第12話 カラオケと未来のリスト
喫茶店を出た俺と彩愛は、駅前の喧騒を抜けてカラオケ店に向かう。
夏の陽射しが強くて、蝉の声が元気よく響く。
隣を歩く彩愛が「個室がいいよね…//」って呟いた声がまだ耳に残ってる。
顔赤くして俯いてる彼女の手を握ると、「う、うん…//」って小さく返してくる。
心臓がドキドキして、15年の想いが通じ合った実感がじわじわ湧いてくる。
カラオケに到着して、「2時間で」と言うと、店員が「3番の部屋へどうぞ」と案内してくれる。
「もう少し長くてもいいのに…」と、口を尖らせる彩愛。
「そしたら延長すればいいよ」というと、「う、うん…//」と顔を赤くする。
個室に入ると、冷房が効いてて少し涼しい。
ソファに並んで座って、マイクとリモコンが置かれたテーブル見ながら、「何歌う?」って聞くけど、彩愛が「うーん…歌うより、ね?」って俺に寄りかかってくる。
彩愛はどうやら歌うつもりなんて最初からなかったみたいだった。
俺の肩に頭乗せて、「九条くん…好きだよ//」って呟く。
「俺も好きだよ」って返すと、彼女が顔上げて、目を潤ませて笑う。
そっと近づいて、唇が触れる。
喫茶店でのキスとは違って、静かな個室でゆっくり味わう感じ。
彩愛が「ん…//」って小さく声漏らして、俺の胸に手を置いてくる。
そのまま抱き合うと、小柄だけど彼女の温かさが確かに伝わってきて、心が落ち着く。
「彩愛、ほんと可愛いな」って言うと、「やめてよ…恥ずかしい//」って顔隠すけど、嬉しそうに笑ってる。
それからまたキスして、「好きだよ」「私も好き」って何度も言い合う。
まさによく見かけるバカップルそのものになってしまった。
少し経って、彩愛がカバンから恥ずかしそうに一冊のノート取り出す。
「これ…付き合ったらやりたいことリストなんだ//」って照れながら見せてくれる。
表紙に『彩愛と九条くんの未来』って可愛い字で書いてあって、思わず笑ってしまった。
「15年も考えててくれたんだもんね」って言うと、「うん…ずっと夢見てたから//」って頬染める。
そうして、見せてもらうとノート開くと、びっしりと書いてあった。
- 「デートで行きたい場所」: 海、カフェ巡り、遊園地、映画館、夜の公園で星見。
- 「してみたいこと」: お揃いのキーホルダー作る、一緒に料理、手つなぎデート、誕生日をお祝い。
- 「将来のこと」: 同棲して朝一緒にご飯食べる、結婚式は小さくていいから家族だけで、子供は2人欲しい。
「すげえ…全部可愛いな」って言うと、「そ、そうかな…//」って彩愛がソファにもたれる。
「海とカフェ巡りは約束してたもんな」って笑うと、「うん、早く行きたいよ」って目を輝かせる。
ページめくるたび、彩愛の15年の想いが溢れてて、胸が熱くなる。
「後ろの方には何が書いてあるの?」と気になって、ペラペラめくろうとすると、「だ、だめっ!//」って彩愛が全力で止めてくる。
腕つかまれて、「ぜ、絶対に見ないで!お願い!//」って必死な顔。
笑いながら「何?隠したいことでもあんの?」ってからかうと、「う、うう…//」って唸って抵抗する。
でも、そこまで言われると気になってちょっと強引に最後の方見てしまった。
最後のページに『やってみたいエッチなこと』ってタイトル。ズラーッと書いてある。
- 「一緒にシャワー浴びたい」
- 「寝る前に抱き合ってキス」
- 「朝起きてすぐチューしたい」
- 「旅行先のホテルで露天風呂に入りながらイチャイチャしたい」
・「毎晩エッチなことして、夢中にさせたい」
・「出来れば言葉責め…」
などと、目で追っていると彩愛が「ひゃあっ!//」って叫んで、ノート奪い返してソファに埋まる。
「もう顔見れない…死ぬ…//」って顔真っ赤にして呻いてる。
「彩愛、これ…」って笑うと、「言わないで!忘れて!//」と、鞄で顔隠す。
「いや、忘れられないよ。可愛すぎる」って言うと、「うう…最低…//」と涙目でそう言った。
「15年分、こんなことも考えてたんだな」ってからかうと、「だって…好きだから…//」って小声で返す。
ソファから顔上げて、「引いた?嫌いになった?」と上目遣い。
「嫌いになるわけないだろ。普通に嬉しいよ。俺だって男だし、付き合ったらそういうことしたい」って頭撫でると、「ほんと…?」って笑顔戻る。
また抱き合って、「大好きだよ」って囁き合う。
そんなことをしているとあっという間に時間が来て、カラオケの時間、残り10分でやっと「歌う?延長する?」と聞いたけど、「ううん、せっかくのデートだから…外にも出よう」と言われた。
正直、俺としてはもう少しイチャイチャしたかったのは秘密である。
カラオケを出て、駅前で「お腹減ったな」って言うと、「私も!ご飯食べようよ」と彩愛が提案。
近くのファミレスに入る。
窓際の席で、ハンバーグセットとオムライス頼んで、向かい合って食べる。
「付き合った初日がこんな感じなんて、幸せすぎて本当に夢みたい」と、彩愛が笑う。
「だな。15年分の初日だもんな」
「うん、幸せすぎるよ」
食べてる間も、手を触り合ったり、「一口ちょうだい」って彩愛が俺のハンバーグ食べたり。
彼女がケチャップついた口元拭いてあげると、「恥ずかしい…//」って俯くけど、どこか嬉しそうだった。
「なんかすごいデートっぽいな、これ」って言うと、「うん、リストの『一緒にご飯』、叶っちゃった」って笑う。
食後は駅前の公園まで歩いて、ベンチに座ってお互いに本を読み始める。
こういう時間も好きだった。
「夜の公園で星見もしたいな」って彩愛が言う。
「うん、リストに書いてたもんな。また今度な。全部叶えよう」って約束すると、「うん、楽しみ」って肩寄せてくる。
帰り道、彩愛の手握って駅まで送る。「今日、ほんと楽しかったよ」って言うと、「私も。九条くんと付き合えるなんて…夢みたい」って目を潤ませる。
「これからは九条くんじゃなくて、悠翔って読んで欲しいな」
「そ、そうだよね…//彼氏だもんね…//じゃ、じゃあ…バイバイ、悠翔」と手を振った。
家に帰ると、母さんが「デートだったの?」ってニヤニヤ。
「うるさい」って返すけど、心の中、彩愛の笑顔でいっぱいだった。
夜、ベッドでノートのこと思い出す。
あの後ろページ、恥ずかしがる彩愛が可愛すぎて、ニヤニヤが止まらない。
すると、彩愛からのメールが来て、『今日、幸せだったよ。明日も会いたいな』って書いてある。
『俺もだよ。会おうぜ』って返す。
その瞬間、ふと写真を撮ればよかったと思う。
せっかくだし、自撮りの写真とか欲しいなと思い、『彩愛の写真が欲しいな』とメールする。
すると、すぐに返信が返ってくる。
『写真って…どういう写真?』
『自撮りの写真とか?なんでもいいよ?ほら、今日撮り忘れたから』
少ししてから、写真と文章が送られてくる。
『…おかずに使ってください』
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818622171969273618
どうやら、30年拗らせてしまった彼女の知識には偏りがあるようだった。
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