天下無双だった赤い薔薇

@mia

第1話

 ヒナが次に通う隣町のダンススクールは近隣で天下無双の赤い薔薇と呼ばれていた。

 天下無双とは大げさだが目立ったことのない町で全国大会に何度も出場し入賞もしたことがあり、そう呼ばれていた。

 赤い薔薇は指導者がいつも着ているTシャツの柄だった。

 ヒナが今まで通っていたダンススクールは体力作りが目的だった。体を動かす機会のない子たちが和気あいあいとダンスをするようなスクールだった。

 テレビで見たアイドルに憧れてダンスを小学一年生から始めたヒナはそのスクールに楽しく通っていた。送迎をしてくれる祖母はいつもほめてくれた。

 他の小学校の友達もできたが、ヒナは他の子より上達が早かった。それが少しずつ少しずつ積み重なりスクールの練習が物足りなくなっていった。体力作りではなく表現するためのダンスを求めていった。

 悩んだヒナはスクールの先生に相談すると先生は隣町のダンススクールを紹介してくれた。

 送迎や金銭的な負担が増えるのにもかかわらず、両親も祖母も賛成してくれた。

 祖母は体力的に負担が大きく増えるのにもかかわらず送迎を継続してくれた。

 一人で通うとヒナが言っても、祖母は「ヒナちゃんのダンスを見るのがおばあちゃんの唯一の楽しみだから」と送迎を止めなかった。

 そこまで言われるとヒナも断れない。

 新しいダンススクールは今までとは違い練習の辛さに泣くこともあったが、とてもやりがいがあった。ヒナにはそのスクールがあっていたのだろう、すぐに上達していった。

 ただ一つの違いは友達ができなかったことだった。

 以前からそこに通う数人の子よりヒナの方が明らかにダンスが上手かった。その子達に妬まれて村八分のような状態になっていた。

 祖母に聞かれても練習がきついとしか言わなかった。

 応援してくれる両親に心配をかけないように夜に布団の中で声を殺して泣くことが増えていった。

 そんなある日、練習中に他の子とぶつかって転んでしまったヒナは、打ち所が悪く 長い間練習ができなくなってしまった。それがきっかけでダンススクールをやめた。  

 祖母は一人での外出が増え、家族の知らない人と会っていた。

 数か月後、祖母は突然死した。

 天下無双の赤い薔薇は、無残に枯れていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天下無双だった赤い薔薇 @mia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ