序章5 路地裏
side_ヒカリ
嫌な予感がした。衛兵事務所に駆けつけたとき、2人の人が仕事をしていた。私は簡潔に話し、急いで向かったもらう。小さい村だ、元々そんなに大きい事件が起きる事はない。もしかしたら表面化しなかっただけかもしれないが…。
話を聞いた衛兵は慌てたように上部へと連絡する為に村を走り始めた。もう一人は事件現場に向かうようだ。
だから、私は…
先に戻ることにした。本気を出せば衛兵なんかよりも早くつける。いや、待てないのだ。
彼女…アイリスの元に戻りたい。
変な胸騒ぎがする。
目は私たちが黒い布で隠してしまっているためどのような表情をしているかわからない。でも私達はもう10年も一緒にいる。
だから分かったんだ。
ずっと貴方を見続けてる私だからわかった。
いつも通りヘラヘラして軽薄で…何考えてるかわからない。嘘ばっかりの彼女。でも、時折真面目に何かを成そうとしている時がある。優しかったあの時の面影が重なる時があるんだ。
嫌いになれない。
離すことが…出来ない。
何度、嫌になったって、でも最初に根付いてしまった感情が消えてくれないのだ。
だから私は彼女を1番よく見てる自信がある。
だからわかったんだ。
最後に見た表情は何かを企んでいる気がするって。
ああ…、一人にしなければよかった。
早く…戻らないと…。
「おかえり、早かったね」
「……減ってる。その死体は何?」
_____________
「ごめん、縛りが甘くて逃げ出しちゃって。でもお頭らしき1人は仕留めたよ。」
ハアハアと荒い息をしながら目の前でただ私を見つめる勇者。たまたま暗い路地に明るい場所から私を見ているからだろうか、その御光がまた勇者としての存在感を表しているように感じる。
怖い顔しちゃってー!苦手なかったよなんて軽い口を叩こうとしたけど、勇者の真剣な雰囲気に空気を読むことにした。
でも…何故そんな焦ってるんだ。私はここにいるじゃないか?
勇者は私を一瞥し、私の奥の死体を見る。顔を歪ませて…気に食わないのか、困っているのか、なんとも読み取れない表情をする。
「殺したの…?」
「意外と強くてね、私の手には負えなかったんだ〜!」
ヘラヘラと笑うと、虫けらを見るような目で私を見つめる。ここ10年なんだかんだ仲良くやってきたけど、やっぱ旅に出ると綺麗な部分だけを見せられなくなる。まあ、こんな旅だしね。だから段々と分かってきた私の本性に嫌になってきたのかな。
日に日に私を見つめる目が鋭くなる。まあただ、私は甘ちゃんから逞しくなる勇者に少しだけ嬉しさを感じてるのは事実。
「嘘つかないで!
何故…、殺さなくても済んだでしょう?貴方ならできたはず、、。」
「うん。そうだね。」
勇者に嘘はバレる。きっと彼女もスキルを使って分かっているのだろう。だから肯定する。でも…彼女は驚いたようだった。
バタバタと勇者の後ろから足音がする。ちゃんと衛兵も連れてきてくれたみたいだ。
勇者を追い抜かし、この現状を確認しようと必死に見たものを声にあげている。「死者一名、捕縛7名」そして困ったようにウロウロと回っている。
まあ、こんな村ではこんな事もそうそうないだろう。だからしょうがないか。微笑ましいぐらいだね。
そんな同意を求めるような気持ちで勇者の方を見る。
勇者は瞬きもせずに私を見つめていた。
直線のような視線。目と目が交わる。
綺麗な金色の瞳。
泣いてないのに何故か彼女が泣きそうだと感じた。
だから…名前で呼ぶのは嫌なんだ。
関係が続いてしまうこのパーティという関係が嫌なんだ。
メモリが少し上がってしまった気がした。
思わず首元に手を添える。
少しだけ…胸が痛んだ気がした。
【||20%】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます