03.
自分の病室に戻ってから、考えた。魔法使いだった彼女が、俺の前で明かした真実――あの馬車の横転が、何者かが引き起こした事件だったという可能性について。
そして、その人物がいることを話した彼女が、その後に黙った理由についても、だ。それは明確で、その犯人が誰か分からない以上、不用意にそのことを話すと口止めされてしまう可能性があるからだろう。
犯人は……考えたくもないが、あの仲間にいた可能性だってある。つまり、彼女にとってみれば、目の前の「俺」こそが、その犯人であるという、選択肢も捨てきれない。だから、ある意味、彼女は既に口を滑らせてしまっている。
無論、俺は犯人ではない。だから良かったが、もし俺が犯人だったら、彼女のことは第一に警戒するだろう。
それよりも違和感があったのは、彼女に尋ねたときの、あの態度だった。口を滑らせてしまったにしては、やけに発言前に考えていたような気がする。瞬きの回数も多かったし、何か動揺しているような様子だった。
……まあ、あまり考えすぎても良くないか。
今は、異世界での「仲間たち」が、現実世界にもいるということを、心強く思った方が良いだろう。もしも、仲間の中に、裏切りを働いた、犯人がいたとしても、そうでない仲間の方が多いのだから。
俺のパーティーの構成はこうだ。勇者である俺、魔法使いの彼女、それから戦士の男性がひとりと、鍵師兼、罠師の男性がひとり。この四人で、魔王討伐まで共に歩んできた。何度も衝突することはあったが、それでも、同じ目的に向かって、切磋琢磨し合える、仲間たちだった。
あとの二人にも、早く会いたい。噂を聞く限りでは、この病院にはいないだろう。
だから、俺ももっと努力をして、早く動けるようになって、外へ出て行く必要がある。外へ出て、それから…………。
……この部分で、いつも、つまずく。それは、物理的なつまずきではなく、未来を見据えることに対する不安や、そもそもの、未来の不透明感から来るものだ。
ここを少しでも解決しないことには、俺はこの現実世界を生きていくのは、難しい。
考えてみれば、異世界のことにも似ている。あるいは、ゲームのようだと言っても良いだろう。
まずは、目標を立てる。異世界では、世界を陰で支配する「魔王」を討伐するという、明確な目標があった。それから、達成するための方法や、小さな目標を立てていく。俺は同じ境遇の仲間たちを集めて、魔王城へ向かうまでは集会所で「クエスト」を受けていた。ダンジョンを攻略して、経験値を積んで、レベルをアップして、報酬で新しい装備や道具を整えて、次の街へ向かう。その繰り返しの五年間だった。
だから、現実世界でも大筋の目標が欲しい。例えば、ちゃんと働いて、生計を立てる。同年代の人たちは当たり前に就職しているが、俺は何もないところからの再出発だ。
病院の一階、ロビー近くに置かれたパソコンに電源を入れる。ブラウン管のディスプレイが何とも古めかしい。動きのぎこちないインターネットで、求人情報を調べてみると、どれも最低限の資格として高卒であることが掲げられている。
「高卒か……」
ふと、高卒認定制度というものがあることを思い出す。昔に観たアニメで得た程度の知識だが……そこまでお金もかからなかったはずだ。
幸いにも、高校三年生の夏までは進学校に通っているから、それなりの知識はある。五年も経っているから、だいぶ忘れてはいるが、もう一度勉強すれば、合格もすぐだろう。
まずは、リハビリと並行して、勉強をしていこうと思う。俺の人生の、リスタートだ。最初の村クエストを、じっくりとやっていこう。
異世界を全クリしたので、現実世界を攻略しようと思います。 エイデン帝国民 @Ayden
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