第29話
「もう一軒行く?」
いつもより少し優しい瞳で聞かれる。
和泉も明日休みならその言葉に甘えたかもしれない・・・。
けれどあたしもそこまで空気の読めない女じゃない。
「・・・こないだ、あたしのオヤツ入れの引き出しに・・・。」
「おう。」
「・・・季節限定の、チョコレートが入ってた。」
ポツリと呟けばすこし可笑しそうに笑う。
「なんだよ。」
悔しいな。
・・・悔しいけど・・・。
「・・・ありがとう。」
そっと言葉を落とせば、和泉は柔らかく笑ってくれた。
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