第三幕⑥
第二王子には無視されたが、オリーブが、彼の名がシリル・グリフィン・メルーだと教えてくれた。
使節団は
ともかく、ウエンディは午前中に三十分の運動を許された。
翌日から、時間通りに騎士がやって来て、ウエンディを連れ出す。そして、三十分きっかりで連れ戻す。
この城の裏庭は、祖国のそれよりも広かった。かつては同じ場所を円状にぐるぐる回っていたが、今は四角く移動できる。花が植えられているし、池もあった。池の中には魚がいて、水面をはねる姿を眺めたりもした。
時々、宰相のウォーカが様子を見に来ることもあった。
「宰相自ら
分かってはいたが、
祖国ではメイド服を着てうろうろすることも出来たが、ここではさすがに無理だった。
持ち込んだ本も、もう何回も読んで暗記してしまった子ども用のものだし、他に
「退屈だわぁ」
今のところ、ウエンディに対して直接の
使者達がアウリラの国力ぶりを伝えたとしても、王の対応が変わるとは思っていない。
「お食事でございます」
ソファにだらしなく
ただ、食事はとても
彼らも実のところ、困っているはずだ。役に立つ王子妃を要求したら、呪われた王女が来てしまった。受け入れるわけにはいかないが、かといってポイ捨てするわけにもいかない。
この
その時、
薄く開けた扉から、使用人がこそこそと何かをオリーブに告げ、去っていく。
「
オリーブはそう言って、部屋から出て行った。
まただ――。
時々、オリーブがそう言って部屋からいなくなる時がある。なんの用かは、あえて聞かない。どうせ、聞き取り調査だ。
侍女もメイドも、オリーブ以外は全員帰国してしまったから、彼女が唯一の情報源だ。レヴァーゼ国内の情勢を強制的に喋らせるということはないだろうが、ウエンディのことは別だ。
王子妃候補、という建前がある。この建前のもと、どう暮らしていたのか、どのような人物なのか、
けれど、オリーブがそのうちのどれほどを知っているだろう。彼女はウエンディを着替えさせ、入浴させ、食事を運び、それ以外の接触はほとんどなかった。今とほぼ同じだと言えるだろう。
彼女は何も知らない。ウエンディの計画も、最後には死んでしまうことも。
◇ ◇ ◇
アウリラに来て三カ月が
季節が移り変わり、すでに朝晩は寒さを感じるようになっている。しかし、ウエンディが起きる前には
日中はむしろ暖かく、気候は穏やかな国のようだ。
そんな折、久しぶりに、シリル第二王子が
「レヴァーゼ王国に、
「あらまあ」
それは
「交換って、私とダリア王女?」
「そうだ。返答は、否、と」
「まあああ、それはそれはぁ」
扇で口元を隠していなければ、ニヤニヤがばれてしまうところだった。やはり、帰国した使節団の報告は、王の心には
レヴァーゼの王は、父とはいっても、もともと、よく知らない人だ。
ウエンディは自室の周辺をメイド服でうろうろしたが、後宮で王と会うはずもなく、その功績もあまり直接的には聞こえてこない。
騎士達や侍女達も、
だから、
レヴァーゼ王国自体は力があるのだと思う。何しろ歴史は長く、
しかし、それは裏を返せば、想定外の事態に弱いということでもある。武力で政権を動かす国に対して、新興国と侮るとどんなことになるかなんて、今までの経験から導き出すのは難しい。
それでも、他の目のある国は、
絶対に
連合国に引き入れられた各地方国が、それぞれ割り当ての国とさまざまな交渉をしているだろう。
レヴァーゼの相手は、ここアウリラ。そして王はただ、なあなあで済まそうとした。王子妃を要求されたから、不要な駒を送りつけ、それが相手の意に沿っているかどうかなど考えもしない。
侮っている。あるいは、何も考えていない。
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