第21話 死神の大太刀 弐什壱
各兵個人の意思を確認。
「
「意外と残ったじゃないか。」
「残った者の多くは、私と共に沙流川の領地に流れ着いた。言わば戦友です。よもや裏切ることは無いでしょう。」
声からは緊張が伝わってくる。そんな
「その辺はお前等の好きにしていい。だがな、裏切ったら斬り捨てられると思っていてくれ。斬り捨てるのは当然俺。恐怖で支配しようとは思っていないが、それくらいの気持ちで居て欲しい。」
完全に釘を刺された形だ。肝に銘じたと言わんばかりに
魔獣との戦いを見ていても感じた。そこはかとなく
「それで、転移紋章陣はどれくら掛かりそうなんだ?現状は特に急がなくてはならないことも無いのだが。時間があるかと問われれば、無いと返答したいところ。その辺どうだろうか。」
「はい、すぐに。」
命を受けた部下が駆け足で立ち去る。
「
待つこと暫く。部下が戻ってきた。
「進捗はどんなものだろうか。」
「報告します。先程陣を敷き終わったと。後は、再構築した紋章陣の運用試験を慣行。問題がなければすぐにでも沙流川領土への転移が可能であると。」
「ならば、その運用試験を急ぐように伝えろ。魔獣のこともある。のんびりしている時間は無いと思って動くようにと。」
命を受けた部下が立ち去る。
転移紋章陣の運用にはもう少し時間がかかりそうだ。それが終わり
無茶な命令なのは
転移紋章術の運用試験が終わったと報告があったのは、その後すぐのことだった。
「命令に対してすぐに結果を出せる部下。凄く洗練された仕事をする。良い部隊だ。彼らの多くを送り返すのがもったいなく感じてしまうな。」
「私を嘘つきにしないでください。戻る者は沙流川領土に家族を残しておりますので。皆優秀な者達です。今後も力を貸して欲しいとは思いますし、多くの者が残ると言ってくれました。ですが、私は彼等の事情を知っています。故に、この地に骨を埋めろなど、とてもではないが言えなませんでした。」
「そうか。俺は配下を持つ身ではない。だが、もし配下を抱えるなら、ここの部隊のような者達がいい。部下が本物の自尊心を持てるのはお前が良い上官である証拠だ。もっと誇っていいと思うぞ。」
「その言葉、冗談でも嬉しく思います。」
「俺は世辞は言わん。」
「私と部下達は元は流れ者。長く
「そうか。」
彼等の過去の話など、聞いても面白いものではないのだろう。それだけでも彼等がどんな生き方をしてきたのかが垣間見える。
今ここに居るのだって、転移紋章陣の運用試験を兼ねた先鋒隊として送り込まれたと言っていた。おそらく、
「とりあえず、転移紋章陣で兵達をお繰り返してしまいましょう。」
転移紋章陣があったのは洞窟の一角であった。
「おぉ、随分な場所にあるじゃないか。一部隊を送り込むならもっと適した場所はあったんじゃないか?」
洞窟の中で
「偉い紋章学者から受けた説明では、この場に満ちる気の流れが転移紋章陣を起動させるのには必要不可欠であると。ですが、詳しい事情は私には分かりません。魚になんで水中で呼吸できるのかを問うようなもの。話をされたところで私の頭では理解ができなかった。」
「偉い学者さんは理屈を捏ねたがるからな。」
「えぇ、まったくです。」
二人の会話に、その場にいる全員が笑った。
奇しくもこの場に居るのは前線で戦う者達だけだった。
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