クルーズの罠

クルーズに乗れる! とウッキウキで過ごしていたら、そのクルーズ会社から電話がかかってきて【無料でお部屋のランクアップが出来ますが、しますか?】と言ってくれた!!


めっちゃ嬉しい!!


これが世に聞くエコノミークラスがビジネスクラスになったりするやつか! とウッキウキ1000%で、理由は聞かずに電話を切った。


そして、母に「すごいよ! すごいよ!」とルンルン気分で報告をした、が、


「あんた、何で理由を聞かないのよ。怪しいじゃないの。そんなの」


確かに。


でも怪しくはないだろう、しっかりしたクルーズ会社だし。


ちゃんと自分も知ってるクルーズ会社だし……?


なんて名前だったか?


まぁ、そんなことより。


今度やるであろう、クルーズ説明パーティとやらに行けばいいらしい。


車で連れてって〜。と言ったが、無視された。


へぃへぃ。自分で行きますよ。


パーティ会場は、海の見える港というか、何度も何度も見た憧れのクルーズ旅行のYouTube動画に出てくる、横浜のクルーズターミナル的なところでやっていた。


パーティは、あまり楽しくなかった。


金持ちは席に座ってご飯を食べてるのに、貧乏人は突っ立ったまま、ウロウロするだけらしい。


悲しい、虚しい。


せめて、クルーズ船が見えないかと海を見たが、黒い波が寄せては返していた。


ちょっと怖い。


もう帰ることにした。


金持ちはビンゴ大会なんてしていて、貧乏人はゾンビのようにウロウロしてる。


社会の縮図かな? と思ってると、帰れない!!


どこから来たんだ! 自分は!!


レモンの木みたいなのがダンサーの形に切り揃えられてるのを見て、警備の目を掻い潜るために、自分も片足をあげてダンサーの真似をする。


普通にスルーされた!


ゲーム世界並みのざる警備だな!


しかし、この庭園みたいなところを抜け出さなければ、家に帰れないぞ……


落胆しながらとぼとぼ歩いてると、なんかいきなりマリパみたいなボタン連打ゲーが発生した。


ジュースを器に入れるミニゲームだ。


マジか! こすり連打しか出来んぞ! 自分は!?


そう思って画面を見ずに必死にこすり連打してると、いつの間にか相手の器にジュースを注いでいた。


当たり前だが、負ける。


悔しい!


もっかい! もっかい! と叫んでると、


カクテルみたいなジュースをもらえた。


あぁ、それぞれ相手のために作ってたから、自分は欲深くも相手の器に入れてたのか。


恥ずかしくなるが、喉は渇いてるので飲む。


なんか、煎じ薬みたいな味がした。


まずい。不味すぎる。


その不味さで、目が覚めた。












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