ってなんだ。命を絶って欲しいのならその望みを叶えたっていいんだ。だが、まずは俺に協力しろ。
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