第14話 アナルハイマー
「使者だと?」
ガンカメラ及び戦闘ログのチェックから部下の様々な考査とニナイお姉さまへの反省文・・・書いても書いても絶対に許されないけど無駄に諂ってないと更に嫌がらせが増えてゆくのでわざとらしくない程度に必死感を演出しながら・・・ああ、太宰様もひょっとしたら・・・を書き続けるあたしに、ブリッジの艦長から艦内通信が入った。
『はい、署名はヴェーダ総帥のブルーレットですが、使者は若く・・・女性ですね。ユーミと名乗っています』
「ユーミ・・・はぁ?!生きてんのかよあいつ!」
『お知り合いで?』
「ばっかお前、最凶最悪の敵だろ殺せ!すぐ殺せ!!搭乗リーゼは?なんでもいい、それも破壊しろ!いやまて、女だって?違う!騙されるな殺せ!」
『・・・ジュリアン中尉が替われ、と・・・替わります……おい、ゾラ。このユーミは女だ、家で取り込んでる・・・筈だから、まぁ無害だ安心しろ、安心して戦隊の責任者として上がって来い』
切れた。
強烈な違和感にアタマがぼんやりと、現実を失ったように思考が曖昧になる。
ジュリアン?おまえの敵では??…奴をして不倶戴天の敵と言わしめたあのユーミが……無害?毎話発狂しながら「ただ殺すだけじゃ飽き足りねえ」と殺意に加えて嗜虐相全開で叫びながら襲いかかってた獲物が…安心??
安心てコトバ、安政の獄門にて心臓をえぐり出すぞの刑なんて宇宙世紀の暗喩があったりすんじゃない?
フラフラと前後不覚のままブリッジへと上がってみれば、ソコには登場したあたしに唖然と口を開けたジュリアン始め男達と、非難げにげに眉間にシワを寄せたアメリアをはじめ…ゼッタ他女性クルー全員の厳つい視線があたしに注がれる中、こちらを向くと同時に頬を赤らめ顔を覆った非常に不快な女子アピールを仕掛けてきたプラチナブロンドのまぁまぁ…絶世の、とつけてしまってもいいんじゃない?と折れてみても仕方ないかしらねえといった塩梅(語彙…)の美少女が……
「おいゾラ……中隊長殿、服を着てこいよ……」
「は?服どころの騒ぎじゃないでしょ?!てゆーかジュリアンあんたなんでそんな冷静なのよ!」
アメリアが割り込み、とつぜんあたしの胸を揉んだ。
「にゃんっ!・・・キサマ上官の胸を揉むかァ―――っ!胸を出せ・・・い?」
思わず庇った乳房の感じがブラ肌過ぎてイヤ~な予感に自分の首下へと視線を落とす・・・と、生ブラとジャージ、そしてビーサンだった。
「……重力理論によりブラフリーが常識となった宇宙世紀に於いては、ブラはアウター…二次装甲に過ぎない。そうであるな、アメリア少尉」
当戦隊においては随一のコスメ・ファッション戦闘力を誇る部下に、一縷の望みをかけ、暗に肯定を要求しながらの問いをかけた。
「そんなワケ無いでしょ、マル晒しは恥女よ ち・ぢ・ょ!」
僅かの逡巡もなく一刀両断されてしまった。
「……旗艦ミアーハへようこそ。私は恥女、この戦隊の最高責任者である恥女のゾラ・ソラビエラである。制服?恥女として制服といえばこういった装いがマストなのだよユーミくん……いやいや、使者に抜擢されるような歴戦の者にくんづけなど礼を失しておったな!許してくれたまえよ若輩に免じてな、若いといえば君も相当……」
「なんだこの言い訳と自分の失態を当て擦りながら若者にマウントとろうと内容のない話をとり止めなく続けて行くおっさんみたいな生物は」
『おっさんなんだろ』
「ジュリアン、ザザン!上官への誹謗は懲罰ものだぞ!つーかフォローしろよ、自分のジャケ肩に掛けるとかさあ!」
「自分の女でもないのにやるわけねーだろ…つか俺の歳じゃもうセクハラもんだぜ」
ジュリアンがフッ、と薄い唇を笑ませうつむく。
閉じた長いまつげと、美しく整った顔を長い金の髪がスルスルと、まるで光輝くカーテンのようにその悪魔的な美貌を覆っていった。
「……ウゲッ!」
脇腹への一撃に乙女力(器質的には乙女じゃないが)皆無の悲鳴を上げてしまうがめたくそ痛て―し女子力を担うサブルーチンは当然の如くスルーされてしまうだろう。
「ジュリアン中尉への生臭い視線はおやめください上官殿!」
くっ、ゼッタめ・・・
脇腹を痛みを押さえながらフランセッタ少尉と睨み合っていると、諸悪の根源のデビル・・・ユーミが口を開いた。
「ジョン・・・パイリーを返してください!」
「は?」
間抜けに問い返してしまった・・・
「捕虜の交換要求だと。誰が捕まったんだ?」
ジュリアンの説明に、直前の戦闘、反省文の前に処理した損害レポートを脳内で反芻(もっと適当な語彙はないのか!)する。
「戦死者も不明者も皆無だろう、報告は受けて無いぞ・・・まりんぬ」
この私の船、ミディール級デストロイア―艦名ミアーハの新艦長である若き俊英、まりんぬ少佐。階級は私の遥か上である。ブリギットのガッキーもだが・・・
「はい、私の所にも上がっておりません」
ユーミが思わず、と言った挙動で足を出し左右の憲兵に両腕を拘束される。
「僕を代わりの捕虜とすればいいでしょう!お願いします!」
―――――言葉を失ってしまった。
「・・・いや、あまりにも身勝手、まるで子供のように自分の都合しかない要求をありがとう。謹んでお断りするよ・・・そのまま拘束しろ。ブチ込んでおけ」
もう会話したくない・・・・・
「なっ、僕は使者だ!拘束に拘禁なんて・・・条約を無視するんですか?!」
背後に遠のいてゆくユーミの・・・女性の声だよなあ・・・叫び声を無視しつつ、それでもヤツに聞こえる程度の声でモニターのザザンに問いかける。
「ねえザザン、捕虜の味どーだった?イエローの女は男の評判がいいって聞くけど」
『あ?・・・へへ、下も泣き声も最高だったぜ隊長さんよぉ』
ゲスいセリフ語らせたらめたくそハマるなこやつ・・・
「なっ?!なんてコトをするんだ!恥ずかしくないんですか!?戦争にもルールってものがあ・・・」
恥ずかしい・・・のあたりでクルーの視線がわたしの首から下へと集中する。
・・・そしてミーユ少年の声はドアの向こうへと断絶された。
なんてコトぉ?それってどんなコト?・・・まで煽りたかった・・・残念。
「ザザンぐっじょぶwww」
はしたなくも親指を立ててモニター内のザザンに笑んでしまう。
『前の戦闘じゃ煽られっパだったからなあ、スッキリしたぜ・・・ああ、生かしといた方がいんだよな?』
「うーん・・・あたしがもし男に戻れたら使いたいし、そうして。顔と下のどっちかの穴だけ奇麗ならいいから」
『趣味が合って嬉しいぜ隊長さんよぉ』
モニターのザザンがこれ以上ないってくらいの下衆ガオで笑っている・・・こわい・・・
「あんた達ってサイテーね、女を踏みにじるのがそんなに楽しいの?」
怒りを滲ませたゼッタの顔が眩すぎて、思わず目を細めてしまう。
「炭素生物などみんなこんなもんだよ、ゼッタ。君も今日朝食を食べたであろ?・・・ジュリアン、わかるぞ」
汚したくなる白さを持つ女、ゼッタ・・・男ならば垂涎を怺えられまいよ。
「いや、ゾラ隊長。ユーミはこっちの
ん?ヘタレのクセに何を強気に・・・・・あ!こいつマフィア・・・じゃない、貴族のぼんぼん・・・当主だったわ!
「えっ・・・そっ、その・・・そのお支払いしなきゃならない敬意って・・・も、もう既に命とかだったりします?」
おもわずの恐怖に腰を砕けさせながら縋る様にジュリアンへとヘコヘコ迫ってしまう・・・
「は?いや何を勘違・・・」
「そーよ!命よ!!もちろん殺さない、死を絶叫しながら希う程に凄惨かつ凌遅な刑をあんたの肉体に加えるわ!良いザマよ!這いつくばりなさい!!さあ!!!!!」
「うああああああああ!!!!!!!何卒、何卒ご勘弁おぉおおおお!!ゼッタさまぁあああああ!!!!!」
「そうだ、泣き叫べ!命乞いをしろ!小僧から石を取り戻せ!!!」
『・・・なんだ詰まんねェな。権威にゃ諂うのかよ』
泣きながらゲザった後頭部をゼッタのブーツのカカトがグリグリする痛みを感じながら、耳がモニターのザザンの声を拾う。
・・・勿論権威だけじゃなく恐怖にも、貴方様にも諂いますとも!
額に感じるブリッジの床の温かさが、今はただ無性に切なかった・・・
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新登場してないリーゼ、ハイン・ツァイ。
前大戦から続くユニオン陣営の主力モビ・・・リーゼ、ハインの現行機。ザイオンのゾカとは印象が異なり、曲面ではなく平面にて装甲が成形されている。このスタイルは前ザイオン公国のおもちゃ産業による実体玩具ラインナップにおける差別化を継承する形、様式美として長く続いていくのであった。
ちなみにではあるが、ゾカの曲面装甲に心を奪われていた数少なくないユニオンのパイロットはハインを嫌い、配機を蹴る者が続出したが、全てが悉く後産された特攻兵器の「クーゲル」へと押し込められ、ハッチを溶接されたまま最終決戦アオバQへと投げ捨てられていったのであった。合掌・・・・・・・
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