夢だと思ったら転生してました!

プロトカン

第1話「悪夢と目覚め」

世界が、燃えていた。


空を覆う黒煙。

崩れ落ちる建物。

大地を引き裂く灼熱の炎。

耳をつんざくような悲鳴と絶叫が、あらゆる方向から響いている。


人々は、逃げ惑っていた。

だが、その行為に意味はなかった。

それはただの時間稼ぎにすぎなかった。

この場にいる誰もが、本能的に理解していた。


──ここに「逃げ道」など存在しない。


その巨大な影は、悠然と世界を踏み潰していく。

一歩ごとに地が裂け、建物が崩れ、人々の命が粉砕される。

立ち向かおうとする者は、炎の嵐に飲み込まれ、跡形もなく消え去った。


私は、逃げていた。

足がもつれ、転びそうになりながらも、必死に走る。

後ろで誰かが倒れたのがわかる。

けれど、振り返ることはできない。


──そんなことをすれば、自分も死ぬ。


ただただ、本能に突き動かされるように、

前へ、前へ。


そして、次の瞬間。

影が、こちらを捉えた。


視線が合った瞬間、背筋が凍りつく。

全身が硬直し、まるで意識すらも支配されてしまったかのような錯覚に陥る。


──ダメだ。

──殺される。


咄嗟に、逃げなければと足を動かそうとする。

けれど、もう遅かった。


空間が歪む。

轟音が響く。

視界が、赤く染まる──


そして、世界が終わった。



「――っ!」


跳ね起きた。

全身が汗に濡れている。

息が荒く、心臓がまだドクドクと脈打っているのがわかる。


──夢……?


それにしては、妙にリアルすぎる光景だった。

あの絶望感、人々の恐怖に歪んだ顔、

そして──

自分を見下ろす、あの 巨大な影の瞳。


「……何なんだろ? あれ……」


荒い息を整えながら、もう一度目を閉じようとした、そのとき。


「恵梨七!いつまで寝てるの!!」


扉の向こうから、ノックと共に母の声が聞こえた。

もう一度眠ることはできず、私は渋々、布団から這い出した。


それでも、頭の中にこびりついている。

赤い空と崩れ落ちる世界。

まるで自分が体験した現実であるかのように。


妙に記憶に残る夢だった。


私は小さくため息をつきながら、学校へ行く準備をするため、一階へ降りていった。



『第1話 完』

次回、第2話『忍び寄る気配』へ続く!

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