第15話 回収物調査2

 同じ人物に複数の呼び名が使用されております。【豹ヶ崎】=【濱家】、【一】=【佐宮】

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 【豹ヶ崎】は一応、【手帳】に他には何か無いかを探してみると、装丁の内側にあるポケットの様な場所に、差し込む様に入れられた四つ折りの紙を発見した。


 取り出して開くと、

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 【異食会】【呑鯨】

 080-1810-2910

 isyokudongei@au.com


 【グハーン魔導店】

 042-100-1046

 magictrader@gmail.com

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 と云う、電話番号とメールアドレスが書かれていた。


 【異食会】は先程見た手紙に書かれていた名前だったが、【グハーン魔導店】はまだ見ていない名前だ。


 「【魔導】……ですか」


 【豹ヶ崎】は、【あの部屋の床に描かれていた魔法陣】を思い浮かべながら呟く。【あの魔法陣】に関係しているのだろうか?


 【豹ヶ崎】は【連絡先が書かれたメモ】を【手帳】に戻すと、残る【ノートパソコン】と【ファイル】に眼を向ける。


 少し考え、確認したい物があった為、【ノートパソコン】を起動させた。


 【恵居】以外が使用する者がいない前提だからなのか、パスワードは掛けてられていなかった。


 デスクトップには余りアイコンは無く、初期状態の様にも見える。


 一瞬、本当に初期化されているのか?と思ったが、目的の場所――メールボックスをクリックしてみると、数件の既読済みのメールがあった。


 内容は《魔術》と呼ばれる超常の力を行使する為の方法の一部を、【恵居】が何らかの対価を支払った事で、【魔導店】から添付されて提供された物らしい。


 らしい、と云うのは、ファイルにパスワードが掛けられており、それを入力しなければ閲覧出来ないからだ。


 メールの文面は形式的な取引の様な形で、いずれも既に報酬を支払われた後である事を示す言葉と、『次のご利用をお待ちしております』と云う定型文で締められた後に、商品として添付された《魔術》の情報が記されたデータファイルが載せられている様だ。


 然し、最新のメールは違っていた。


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 取引終了のお知らせ

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 from:magictrader@gmail.com

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 to:自分

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 突然のご連絡、申し訳ありません。


 この度【グハーン魔導店】は、【恵居】様に当店との取引する上での対価の支払い能力がこれ以上無い物と見做し、この取引を以て終了とさせて戴きます。


 【恵居】様が再び、当店との取引が行える日をお待ちしております。


 追伸:今回の商品の《魂の離脱》とは別に、取引終了に伴う付属品として《精神吸収》をお付け致します。お役立てして戴ければ幸いです。

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 【魔導店】からの三行半とも云える決別を告げる通知には、二つの添付ファイルがあり、どちらも《魔術》のデータらしい。


 一通り見た限り、【魔導店】が【恵居】に提供した《魔術》は、《肉体の複製》、《カーの分配》、《人間の隷属》《絵画門の作成》、《精神吸収》、《魂の離脱》の六つであり、最初に得たのは《人間の隷属》だったらしい事が分かった。


 全てのメールが【魔導店】から《魔術》のデータを転送する為の物なので、対価や【恵居】側からの注文等は分からないが、今迄に確認された全ての《魔術》が今回の件に関わっているのだろうか?


 《精神吸収》と見て思い浮かぶのは、やはり【あの部屋の床に描かれていた魔法陣】だろう。


 実際に、【豹ヶ崎】が部屋に踏み入れた瞬間に魔法陣が起動して【魔力】や【正気】を奪っていった上に、【一】も魔法陣によって引き起こされている事を言及していた。


 ……吸収された【精神】は何処へ行ったのだろうか?《魔術》と云う本来ならば、知る事すら難しいだろう超常の力の入手先は分かったが、それをどの様に使っているのかはまだ分からないままだ。


 他に何か無いかと【パソコン】を探ってみたが、【手帳】に書かれていた様な事を調べた形跡があるだけで、特にめぼしい情報は出て来ない。


 更に、ここでも【虛洞 隱理】に関する情報が見付からない、又は破損しており、これ以上の情報は得られなさそうだ。


 最後に、【豹ヶ崎】は【ファイル】を開く。


 書かれている内容は、どうやら血液を用いた絵具やインクの調合法や、骨を石膏の様な材質にする為の材料の配合についての記録、そして《魔術》に関する考察と利用法について【恵居】が記録した物の様だ。

 

それによると、【魔導店】は【恵居】に《魔術》の詳細な情報は伝えておらず、自ら使用する事で《絵画門の作成》には不都合な欠陥らしき物は無く、《肉体の複製》や《カーの分配》、《人間の隷属》には所々に不具合や副作用の様な部分があった事を把握した様だ。


 書かれている内容によると、《絵画門の作成》は非常時の脱出口や表に出せない様な物の移動に用いていた様だ。


 《肉体の複製》と《カーの分配》は組み合わせる事で、自身のクローンの様な物を作ろうとしていたが、動かない【肉人形】が量産されただけだったらしい。


 ……尤も、後に自身を助ける事になったようだが。


 《人間の隷属》に関しては、【恵居】自身も使用している内に、不具合がある事を把握していた様だが、失敗の代償までは把握していなかったらしい。


 四度の死を経て、不具合によって跳ね返された呪縛に綻びが出た事で、幾ばくかの自由を得たらしい。


 【恵居】にとって幸運だったのは、【肉人形】と呼んでいた失敗作だったそれが、残基として死を引き延ばした事だろう。


 因みに、【恵居】は記憶と時間が飛んだ様な感覚で、玄関に転がる最初の屍体を除く屍体を見て、そう判断したらしい。


 何故、そんな風になったのかは【恵居】自身にも分かっていなかったが、兎も角、それにより次の死までの猶予を獲得した【恵居】は、どうにか死の連鎖から抜け出す方法を探す事にした。


 そこで、【魔導店】から手切れの品として提供されたのが、《精神吸収》と《魂の離脱》の《魔術》だった訳だ。


 気になる事は、【恵居】が【魔導店】に相談等をする前に、メールでそれが送られていた事だ。【恵居】自身も、盗聴や盗撮の類で監視されていたのか?と訝しんでいる記述がある。


 尤も、内容は【恵居】にも都合の良い事だったので、それを使う事にした様だ。


 試行錯誤の記録が続き、《精神吸収》の術式に、当時の肉体と偶然手に入れていた短剣を組み込んだ上で、《魂の離脱》の術式と混合させる事で【あの部屋】にある【魔法陣】のシステムを作り上げた様だ。


 その記録によると、【魔法陣】の効果は踏み込んだ生物から【精神】を奪い、それによって発生した力を霊体化した自身と、身代わりにした自殺体の維持をメインに供給させていたらしい。


 【恵居】は何度か部屋から出ようとして上手くいかなかった様で、地縛霊化した理由をこの力の供給が可能な距離による物と考えている様だ。


 【恵居】に関して他に気になる事は、やはり【虛洞 隱理】に関わる記憶や認識の欠落だろう。


 どうも、【手帳】にあった様な執着等がこちらでは抜け落ちている様な印象を受ける。更に云えば、最初の死因や屍体が認識出来ていないのも、当時の死によるショックと云ってしまえばそれまでだが、可能性としてあるのでは無いかと思ってしまう部分もある。


 少なくともこの記録を見る限り、あの【魔法陣】を破壊する事による、こちらを迎撃する仕組みや反動の類は無い様に見える。……態々、書いていないだけかも知れないが。


 兎に角、これで【あの部屋】から回収した物は全て確認出来た。次は……、

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