第19話 死神の大太刀 什玖
魔獣の対応をしていた部隊が突破された。
いまだかつて、これほど絶望的な挟撃はなかったと記憶している。
この場での最善策を考える
「
皆が一斉に踵を返し、魔獣の迎撃をする構えになった。
鋭い眼光を
まるで死を受け入れているようなそんな目をしている。
「再度貴殿にお願いしたい。部下を助けてはくれないだろうか。」
彼の声色からは焦りや悲観は感じなかった。そもそも敵意を感じない。襲撃者である自分に対しこの言葉。
何も言葉が見つからなかった。
「あの者達は幾度も死線を共にしてきた仲間。魔獣なんぞに殺されていい者達ではない。三度お願い申し上げる。あの者達を助けてはくれないだろうか。」
「・・・その対価として、お前は何を差し出せる?」
返答には少し間があった。それでも
「今は何も持ってはおりません。差し出せるのはこの命一つ。それで勘弁してはくれないだろうか。」
この場を切り抜けるには
「その申し出を受けよう。魔獣を撃退して、貴殿の部下を助ける。この認識で間違いないな。」
「それでは貴殿の命、この
そう言い切った
彼等の連携でも現状維持が精一杯である。
魔獣の正面で体を張る
この状況が長く続かない事を示唆しているようだった。
「・・・このままでは。」
「引け。後は俺が引き受ける。」
背後から声がした。前に出たのは黒衣の死神だった。
魔獣の前に出た
魔獣が前足を広げた威嚇の構えとる。それは熊の威嚇の姿に似ていた。
「おうおう、やる気じゃないか。だがな、お前なんぞにくれてやるほど俺の命は安くない。残念だが、ここで討たれるのはお前の方だ。」
魔獣に言い放つ
担いでいた漆黒の大太刀を構える。半身になり、両手で柄を握る。刀身は相手から隠すかの如く後ろに伸びていいた。一見隙だらけ。しかし、前面に押し出した剣気が魔獣の全身を阻んだ。
睨み合うこと数秒。根負けした魔獣が飛びかかる。太い右腕が振り下ろされ、鋭い爪が
普通の獣ならば前足を斬り落とすほどの斬撃だったはず、しかし、この魔獣の毛が想像より硬い。斬り上げの一撃は魔獣の前足を弾き飛ばすに留まった。
それならそれでやりようはある。
両者の距離が近い。魔獣は後退する事無くその場に留まっている。それどころか次々に攻撃を仕掛けてくる。左腕を下から振り上げ。
その後はお互いの意地の張り合いである。
殺意の込められた攻撃が幾度もぶつかり合った。魔獣の攻撃はどれも必殺の一撃。
繰り返される同じような攻防。そこに刹那の綻び。
たたらを踏んで後退する
両者仕切り直し。
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