え、実家が魔王城になってたんだが?

伝説の牛

魔王なんてそう簡単に誕生するわけないだろ

(ちょっと話が重すぎるなーと思ったので大幅修正しました)


「またしても勇者コーナ様がA級レベルのランドドラゴンを倒したよ!特集記事は早いもん勝ち!ほら、買った買った!」


「へぇ、そりゃすげぇ。おっちゃん、1枚ちょうだい」


「116ポリーだよ。毎度あり!」


窓から見える日曜日のロミナ街は、大量の人で賑わっていた。


それもそのはず、A級勇者がまたしてもA級モンスターを倒したのだ。


―――“勇者”

それは、この世界の人気な職業の一つである。

モンスターという生き物を倒し、モンスターの情報や体の部位を政府の研究機関に提供する仕事だ。

勇者の助手として魔法使いや剣士などもいるらしいが、そこまで詳しいことは知らない。


稼ぎがよく、その華やかさから勇者に憧れる者も多い。

しかし、3年に1度の試験に合格しないと免許を貰えないため、実際になれる者はひと握りほどだ。


俺ははなからそんな危険な仕事には興味無いので、こうして勤務先のパン屋で欠伸をできるほど余裕のある生活をできている。


……あ、お客さん。


“カランカラン”


「いらっしゃいませー。」


「こんにちはぁ」


大分太り気味のオバサンは、お目当てのパンを見つけると、次々とトレイに取り始めた。

1個、2個、3個に4個……。

パンを取る手は止まりそうにない。

“そんなんだから太るんだぞ”。とは言える訳がなかった。


「そういえば、また魔王が誕生したって言われてるらしいじゃない?もう私、怖くて怖くて、夜もガクブルなのよー」


魔王……か。

いくら時事ネタに興味のない俺でも、存在ぐらいは知っている。


本来モンスターは理性や思考がなく、俺たち人間に攻撃する時も防衛本能から攻撃している。

だが稀に、その攻撃に快感を覚えてしまう個体もいる。

その個体が驚異となったものが“魔王”だ。


魔王は短期間でモンスターの個体数が劇的に減ると存在が懸念される。


「でもまぁ、モンスターが減ると言ってもその背景は色々複雑ですから。どっかの勇者が狩りすぎただけかもしれませんし」


「それもそうねぇ」


心の底から思っていることを伝えると、オバサンは納得したのか、やっと会計し始めた。


魔王、魔王と世間は騒いでいるが、そう簡単に誕生したら魔王ではない。


現に俺が生きてきた30年近い時の中で存在が懸念されても、一度も魔王が登場したことは無かった。


皆考えすぎだ。

肩の力を抜けばいいのに。


“カランカラン”


オバサンが店から出ていったのを見届け、俺は買われて無くなったパンを補充しようと厨房へ向かった。

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え、実家が魔王城になってたんだが? 伝説の牛 @dennsetunousi

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