第3話「転生は突然に!?」

その日は、いつもと何も変わらない一日だった。


朝起きて、朝食を食べ、学校へ行き、授業を受け、友達とバカ話をして、笑って、帰宅する。

そして、いつものように風呂に入り、布団へ潜り込んだ。


いつもの日常。

それが、当たり前のように続くと思っていた。


でも、次に目を開けた時──


私は、もう“私”ではなかった。



重い。


身体が鉛のように重く、全身が包まれているような違和感があった。

目を開けようとしても、なぜかまぶたが動かない。

いや、それ以前に、息ができない。


「っ……!?」


意識が覚醒すると同時に、強烈な閉塞感が襲ってきた。

動こうとするが、身体が自由にならない。

まるで、何かに包まれているような感覚。


……いや、違う。


これは──胎内?


だとしたら、私は今……生まれようとしている?


そんなはずはない。

昨日まで普通に生活していたはずなのに、なんでいきなりこんな状況になってるんだ?


でも、考えている余裕はなかった。

全身を圧迫する感覚がどんどん強くなり、やがて……


光が差し込んだ。



冷たい空気が、肌を撫でる。


視界がぼやけ、ゆっくりと焦点が合っていく。

目の前に広がっていたのは、木々が生い茂る 森 だった。

風が吹き抜け、葉がざわめく音がする。


そして、何より目の前にいたのは──


耳の長い、美しい女性。


透き通るような白い肌、長く流れる金色の髪。

その顔には、慈愛に満ちた笑みが浮かんでいた。


「……生まれてきてくれて、ありがとう」


そう言いながら、彼女は優しく私を抱きしめた。


──私は、この瞬間に理解した。


自分が転生したのだ、と。



自分の手を見てみる。


小さくて、柔らかい。

肌の色も、日本人のものとは少し違う。

──そして、何より、耳が長い。


目の前にいる女性と同じ、エルフの特徴 を持っていた。


「……エルフに、転生した?」


信じられなかった。

でも、この状況を考えれば、それ以外に説明がつかない。

私は、昨日まで 杜野恵梨七(もりの えりな) として生きていた。

それが、今はエルフの赤ん坊になっている。


夢じゃない。

これは 現実 なんだ。


新しい人生が、ここから始まる。



『第3話 完』

次回、第4話『エルフとしての新たな日々』へ続く!

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