ヤマアラシ
僕は今、気になる女性の前にいる。彼女と恋に落ちなければならない。
僕は超能力者だ。未来を予知することができる。ただし、条件が一つある。「目の前の女性と恋に落ちなかった場合の結末」だけが読めるのだ。
意外に便利な能力で、僕は恋愛で後悔したことは一度もない。僕がどの女の子と付き合うべきかは、超能力が教えてくれるのだ。
例えば、目の前の女性。
小学校の同期で、同窓会で久しぶりに会った。僕は超能力で、
(彼女と恋に落ちなければ不幸になる)
と悟ったのだ。以来、彼女には前から何度も声をかけて、定期的にデートに行くようにしている。
でも、君はどこか寂しそうだ。優しくしてくれるのに、僕になびく素振りも見せてくれない。
君は古風なカフェが好きで、パンケーキが好きで、苦めのコーヒーが好きだ。ぜんぶ僕と一緒。君はコロコロと笑う。
もし、君との恋を逃したら――。僕はそんな君を想い続ける。そして君も、僕を想い続けるのだ。
僕の超能力は決して外れない。
だから今日は、僕も本気だ。僕が知ってる最高のカフェで、最高の休日を過ごしている。二人とも大好きなデートコース。両想い。でも君は、いつにも増してそっけない。
僕の超能力は、君と付き合った場合の結末を、決して教えてくれない。あるいは二人とも、不幸になるかもしれない。でも、両思いのまま別の道を行くなんて、耐えられないんだ。
じれったい。僕以外に誰がいるって言うんだ?
*
私は今、大好きな男性の前にいる。でも、彼と恋に落ちてはいけない。
私は超能力者だ。未来を予知することができる。ただし、条件が一つある。「目の前の男性と恋に落ちた場合の結末」だけが読めるのだ。
能力というより、呪いみたいなものだ。私はどんな男性と会っても、恋に落ちることができない。超能力が悪夢を見せてくるのだ。
例えば、目の前の男性。
小学校の同期で、同窓会で久しぶりに会った。私は超能力で、
(彼と恋に落ちれば不幸になる)
と悟ったけど、それでも呪いに逆らって、彼のことが大好きになった。以来、彼とデートに行くたびに、恋愛の甘酸っぱさを噛みしめている。
でも、あなたはどこか空しい。積極的にアプローチしてくれているのに、なぜか本心ではないように感じるのだ。
あなたは古風なカフェが好きで、パンケーキが好きで、苦めのコーヒーが好きだ。ぜんぶ私と一緒。私のコロコロという笑いが、あなたは好きだ。
もし、あなたとの恋が成就したら――。あなたはいつか他の人になびいて、私のことを嫌いになってしまう。そして私は、ずっとあなたを想い続ける。
私の超能力は決して外れない。
だから今日は、私も本気だ。あなたは最高のカフェで、最高の休日を用意してくれたね。二人とも大好きなデートコース。両想い。あなたはいつにも増して愛おしい。
私の超能力は、あなたと縁を切った場合の結末を、決して教えてくれない。たぶん二人とも、互いを想い続けるのでしょう。でも、あなたが私を嫌いになるなんて、耐えられないの。
だから、さよなら。いい人、探してね。
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