第3話 芋娘、貴族の剣をペシャメリゼ。
弁償………。
それはお貴族様の『グエッヘッヘ、払えねぇならその身体で払って貰おうか、平民』『クッ、身体は好きに出来ても私の心までは………』を回避する、有効かつ唯一の平和的な手段です………。
「ガハハ、気にする事は無いぞネーネシア嬢。我が剣はオリハル製とはいえ、先祖代々受け継がれていた物。
偶々今日限界が来ていた所で、偶々古龍の子に砕かれただけの話。貴女が気にする事は何も無い」
「い、いえ、咄嗟の事で
「いやいや、ネーネシア嬢」
「いえいえ、騎士様」
「いやいや」
「いえいえ」
「いやいや」
「いえいえ」
「バルドス卿、レディの好意をそうも固辞するのは如何かと私は思うぞ。ここまで言われるのだ、受け取るが良かろう」
「はぁ、姫様がそうおっしゃるのであれば………」
女性騎士様の助けもあって、まんまと話題の変更に成功した私達は、ゴリ騎士様のバキバキに砕けた大剣を回収し、村の鉱石置き場兼、鍛冶小屋へと移動します。
「ええと、き、騎士様。剣は元と同じ大剣でよろしいでしょうか?」
「ん? あ、あぁ構わぬが、此処には大剣は無い様子では? 帰りの道中程度、彼処の戦斧でも構わぬよ」
騎士様はそう仰って壁に掛かる作り置きの両手剣や大斧を指されますが、あの程度の物では師匠の教えに足りません!
「いえ、ア、アレは試しに作ったただのアダマンタ
「「アダマンタイト!?」」
ですので、この折れた剣を素材と新たに打ち直そうと思っているのですが、よ、よろしいでしょうか?」
「………あ、あぁ、それはまったく構わないのだがな、」
ゴリ騎士様は壁の剣達をとても驚いた様子で真剣にご覧になっているようですが、此処は譲れません。
「ネーネシア嬢。詳しい話は後程するが、私達は明日には村を出る予定なのだ。なので新たに剣を打つ時間は無いし、増してオリハルコンは硬く溶けにくく、ドワーフ族でも鍛造には数ヶ月を掛けると聞く。やはり此処は彼方の武具のどれかで………」
「あ、大丈夫です。恥ずかしながら、私は魔法でのなんちゃって鍛造しか出来ませんので時間はそんなに掛かりません。
あ、で、でも安心なさってくださいね? なんちゃって鍛造とは言っても、今まで折れた事は一度も無いので強度はしっかり保証出来ます」
「は? はぁ、魔法で………。すぐ済むのなら、良いのでは無いか、な、なぁ? バルドス卿?」
「へ!? あぁ、そうですな、是非とも
お二方のご様子はなんだか少し気になりますが、そろそろ夕方も近いので此処はちゃちゃっと一本行っとく事にします!
「で、では先ず、砕けたオリハルコンの欠片を宙に浮かし、
「なっ!!? ドラゴンのブレスすら断ち斬るオリハルコンが一瞬で溶けっ」
あ、オリハルコンだけだと、またポッキリ逝くかも知れませんので、アダマンタ
「ちょ、ちょっと待ってくれ、ネーネシア嬢。オリハルコンを使った合金など聞いた事が無いのだが………?」
「あ、あぁ、そうですね。わ、私の
ですが、本来の鍛造法では各々が反発してしまって混ざる事は無いそうで、魔力で無理矢るなんちゃって魔法鍛造だけの裏技? なんだそうです」
「そ、そうなのか………」
「よし、混ざったら小さく纏めて、
それからお二方は私のなんちゃって魔法鍛造に驚いたり、胡乱な目や遠い目になったりしていましたが、それ以上は特に質問はされませんでした。
「さ、最後に魔石を嵌めて………、出来ました♪
えっと、騎士様。お、お手に取ってみて貰っても良いでしょうか?」
「あ、あぁ………。おぉ、コ、コレは!!!
刃筋の鋭さ、刀身の美しさもさる事ながら、軽い! ただの両手剣並に軽いですぞ、姫様♪」
「何!? バルドス卿、私にも持たせてくれ。
………なんと!? ネーネシア嬢、コレはどういう?」
「ええと、な、なんちゃって魔法鍛造剣ですので、剣自体には特殊な魔法能力はまったく無くてですね………。い、一応この魔石の方に硬化魔法のカチンコチンを付与していて、次いでに反対側の魔石には重量軽減魔法のウカスッドも付けてみました。
あ、後、柄の空魔石に属性魔力を流して頂くと貯めた魔力が切れるまで、刃筋にその属性を纏わせる事も出来ます」
「おぉ!!! 確かに、刃筋に風の魔力が!」
「ひ、姫様、私の剣ですぞ! 返してくだされ!」
「あっ………」
「いやぁ、コレは天命か。
近年は剣の重さに肩腰が辛く、見事に砕け散った先程は家督を孫に譲ろうかとも考えておりましたが、まさかコレ程の名剣に生まれ変わるとは。これはまだまだ精進せよとの天啓でありますかな、ガハハハハハ♪」
良かった♪
ゴリ騎士様は上機嫌で新しい剣をブンブンされていて、結構気に入って貰えた様です。
「………ルい」
「はい?」
「バルドス卿だけズルいぞ、ネーネシア嬢。私も卿の様なスゴい剣が欲しい!」
「ガハハ、姫様。そのお歳での我儘はみっともないですぞ? ガハハハハハ♪」
「ムゥゥゥゥゥ!」
ゲゲ………。
せっかくゴリ騎士様の機嫌が戻ったのに、今度は女性騎士様のご機嫌が急降下しています。ウゥ………、師匠。師匠がいつも言ってた通り、お貴族様って本当に面倒ですね……。
「え、ええと、騎士様にも似たような物をお造りしましょう、か?」
「本当か!?♪」
パァッと晴れたあの笑顔を見るに、もう一本は確定ですね。と思った所でしたが、
「姫様、流石にそれは図々しいですぞ?」
「何? 何故止めるのだバルドス卿」
ゴリ騎士様から却下が入ります。正味15分程度なので私的には特に何とも無いのですが………、
「良いですかな姫様、ネーネシア嬢は古龍に折られた我が剣の弁償としてこの剣を造ってくださったが、私は後日金貨50000枚を持参して参る所存でございます」
「な、金貨50000だと!? 我が国の年予算の二割もの価値がその剣にあるのか!!?」
「はい。以前ドワーフ族に我が剣を見せた所、金貨30000枚の価値があると聞きました。が、こうまで改良されれば最早その値は天井知らず。
故に我が家の全財産をギリギリまで絞り、最も融通の効く金貨にてお返しすると決めました。
姫様、ネーネシア嬢はあぁも容易く造ったように見えましたが、この剣にはそれ程の、いえ、国宝以上。神剣すら超えるやも知れぬ価値があるのです!」
何だかお貴族様的にダメっぽいです。
きんか? とか、こくほう? とか何のことを仰っているんでしょうね? お貴族のお話は聞いていた以上にワケワカな単語が多くて、正直疲れます………。
「幸いこの老骨には生涯の蓄えがありましたが、姫様にそれだけの対価を用意出来るのですか?」
「………確かに私には無理だ。
だがバルドス卿、私とネーネシア嬢は友人だ。出世払いと貸し一つとして劣化版を一振りではどうであろうか?」
「姫様、ネーネシア嬢と会うのは今日で二度目と聞いていますが?」
ゴリ騎士様は騎士様に胡乱な視線を向けますが、騎士様に悪びれるご様子はありません………。
うわぁ………、コレはきっとアレです。師匠が何度も言っていた、
『良いかしらネーネシア。貴族なんて大抵、
俺の物は俺の物、お前の物も俺の物!
とか言うメチャクチャな
てヤツです………。
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