第4話 全てに宿る金星4
翌朝、
(朝……?)
カーテンもない自分の部屋の窓を眺めながら、
朝ごはんには、昨日お隣の人からもらった肉じゃがとご飯パックを電子レンジに一緒に入れて温める。
「うっ!」
ボタンがうまく押せなかったので、ぎゅっと押す。すると、電子レンジから光が出始めた。
「ふぅ……ボタンをうまく押せないが、仕方がないね」
そんなことをつぶやきながら、
しかし、電子レンジを載せる台のようなものはなかったので、当然ながら床に置くしかなかった。
「……」
床の上にぽつんとある古い電子レンジの電子音に青い瞳は静かに動いた。
チーン!
「……いただきます」
段ボール箱を食卓に、コンビニの割り箸を持った
「
少し楽しい声で
助けても何の得もないのに
(確かに親切な人だ。
おかずをもぐもぐしていた
(まさか、肩に乗っていて落ちないように捕まえようとして、
今思い出しても本当に不思議な光景だったと
猫の幽霊二匹が
(なるべく見ないようにしたが、妙に目が行って
それが恥ずかしくてあたふたとご飯のおかわりしたのはおまけだ。
「あの子たちの傷も、絆創膏をお渡ししたから、すぐ治る……はず」
おかず容器を洗いながら、
後でおかず容器を返す時、傷をちゃんと確認しなければならないと
「ほんとう……いい人だよ」
おそらく倒れたのが自分でなくても助けてくれる、そんな優しい人であることを
「それに彼女さんもいるようだし」
一人暮らしの男性が食器も二人分で、決まりはPCデスクにある額縁の写真。
白髪の
「
素敵な大人だ。大きくなったらあんな大人になりたいと思うほど。
それが昨日、
「何か……私がお返しすることはないかな?」
ずっともらってばかりは嫌だ。
同情される気がするというよりは他人の善意は当然のことではないということを
いや――
他人ではなく、家族に与える善意も当然のことではない。
「そういえば財布に残ったお金が……」
制服に着替えた
現在残っているお金、一万三百円。これは
ここに引っ越してきた三週前までは十万円だったが、家賃六万円を払って、食費と交通費、学用品費と洗濯費などで少しずつ抜けてこの程度残った。
この家には洗濯機もないので、コインランドリーで制服を洗濯し、学用品もシャープよりは鉛筆を使い、交通費もできるだけ早く起きて歩いて登校するにも足りない。
故に
「今日は
「あと九日。うん、これで持てる……」
おにぎりやカップラーメンだけで済ませた結果、病院に運ばれた。というわけで、明日からはもう少しお金を使ってコンビニ弁当で食事を済ませようと
「安いコンビニ弁当が四百から五百円ぐらいだから……」
一日弁当一つで九日なら四千円ぐらい。その食費を除けば残るお金は六千三百円。念のため一千三百円を残しておけば五千円ほど残せるだろう。
「この五千円で
震える手で五千円を握る
「私は悪い子だから、善意を当たり前に思ってはいけない」
「そういえば今日もバイト先……早く探さないと」
父親が初めてこの家に連れてきたときに言った。「生活費は自分で稼げ」と。しかし、中学生の
残りの九日間、早くアルバイト先を見つけられなければ、来月の家賃を払うことも難しい。そう思った刹那――
「……ヒト
瞬間、瞳から玉のような涙が落ちた。びっくりした
甘えてはいけない。
「泣くな。私のせいで、みんなバラバラになったんだから」
父親が言った。お前が原因だ、と。
母親が言った。あなたのせいでバラバラになるのよ、と。
「私が、一人で頑張らないと。迷惑……かけてはいけないから」
そうだ。迷惑をかけてはいけない。
善意に甘えてはいけない。
「また迷惑かけたらパパにも捨てられる」
☆☆☆
それからお隣、二百一号室に特に動きはない。そのことがあって、翌日の夕方頃におかず容器をきれいに洗って届けてくれたことぐらい。
――こちらおかず容器です!それでは、これで!――
そんな風にさっさと行ってしまったのを
また食事でも用意しようかと思ってまた勧めたが、「お腹いっぱいで大丈夫です!」という言葉と共にきっぱりと断られた。
「やっぱりおじさんが作ったのは嫌だろうな〜うん。昨日はただお腹がすいて仕方なかっただけだろうしな〜」
そんな感じで三日が過ぎた。
それでも妙に気になったので、
「もしやコンビニで済ませなければいいんだが……」
ふとそんな気がしたからだ。
しかし、現実は不安なほど何事もない。これに対し
(当人が快く思わない親切は有り難迷惑になってしまうからな……)
そんなことを考えながら今日の夕食を準備する頃にピンポン〜!というチャイム音が聞こえてきた。
その音に
「やっほ〜!三日ぶりだね、クさん!」
そこには
黒髪の間にはピンクのハイライトを入れ、それをツインテールにして派手だ。白髪の
そこに派手なものは髪の毛に止まらない。右目は青色に左目は黒いオッドアイ。身なりは下からストッキングとスカート、最後にブラウスも喪服のような黒さだ。
しかし、基本的にフリルをつけたせいが、黒い喪服のような厳粛さとは程遠い。
かつて流行りの『地雷系』というファッションだと、
「何だ、ワタか?」
「その反応は何だよ〜!三日ぶりに会う友人であり、業界の先輩に冷たすぎるのでは?」
名前は
「この前、キャンプ場でも朝起きたらいないし!ぱっとコンテンツでネタにしちゃおうかな!」
「やめとけ、何をしてもお前が致命傷だ。またファンたちに怒鳴られると思うよ?」
おまけで五十万のVTuber。
「それより何の用で来た?ワタ」
「あ、そうそう。どれどれ〜」
そんな言葉とともに、
「これを返しに来た!私、優しいでしょ?クさん」
「優しい?そもそも私がトイレに行った間にお前が奪ったものだろう?」
それでも一応直接持ってきてくれたので、
「じゃあな」
その言葉と共に
ドン!ドン!!ドン!!!
突然聞こえてきたドアを叩く音に
「何だ?用事は全部済ませたんだろう?では帰れ。しっ、しっ」
「ひどくない?わざわざ寝袋を返そうと思って来たのに、コーヒーもないし!私はクさんをそんな子に育てたことがないのに!」
「私もお前に育てられた覚えがないが?」
そんな
あんなのが同い年だなんて、
「うん?それより何かおいしそうな匂いがするね?この匂いは……」
その言葉とともに、
「これはトッポッキを作る匂いだね?」
「……」
「何の風の吹?今どきの子供が好きそうなものを作って」
「……」
「私が作ってと言った時は、こんなに辛いものはあまり好きじゃないと言ったくせに」
じっと見つめる
「こら!私の言葉を無視するな!わかった、理由は聞かないから一緒に食べよう?ちょうど私もたくさん歩いてお腹すいたし!」
「うるさいから帰れ。そもそもお前の分はない」
「ひどい〜!私との関係は遊びだったの?!キャンプ場でお互いの温もりを感じた熱〜い一晩を楽しんだくせに!」
「またざれ言を……それより何がお互いの温もりが!?お前が私の寝袋を奪っただけなの――」
ドン!
一瞬、何かが落ちる音に、
お弁当袋、中高生が登校する時に弁当を入れる袋、それが落ちる音だった。
「……」
そのお弁当袋の主人は、やや驚いた表情を見せた。いや、実は前髪でよく目は見えないが、あの反応を見て
「ああ!お弁当袋!久しぶりに見る〜今どきの子供たちもお弁当袋をちゃんと使うんだね!」
そんな気の利かない
「あ……ううん!」
目を覚ました
ダダダダッ!
あわただしいローファーの音に
キィー
もう隣のドアは堅く閉ざされてしまった。
「はあ……」
そんなため息と共に
「ふむふむ、あの制服を見ると近くの中学校かな?生徒だった時には私もあんな可愛い制服着たかったのに〜今着てもコスプレになるけど、後で一度着てみようか?どう思う、クさん?」
「……」
「クさん?」
「……あ、うん。まあ、いいんじゃない?」
「私の話聞いてないんだね?」
微妙な
「もしかして……あの隣の中学生と何かあったの?」
「……いいから、トッポッキでも食べるが?」
そのまま黙っていたらだめかな?――という言葉を最大限遠回しに言った
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