第23話 



 「えっ?補給があったんですか?」


サラエボが今回の出撃でリーゼ三小隊12機の路上教しゅ――完熟訓練を行うという。

12機なんて機体数も不可解だけど、パイロットは?


「いや。あの敵基地、お前が転身した後、ボスニ・・・サラエボが単艦で突入、揚陸制圧してな。そこの戦力を敵のパイロットごと接収・・・吸収したらしい」


 「そ、そんな出鱈目な・・・まるで海賊じゃないですか』


「ああ。……まあ、あのライザがシメてた船だからな。抑えがなくなって今はプチ祭り状態なんだろ」


この日は移民船団の進路上を挟むように存在する、ゲリラの基地にはうってつけの小惑星群を調査するための出撃命令が出ている。


ロッカールームで着替えながら、チームを組むジュリアン中尉と雑談に興じていられるのは緊急性が低いからだ。



「ユニオン系のゲリラだったしなぁ、スポンサーの情報と引き換えに外惑星系の秘密基地として処理しておいた」


 「支援者の情報ですか・・・彼らにいい記憶ってないですね。って、ええ?ジュリアンさ・・・中尉殿がされたんですか?降伏から・・・共闘?の交渉・・・締結を?」


「ああ。どーせ閥内・・・イノセンの暇人が餌付けしてるだけだから、な。実際裏方は地方外惑星系小領主なんじゃそれ・・・だったし、俺が出るのが早いのさ」


さらりと長い直毛の金髪を振るジュリアン中尉の整い過ぎたカオを見つめてしまう。


・・・そういえばこの人、イノセン最大閥でダナーンズはこの人の家の私設軍隊だってハナシもある大貴族の当主だった。


「ええ・・・カオが良くて莫大な財と権力、どうしたらそんな魔人になれるんですか」


「はぁ?・・・ああ、そういやそうだな。フフ、俺って結構スゴイんじゃないか?じゃあな」


ヘッドギアを着装しロッカールームを出るジュリアン中尉を追いながら、呆然としてしまう。


「ダナン総帥・・・宇宙連邦軍を下部に置く私設軍隊を持つ、太陽系の半分を好きにできる人間がこんな宇宙の隅の小戦隊で”オレ結構凄いんじゃ?”ってカオを綻ばせながら威力偵察に出るって・・・ええ」


ひどく矮小なウソと実際的な政治パワーの腕力との齟齬に、現実感と一緒に三半規管が揺れて倒れかけてしまう。


「ちょっとライアン!そんなナヨナヨして・・・あんたジュリアンに色目使ってんじゃないでしょうね」


ゼッタさんだ。

は?今のやり取りのどこにそんな要素が?


「いえ、僕はノーマルだし・・・なによりゾラ一筋ですから」


そういうと、ゼッタさんは安心したように肩を落とした。

この人も歳の割にかわいいんだよな~言わないけど・・・


「ふう、まあゾラを繋いでくれて助かったし、いいか。あなたこの船に居つくならジュリアンの肩書に惑わされないでよ?彼って顔だけの間抜けな見栄っ張りなんだから。リーゼの運転・・・操縦もヘタだし、持ち上げて踊らそうとしたら殺すからね!」


突然目の前に黒く鋭い切っ先が突き付けられる。

嘘だろ?!抜いたのが見えなかった・・・


切っ先には小さな長方形の物体が刺さっていた。


「ほら、取ってよ」


「え?」


何をさせるのか、と恐る恐るその物体をつまみ、切っ先から抜く。


「せっかく士官になったんだから、もっと大事にしなよね」


踵を返し去ってゆく彼女の後姿を見つめながら、手に残った長方形に目を落とす。



僕の襟章だった。




・・・え、嫌だこの船。ゾラ連れてはやく逃げたい。







格納庫へ入り、自機へ走る。


「よう、直に出れるぜ」


「ありがとう、トウジさん」


タラップが無い・・?

アスナ東寺さんがコクピット下でしゃがみ、自らの肩を指す。


「えっ・・・絵ヅラ的に不味くありません?」


「?何がだ??」


「いえ、ありがとうございます」


肩に足をのせる。

すごい、全然ふら付きもしない。

踏みつけているのに、その剛性感と筋肉量に圧倒されてしまう。


そのまま世界が上昇し、コクピットの縁に手をかけ、乗り込む。

身の軽さに若さを感じると同時に、今の逡巡はシゲル由来かと納得する。

BLMやポリコレなぁ・・・


「前回の出撃じゃあ使ってなかったようだが、重粒子砲もバッチリ使えるぜ」


「ああ、でも突っ込みの速度を落としたくなくて・・・格闘になれば使いますけど、ゾラに斬られてからは警戒してますし」


「はぁー、戦隊長に落とされてんのか。因果なもんだな」


「僕にとっては幸福ですけどね。出ます」


「ああ、グッドラック!」


ブレーキを解除しカタパルトデッキへと出る。

マーカーまで進み、アンカーへ固定され射出。


一瞬の荷重の後、ロケットを一秒点火。

ジュリアン機に並ぶ。



『もう来たのか、早いな』


先行のジュリアン機から通信が開く。


「単純にその口径の重力スラスタより僕のロケットの方がパワフルなんですよ」


『その理屈全然わかんないのよねー、ロケット戦闘機なんてリーゼの重粒子砲弾でホントあっさり撃ち落とせるハズなのに』


ゼッタさんからも通信が開く。

この二人ってなんかイイんだよな~雰囲気が自然で。

僕とゾラみたいに甘ったるくベタ~ってなってない。


「うーん、僕的にはリーゼなんてスタビリティの低いフワフワした風船みたいな機体でよくマルチレンジの撃ち合いが出来るな・・・て不思議に感じます」


『あら、言うじゃない。次の模擬戦スケジュールでお手合わせ希おうかしら』


「あ、お手柔らかにお願いします」


ホントはリーゼなんてドン亀とか宇宙に浮かぶパイロンとか俺のストレス解消のために人類が開発した大人の(笑)玩具とか粒子砲弾なんてあんなビッガビガに光ってる弾丸に当たるヤツおるの?w頭悪いのもちったぁ遠慮しとけよwwwみたいなゲツ由来の罵倒センテンスがズラズラ~と出てきてしまうんだけど、そんなコト言った瞬間首から血を噴き出して倒れる自分と無表情のゼッタさんがムリなく想像出来てしまい、僕はこのライアンを大切に生きていきたいと強く願うのだった。


『砲撃、くるぞ』


散開!強大な横Gでシートへ押し付けられ肋骨が悲鳴を上げる。

続く偏差バースト射撃への予測回避運動を行い、スロットルを全開。

ロケットブースターを最大稼働させ重力機関の出力を上げる。


通り過ぎて行った火箭の元へ向かい、爆発的な加速で重力機関が開けた距離の穴へと飛び込んでゆく。

脳天を突き抜ける加速の快感に叫び出したい気分を噛みしめて怺え―――――


『ぐわ、やられた!退がるぞ』


偏差射撃を躱しきれなかったのか、ジュリアンの機体オブ・スレイヤーが装甲の破片を爆炎と共に散らしながら後退してゆく。


『ジュリアン機のフォローに入る、ライアンは―――――ちょっと!何処行くのよっ!』


えっ、ジュリアンさん早いよ、だってもう・・・


「ハァアアアア―――――っ!おママゴトはフタリでやってなウスノロシスターズがッ!ブッ込み一番はオレがもらったァアアアああああwwAHHHHHHHHHHHH!!!!wwwwWWWWW!W!W!WWw1W!W!W!」



すべてを過去へと置き去りにする爆発的な加速に酔い叫びながら、今回はできるだけ長く戦闘を・・・帰りたくない・・・ゼッタ姐さん勘弁してください・・・と意識の片隅の冷えたエリアで膝を抱え震える自分を俯瞰しつつ、床が抜けるほど強くスロットルを踏み込んでいた。



既に目前、視界内の止まった時間の中に浮かぶ敵の攻撃衛星、リーゼ、砲台たち・・・



自分以外の人間たちを殺したくって仕方ないクソッ垂れたイジケゲリラ共め・・・なんの恨みもないけど、ごめんよ。


今回はノロノロと何処迄もタラタラした格闘戦に付き合ってもらう。



・・・俺が一秒でも長く生き残るために。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


「俺って結構スゴイんじゃない?」


他作家様の作品で主人公が使ってた痺れるセリフをマジパクしてしましました!

言わせるまでが長かった・・・(前々作から30万字目くらいですかねたぶん

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