4話 突撃!隣の住人さん!(後編)

「おーい!開けるっすよー!」


椿つばきに連れられ、次はカズキ?という名の隊員の部屋に来た。


「ちょっと待ってくれ!あークソ!こんなことなら日頃から掃除しとくんだった!」


「カズくん、この服は…洗濯かい?」


「カズの兄貴、、もうちょい掃除しとけよ…」


3つの声が部屋の中からする。

襖の部屋に男は3人いたから全員ここに集まっているのだろう。


「ありゃ~大変そうっすね~」


そう言いながら、椿はかけていたメガネをハンカチで拭き始めた。


「…目悪いのか?」


「いや、めちゃいいっす。1.5あるっす」


「じゃあ、なんでメガネかけてんだよ…1.5って私よりいいぞ?」


「伊達メガネって言うんすよ!ただのおしゃれっす!」


「おしゃれ…ねぇ」


ニコニコしながら、教えてくれた彼女に私はこれ以上追求しにくくなった。


そうこうしているうちにドアが開いた。


「いいぜ!狭い部屋だけど、入ってこいよ!」


そう言いながら、先程の黒髪の男が出てきた。


「そんじゃ、お邪魔します」


「お邪魔するっす~」


入ると、先程の蒼空そらの部屋とは全然違う内装だった。

いや、まあ男女の部屋で内装が違うなんてことよくあるだろうが、それにしても違う。


蒼空の部屋は整理整頓がされていて、「大人の余裕を感じる、居心地のいい空間」という感じだった。


しかし、彼の部屋は違う。

急いで片付けたのがわかりやすく、乱雑。

ただ、本人は気にせず楽しく暮らしているんだろうなぁというのがわかる。


「ほら、座れ座れ!お前ら2人だけか?蒼空はどした」


「蒼空さんは電話対応しに行ったっす。多分"依頼"の方かと」


あの説明のあとすぐに電話の音がふすま部屋の方から聞こえた。

蒼空は少し嫌そうな顔をしながらも、私たちに次の部屋へ行くように指示してきたため、こちらへ来たのだ。


「はぁ!?じゃあ、今日も仕事かよ…」


と言い、私と同世代であろう金髪の男は肩を

下ろした。


そして、彼を慰めるように今度は私より年上であろう銀髪の男性が彼の背中を優しく叩く。


「ま、そんなことはどうでもいいのさ!自己紹介、するんだろ?」


「あぁ…?い、いいのか?」


「良いんだいいんだ。いつもの事なんだよ」


そう言うと彼はこっちだと誘導して、私を彼自身のベットの上に乗せると、自分は床に座りあぐらをかき始めた。


「んじゃ、言うな。俺はたちばな 和樹かずき。カズでも、かずにぃでもなんとでも呼んでくれ」


そう言うと彼はこちらにピースをしてきた。


「あぁ、よろしくな。カズ」


「和兄とは呼んでくれないのか!?」


「いや…別にいいかなって…本気で呼んで欲しかったのか?」


「久しぶりの中学生隊員だから嬉しかったんだよ~…まあ、いいさ。好きなように呼べって言ったのは俺だしな…」


そう言いながらハハッ…と笑っていたが、眉や肩はしょんぼりしていた。


(いつか呼んでやるか…)


慈悲の心でそう思った。


「次は僕でいいかな?」


カズの奥から銀髪の男性が声を上げた。


「僕は犬神いぬがみ 海斗かいと。海斗でいいからね、如月きさらぎちゃん」


「あぁ、海斗よろしくな」


「さて、しゅうく~ん?自己紹介できるかなぁ?」


カズはどこから出しているのか謎すぎる、猫なで声を出しながら金髪の男に近づいた。


「出来るっつの!てか、キメェよ!!!」


そう言いながら、彼は私の前に来ると数センチ上から見下ろす形でムスッとしながら話してきた。


「俺は!お前の事を隊員だとは一切認めてないからな!!」


(私に向けた第一声がそれかよ)


「ちょっと、ダメっすよ秀くん!みんな、仲良くしろって翼さん言ってたっす!」


「うるせぇ!俺はそんな役に立たなそうなチビ女に自分の名前なんか名乗らねぇよ!」


「あ、こいつ、神谷かみや 秀太郎しゅうたろうって言うんだ。俺らみんな秀って呼んでるから朱乃もそう呼んでいいと思うぜ」


「あぁ、わかった。よろしくな秀」


「お前ら2人俺の意見無視かよ!!!」


「まあまあ秀くん落ち着いて…」


悪意があった訳ではないのだが、何故か秀がキレており、それを海斗が止めている。


(私、なんかやらかしたか?)


そう思いながら、椿とカズと共に秀が落ち着くのを見守った。

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