第13話 遊園地デートとリストの進展

 2010年7月、夏休み4日目。


 朝、目覚ましより先にガラケーのバイブが枕元で震える。


 眠い目をこすって画面見ると、彩愛からのメールだ。


『ねえ、今日、遊園地行かない?』と、笑顔の絵文字が3つ並んでる。


 昨日、カラオケで見た【デートで行きたい場所】のページが頭に浮かぶ。


 ジェットコースターや観覧車の絵が、彩愛の可愛い字で書いてあった。


 少し考えて、『いいよ。10時に駅でどう?』って返す。


 送信ボタン押した瞬間、『やった!めっちゃ楽しみ!10時ね!』とすぐに返信が来て、朝からテンション上がる。


 付き合って2日目、さっそく2回目のデートが決まった。


 シャワー浴びて、Tシャツとジーンズに着替える。


 鏡見ながら、「ダサくないかな?」って呟いて、ちょっと恥ずかしくなる。


 2010年の夏、流行りのルーズなTシャツに、ちょっと色褪せたスニーカー。


 母さんが台所から「悠翔、朝ご飯は?」って声かけてくる。


「いらない。出かけるから」って言うと、「ふーん、また女の子?」ってニヤニヤ。


「うるさいな、デートだよ」って返すと、「おお、順調ねえ!今度ちゃんと紹介しなさいよー?」と言われ、中身は30歳のくせに顔熱くなって、「うるさいって!」って言いながら急いで家を出た。


 駅に向かう道、夏の陽射しが強くて、アスファルトが熱気帯びてる。


 蝉の声がうるさいくらい響いてて、コンビニの前で中学生がS●NYのウォークマンで音楽聴いてるのが目に入る。


 ウォークマンとか時代だなーって思いながら、駅の改札前で待ってると、彩愛が薄ピンクのTシャツとデニムのショートパンツで現れる。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818622172027437958


「悠翔くん、おはよう!」って笑顔で近づいてくる。


「おはよう。動きやすい服にしたんだな」って言うと、「うん、遊園地だしさ!どうかな…//」「めっちゃ可愛いよ」って笑うと、「ほんと?良かった…//」って顔赤くして俯く。


「じゃあ、行こう。電車で30分くらいだっけ」って言うと、「うん、楽しみ!」と、彩愛が隣に並ぶ。


 改札通って、ホームで電車待つ。


 電車には広告に「P●NASONICのL●MIXデジカメ」って載ってて、時代を感じる。


 隣に座って、手つなぐと、「わ、デートっぽいね」って彩愛が笑う。


「だね。遊園地もリストにあったもんね」って言うと、「うん、昨日カラオケで1つ叶ったから、今日で2つ目…。えへへ…幸せすぎる…」って肩寄せてくる。


 電車の窓から見える夏の景色眺めながら、「彩愛、遊園地好き?」と聞くと、「うん、大好き!でも、悠翔くんと一緒ならどこでも…」と、目を細める。


「俺も同じ。楽しみだね」と言うと、「うん…//」って手をぎゅっと握ってくる。


 15年の想いが詰まった仕草に、心が温かくなる。



 電車を降りて、遊園地まで歩く。


 駅から5分くらいの割と近場の遊園地だ。


 ゲートにでっかい看板あって、夏休みだから家族連れやカップルで賑わってる。


 チケット売り場で、「2人分お願いします」と言うと、店員が「楽しんできてくださいね」と笑顔で渡してくれる。


「ありがとうございます!」と、彩愛が元気に返す。


 ゲート通ると、風船や音楽が響いてて、ポップなBGMが流れてる。


「何から乗る?」って聞くと、「ジェットコースター!」って即答。


「おお…怖くないの?」って笑うと、「うーん、ちょっと怖いけど、悠翔くんいるから大丈夫!」と、腕つかんでくる。


 ジェットコースターの列に並ぶ。


「初めて乗ったの、小学生の時なんだけど、泣いちゃってさ…」

「そっか、じゃあ今回は泣いたら慰めてあげる」

「も、もう子供じゃないもん…」と、頬を膨らませる。


 順番来て、席に座ると、「怖くなってきた…//」って俺の手握ってくる。


「大丈夫だよ。俺がいるから」って言うと、「うん、信じる…!」って頷く。


 スタートすると、急降下で「きゃあっ!」って叫びながらしがみついてくる。


 俺も「うおっ!」って声出ちゃって、2人で笑いながら揺られる。


 降りた後、「心臓止まるかと思った…!」って彩愛が息切らせて言う。


「でも、楽しかっただろ?」って聞くと、「うん、悠翔くんと一緒なら怖くても楽しいよ!次は何に乗る?」


 次に観覧車へ向かった。


「ジェットコースターの後はゆっくりしたいから」

「だね。ゆっくり景色見よう」


 ちょっと古めかしいデザインの観覧車に乗ると、ゆっくりと上がる。


 遊園地の全景が広がって、「わあ、高い!きれいだね…」って彩愛が窓に顔近づける。


「だね。夜見ると尚よさそう」

「うん、悠翔くんと過ごす夏休みは最高だよ。こんな景色、ずっと夢見てた」

「俺も彩愛と一緒に来れて嬉しい」

「ほんと?嬉しい…//」


 頂上近くで、「彩愛」って呼ぶと、「ん?」ってこっち向く。


 そっと顔近づけてキスすると、「ん…//」って小さく声漏らして目を閉じる。


「好きだよ」って言うと、「私も好き…//」って頬染めて返す。


「観覧車でキスなんて…ロマンチックすぎて死にそう…//」って顔隠す。


「死んじゃダメだよ。まだリストにやりたいことがたくさん残ってるでしょ?」って笑うと、「うん、そうだね!生きる!でも、心臓バクバクだよ…//」って胸押さえる。


「俺もだよ。彩愛のせいでね?」

「え、私のせい!?やめてよ…//じゃあ…止めたほうがいい?」

「心臓を止めるって…殺すってこと?w」

「じょ、ジョーダンだよ笑」


 ゴンドラがゆっくり降りる間、「九条くんって、優しいよね。昔からずっとそうだった」って呟く。


「そうかな?普通だと思うけど」

「ううん、そんなことない。ずっと見てたから分かる」

「そっか…ありがとうな」

「ううん、私がありがとうだよ」


 15年の片想いが感じられて、胸が締め付けられる。


 観覧車降りてから、射的コーナーへ。


「よし、あれやろう」って言うと、「ほんと?頑張ってね!」って彩愛が応援。


 ちょっとチープなコルク銃で狙って、クマのぬいぐるみゲット。


「おお、すごっ!」って彩愛が拍手。


「はい、彩愛にあげる」って渡すと、「わあ!ありがとう!可愛い…//」って抱きしめてくる。


「名前つけよう」

「うん、じゃあ…悠クマで!」

「それは…ちょっと恥ずいかも」

「えへへ、大好きだよ〜、悠クマ〜」

「悠クマ、俺たちにとっての子供だな」って冗談言うと、「え、こ、子供!?ま、まだ…エッチもしてないよ?//」って顔を赤くする。


 それから輪投げコーナー行き、やってみるも全然当たらない。


「下手すぎだろ、俺…」って笑うと、「私の見てて!」って彩愛が挑戦。


 プラスチックの輪がポールに全然入らず、「あはは、2人とも下手!」と大笑い。


 次にプリクラコーナー見つける。

プリクラの機械が並んでて、「撮ろうぜ。記念にさ」って言うと、「うん、絶対撮りたい!」ってノリノリ。


 機械に入って、ピースしたり、ハート作ったりして撮る。


「可愛く撮れてるかな…//」って彩愛が言う。「彩愛はいつでも可愛いよ」って返すと、「やめてよ…//」って照れる。


 出来上がったプリクラに、「彩愛♡悠翔くん」って落書きして、「ノートに貼るね!」ってカバンからリスト出す。


 ノートの【遊園地】の欄にプリクラ貼りながら、「叶ったよ。嬉しいな」って満足そうに笑う。


「次は何にする?」って聞くと、遊園地の中、パレードの音が遠くで聞こえるエリアに、手作りグッズの店が目に入る。


 看板には【オリジナルキーホルダー作り】」って書いてあって、「おお、あれ楽しそうじゃない?」というと、「え、ほんとだ!リストにも『お揃いのキーホルダー』があるんだよ!」と、興奮気味にそう言った。


 お店に入ると、ビーズとかプラ板並んだ素朴な店内で、店員が「好きな素材選んでくださいね」って笑顔で出迎える。


「何にする?」って聞くと、「うーん、ハートがいいな…//」って彩愛がビーズ手に取る。


「じゃあ、俺もハートにする。これでお揃いだね」って言うと、「うん、お揃い…ドキドキするね//」って顔赤くする。


 プラ板にハート描いて、色塗って、焼いてもらう。待ってる間、「名前を入れよう」と提案する。


「うん、じゃあ、私が『悠翔』って書くから、悠翔くんは『彩愛』って書いてね」

「おお、いいな」


 完成したキーホルダー、ピンクのハートに「悠翔」、青のハートに「彩愛」、と入ってて、「可愛い!」と、彩愛が喜ぶ。


「これでお揃いだね。一生大事にするよ」と言うと、「私も!」と楽しそうに笑った。


 夕方、入り口近くのアイス屋で休憩。


「少し疲れたな。アイス食べよう」

「うん、食べたい!」


 バニラとチョコのダブル頼んで、ベンチに座る。「一口ちょうだい」と彩愛が俺のアイス舐めると、「甘いね。美味しい!」と笑う。


「でも、彩愛の口の方が甘かった」とからかうと、「やめてよ…恥ずかしい…//」と顔隠す。


「口にチョコついてるよ」

「え、どこ!?」って慌てるから、ティッシュで拭く。


「ありがと…//」

「次こそカフェ巡りとかしよう!」

「うん、いいね。夏休み中に行こうぜ」

「うん、早く行きたい!」


 電車で帰る時、彩愛が疲れて肩に頭乗せてくる。


「楽しかったね、遊園地」と、眠そうに言う。「うん…。大好きだよ、彩愛」

「私も…大好き…」と、目を閉じる。


 電車の窓に映る2人の姿見ながら、付き合ってまだ2日なのに、こんな幸せってありえるんだなって思う。


 今日は美緒のこと、全然頭に浮かばなかった。

彩愛の笑顔が全部埋めてくれた。


 駅で別れる時、「そういえば誕生日、8月だったよね?」と言われた。


「よく覚えてるね。そう、8月5日」

「楽しみにして!」と、彩愛が笑う。


 そのまま軽くキスして、「またね」って手を振って別れた。


 家に帰ると、母さんが「遊園地楽しかった?」ってニヤニヤ。


「うん…まぁ、最高だった」って素直に答える。


 部屋でプリクラとキーホルダー見ながら、彩愛の【彩愛♡悠翔くん】が目に入る。


 夜、ベッドで遊園地のことを思い出す。


 ジェットコースターの叫び声、観覧車のキス、キーホルダー作り、アイスの甘さ。


 すふと、彩愛からのメールが来て、『今日、ほんと最高だったよ。誕生日、楽しみにしててね!何かすごいこと考えるから!』って書いてある。


『楽しみにしてるよ』と、返す。


 どんなサプライズか、想像してると眠れなくなる。

夢の中でさえ、彩愛の笑顔が浮かんでくるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る