第18話 駆け引き
愛ちゃんは凍りついた。
やっぱりね。
「だってそうでしょ?愛ちゃんは苦しくても離婚できなかった。でも一人じゃ耐えられそうになかった。独身の僕になら抱きついても大丈夫だし、一線をこえなければ自分が旦那に対して不利になることも、ない。娘ちゃんに罪悪感を抱くこともない。だって法律に違反してないからね。違う?」
ドMで依存体質の愛ちゃんは、当たり前にあった存在が消えることを怖がる傾向にある。
いつだって僕は安全牌で、何があっても許して、包んでくれるおじさんなんだもんね。
突き放されたらすぐに追いかけてしまうのが愛ちゃんの性格なんだろう。
もう無理だよ、君には僕の腕が必要なんだから、いきなり割り切れる訳ないんだよ。
「籍を抜いたら自由に恋愛ができるよ。抱きしめるのは僕じゃなくたっていいんだ。」
僕の言葉にどんどん顔色が青くなっていくのがわかる。
なんて素直な子なんだろう。
「はい。今日はもう早退しなさい。そんな顔で仕事できないでしょう。娘ちゃんのおむかえまでに泣き止まないとね?」
僕はポッケにしまっていたタオルハンカチを愛ちゃんに握らせるとドアへ向かった。
100億%引き止められる自信に満ちた顔でドアノブに手をかけた。
ポンっと背中に軽い衝撃が走った。
渡したばかりのタオルハンカチが足元に落ちた。
ほらね。
予想通りすぎて、思わず口角があがってしまう。
「ん?」
振り向くとぐしゃぐしゃに泣いた愛ちゃんがいた。
あ、初めて僕のために泣いてくれた。
かわいそうなんだけど、嬉しい。可愛い。
「なんでっ…なんで籍抜いて俺のとこにこいって…いってくれないのぉ…!うぐっ」
予想だにしない返しに、面食らってしまった。
それは…
まさか、僕のことを恋愛対象として見てくれていたとでも言うのだろうか。
「おじさんだから…抱きしめて欲しかったのに…!」
泣き叫んでる彼女を前に不謹慎なのに笑ってしまった。
なんて可愛いんだろう。
いい大人が喜んでしまった。
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