第3話 全てに宿る金星3
どうやら
あまりにもよく食べていたので、
「美味しく食べるから作った甲斐がありましたね」
食事の後に
「ご、ごめんなさい。あの……おじさん」
ガシャン
瞬間、ティーバッグでお茶を入れていた
(そ、そうだな……中学生にとって二十六歳はおじさんだな。うん、そうだな。アハハハ)
そんな残酷な現実に
「ご、ごめんなさい!その……名前を知らなくて……」
そういえば、お互い自己紹介をしていないことに
自称礼儀正しい青年である
「私の名前は
何か自らおじさんであることを認めたそんな自嘲的な言葉に
「いいえ、ちゃんと
礼儀正しい
「私は
「それは可愛らしい愛称ですね」
少し笑って
「あ、そして私にはため口でいいんです。私はまだ中学生ですし、その方が気まずくないので」
「……それではそうしようか」
案外、そこは遠慮しないのが
お互いお茶を飲んだ後、
「残り物は包んであげるから、明日温めて食べな」
「いいえ、大丈夫です。申し訳ないので……」
「さっきまでご飯をお代わりした人の口から出る言葉ではないが?」
その言葉に
(断りたいけど、おいしくて断れないあの反応が可愛いな〜)
多分いとこを揶揄うおじさんがこんな感じだろう。
(幼い頃、私と妹にご飯を食べさせてくれた隣のおばさんがこんな気持ちかな……)
そんな昔のことを思い出し、
「あ、家にご飯はある?」
「そ、それくらいはありますよ!……ご飯パックだけど」
「はいはい」
笑いながら
「あ、
「うん?」
何か鋭いものによる切り傷だ。
(あれ?何に切られたんだ?さっき、料理する時に切ったことに気づかなかったのか?)
おかしい。
「ううん……まあ、すぐに治るだろう」
「だ、だめです!そのままにしておくと、あいつらが血に反応して!」
「あいつら?」
「……か、蚊です!」
「ああ、確かに蚊は血に反応するな。最近は夏よりは春や秋にもっと多いと言っているし……それなら絆創膏でも貼っておかないと」
それよりよく考えてみると、絆創膏を買っておかなかったという事実に
面倒だけど買いに行こうと思った瞬間――
「ば、絆創膏です!」
「おお、準備がいいな?カナさん」
「いいえ、ただこのキャラ好きなんで。で――カナさん?!」
「うん、みんなカナと呼んでいるというからカナさん。もしかして気に入らないとか?」
「い、い、い、いえ……と、とにかく!その絆創膏、ちゃんと貼っておいてください!さあ!」
その言葉と共に
(中学生にしては珍しく子供みたいなのが好きなんだな?いや、最近は大人もキャラクターシールを集めるためにパンを買っているから、こういうのは偏見かな?ワタの奴も箱単位で買ってるし)
箱単位でパンを買った友人の顔を思い浮かべたのか、
「ありがとう。うちは絆創膏がなくて、おかげで助かったよ。カナさん」
「い、いいえ!こちらこそ……おやすみなさい、
その言葉とともに、
ローファーを引く音がマンションの廊下で響き渡ったが、朝とは違ってもっと身近に感じた。
「……」
静かに鍵で自分の家のドアを開けた
何があったのか気になって首をかしげる
別れの挨拶としては何も言わずに堅く手を振るだけだが、
キィー
「……」
隣のドアが閉まる音が聞こえると、
「はあ……」
それはちょっと不満そうな顔だった。当然だが、その顔はもう視野にない
(……あんないい子をな)
これはあくまで
さっきあの家に入って家の構造をちらっと見た
(あの家、私のワンルームより広かった)
それは物理的に広いという意味ではない。あの家には家具がない。
目立つ電化製品は基本的に備え付けている小さな冷蔵庫と古い電子レンジぐらい。他に家具どころか、スクールバッグだけが転がっていた殺風景な部屋だった。
――事情も知らない部外者が他人のことに口を挟まないでください。あれと係わると君も面倒になるでしょう――
ふと
確かに
「あまり知りたくもないし」
基本的に
反面、初めから悪意を見せた人には――
「……」
スマホを取り出した
[どうしだ?
「ちょっと時間あるか?サイ弁」
電話に出たのは
普段は弁護士の仕事をしているが、たまには――
「悪いけど人を一人、
[こりゃまた……誰を
「
[味気ない……それで誰?]
サイ弁のその問いに
「知らない、でも娘は知っている。名前は
[名前だけで調べろなんて、ひどいんじゃない?こちらは未来型の猫ロボットではないんですが?]
「私も未来型の猫ロボットだけにしがみつく小学生ではねぇよ」
そんなつまらない冗談を交わした
「そして最近一ヵ月、長ければ二ヵ月前くらいに離婚訴訟が終わったことが多分ある。そうでない場合、無駄な苦労をさせることで済まないが」
[おいおい……]
やはり無理か。と、
[お前がそんなことを言う時は、ロトの番号以外は全部当たった時だ。一ヵ月、長ければ二ヵ月前くらいに終わった離婚訴訟だね?取り敢えずあたって見る]
「ありがとう。金は後でお前の口座に――」
[お金はいい。いつものあれで]
断固たるサイ弁の言葉に
「あれ?私としては金の方が……」
[何の、高校からの腐れ縁だろう?]
本当にひどい腐れ縁だと
[調査は大目に十日くらいかかると思う]
「はいはい。もし何も出なくても一応連絡しろ。そしてちゃんと分かったら、お前の頼み全部聞いてやる」
[ははっ、それでこそ我らの大将だ]
「うるせぇ」
電話を切った
「はあ、またあれか……考えただけで疲れる」
これはあくまで保険だ。一応はやっておいた方がいいと
実はこの感が当たらないことを
「……」
初めて箸を握った時、
「私と同じだ」
子供の箸の使い方は普通親から習う。しかし、そうでない場合は周りの人たちを適当に真似するのが大半。例えば学校給食の時とか。
これを矯正できない場合、すでにねじれてしまった箸の使い方はほとんどそのまま定着する。
「こういうのは妙に変わらないんだな。私も直すのに苦労したし……」
そのような環境にある割には、絆創膏が子ども染みなのが不思議だが。
「ところで、これは今日の支出がキャラ絆創膏になったというのか?」
ちょっと冗談っぽい口調で
「まったく、思ったより子供らしいところもあるな?」
そんな言葉と共に
子供らしくなく妙に大人っぽいところが――いや、早く大人になってしまったところが少し心配だったが、こんな子供らしいところにちょっと安心する。
「お返しにキャラ絆創膏か……とりあえず、メモしておこうか?後で小説の参考になるかもしれないから」
そんな言い訳をしながら手帳にこのことを記録する
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