第7話 トラップ
うーん…これは酷い。
目の前で広がるあんまりな光景に俺は苦笑する。
今までで最大規模なC級の八人パーティの冒険者の集団が来た時はどうしようかと思ったが…。
どうやら、そんな不安は杞憂だったらしい。
「た、助けてくれェー!?」
「な、なんでハイ・ゴブリンがこんなにいるんだよ! おかしいだろ!? C級ダンジョンって聞いてたのに!」
「マーカス! ダメだ下がれ!」
「え___」
「な、トラップだと!? クソ、クソォォオオオ!!!」
落とし穴により首から下までが埋まって、残った頭をハイ・ゴブリンが棍棒で吹き飛ばす。
一人の冒険者を二体のハイ・ゴブリンが挟んで潰す。
棍棒の一振りで三人の冒険者が吹き飛ばされる。
「い、いや! 来ないで!」
「助けて! 助けてよ! ガレルー!」
「もう、ダメ___あ」
魔法を一発放っただけの魔法使い達は次の詠唱の暇もなく、前衛という盾を失いハイ・ゴブリンに蹂躙される。
逃げ回る先で、天井から落ちる大きな石に潰された女の魔法使いで、今回の戦いは終わった。
『冒険者を倒しました。合計720DPを獲得しました』
体積が大きくなったスライムを抱えて見ていた俺は、隣で護衛のように立つ四つ腕のスパルトイを見る。
進化したスパルトイは、四本の腕に二振りの石剣を持つ魔物となった。
手数が増えたのは勿論、膂力も格段に上がったスパルトイは単独でC級冒険者パーティを蹂躙すぐことができるようになった。
その上追加召喚はハイ・ゴブリンと変わらない50DP。今は部屋が一つしかない為魔物の追加召喚はしないが、今手に入れたDPで部屋と階層を増設しようと思う。
少なくともハイ・ゴブリン用のフロアを作りたい。スパルトイは今のところ俺の護衛だし、スライムは俺の抱き枕だ。戦いなんぞに出さん。
「アポート。『階層増設』エンター」
ワードを唱えた瞬間に引き起こされる微振動。
冒険者が現れる魔法陣とは逆側の位置に、螺旋階段が現れた。
「ハイ・ゴブリン。お前達はこの部屋で冒険者を蹂躙しろ」
『ギ!!!』
一糸乱れない動きでハイ・ゴブリン全員は跪いて返事をする。
それを見届けた俺はスパルトイとスライムと共に、下の階へと移動した。
「…上となんら変わらないか」
強いて言えば壁の色が少し変わったくらいか。
スライムが俺の腕から離れ、この階層を右往左往する。その姿はまるで新居に来た猫のようで、より一層加護欲を唆られる。
俺の斜め後ろで控えるスパルトイも、新たに出来た部屋に興味津々…な模様だったが、一目見て上とそんなに変わらないと感じるとまた顔を真正面に固定させた。
コイツ、いつからか俺の護衛的な立ち位置が気に入ったようで、ハイ・ゴブリンの取りこぼしが俺に近づいてきた時や、隠密系の前衛が俺を暗殺しようと接近してくる時にしか動かない。しかし動く機会がないとはいえ普通に負けることなく俺の手を煩わせてないから有能なんだがな。
たまにだが身体が鈍らないように模擬戦の相手をしてもらっている。俺もスパルトイも無手だ。スパルトイの四つ腕の乱打を捌くのは中々に骨が折れるから良い鍛錬になる。
ゆくゆくは同時に三体のスパルトイの乱打を捌き切ってみたい。目標はより高くした方が燃えるだろう。
「…そろそろ新しい魔物も追加するか」
優先度が低くあまり気にしていなかったが、D級とC級の冒険者を倒した時に、二体の魔物と一種のトラップが追加されている。
『ワーム』と『バット』、トラップは『針山』。恐らくミミズとコウモリか? 針山…設置タイプか地面から突き出すタイプかで有用さが変わるな。
魔物はどちらも100DP。トラップは150DP。些か高すぎやしないかと思うが、その分能力が高い事を祈ろう。
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