第2話「忍び寄る気配」

リビングに降りると、すでに母が朝食を準備していた。

テーブルの上には焼き魚、味噌汁、卵焼きという、昔ながらの和食の朝ごはん。

私は大きなあくびをしながら、椅子に座る。


「ほら、早く食べなさい。もうすぐ学校でしょ?」

「はいはい……」


ぼんやりとした頭で箸を動かしながら、私はふとさっきの夢を思い出す。


──あれは、一体なんだったんだろう。


夢にしては リアルすぎた。

燃え盛る世界の光景も、逃げ惑う人々の叫び声も、そして私を見下ろしていた巨大な影も。


「……気味悪いな」


思わず呟くと、母が眉をひそめた。


「なに? 変な夢でも見たの?」

「うーん……まぁ、そんな感じ」

「だったら、ご飯しっかり食べて、さっさと忘れなさい。悪い夢は、朝ごはんで吹き飛ばすのよ!」


母の明るい声に、私は苦笑した。


──そうだよね、ただの夢。気にすることじゃない。


私は味噌汁を一口すすり、大きく息をついた。



学校へ向かう途中、いつものコンビニに寄る。

家から少し離れた交差点の角にある、昔からよく通っている店だ。


「おはようございまーす」


店に入ると、レジの奥から店員のおばちゃんが「おはよう」と返してくれた。

私は慣れた手つきでパンの棚へ向かい、朝のエネルギー補給用にチョコパンを手に取る。

それからジュースコーナーへ向かい、いつものオレンジジュースをカゴに入れた。


──ふと、背後に 違和感 を覚える。


誰かが、じっと私を見ている気がした。

振り返る。


店のガラス越しに、見知らぬ男が立っていた。


年齢は30代くらいだろうか。

くたびれたスーツに乱れた髪、そして、どこか焦点の合っていない目。


彼は、じっとこちらを見つめている。


「……」


なんだろう、この感じ。


普通の不審者というより、もっと異質なものを感じる。

私が視線を向けたことに気づくと、男はふっと笑った。

そして、小さく口を動かす。


「……もうすぐ、終わるよ」


え?


私は思わず目を見開いた。

でも、次の瞬間、男は 消えていた。


「……え?」


慌てて外へ出る。

しかし、どこを見回しても、男の姿はなかった。


夢? いや、でも今、確かにあの男はそこにいたはずだ。

それに……最後に言った言葉。


「もうすぐ、終わるよ」


いったい何が?


なんとなく、寒気がする。

私はジュースを握りしめながら、急いでコンビニを後にした。



その後、学校では何も変わらない普通の日常が続いた。

授業を受けて、友達とバカ話をして、笑って、いつも通りの放課後。


だけど、どこか頭の片隅に、あの不気味な男の言葉がこびりついて離れなかった。


「もうすぐ、終わるよ」


まるで、それが 予言あるかのように。



『第2話 完』

次回、第3話『転生は突然に!?』へ続く!

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