第2話 芋娘、貴族のジト目にタジタロス。
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみません」
「………い、いや、良い。良くは無いが、一旦良い。それよりもネーネシア嬢、怪我? などは………」
「あ、お、思ったより剣が脆かったのでケガは全ぜ……、ハッ! すみません………」
砕けた剣を見つめたまま微動だにしないゴリ騎士様に申し訳が無いのと、お貴族様の物を壊してしまった恐ろしさに、私はもぅ泣きそぅです………。
「クゥ!クゥ!」
「と、ところでネーネシア嬢、その子ドラゴンは………」
そんなアワワ………な私に、クゥ!クゥ! と
「ハッ! お下がりください姫様!!!」
と、再びゴゴゴ! を取り戻したゴリ騎士様に女性騎士様がまたしてもドン! と突き飛ばされます。
「このバルキス・バルドス、例えドラゴンに愛刀を砕かれようとこの身を盾とし、御身を必ずお守り致ぁす!!!!!」
「痛たたた………、一旦落ち着かれよバルドス卿。
見たところその子ドラゴン、ネーネシア嬢に懐いて見える。後、卿のオリハルコンの大剣を砕いたのはドラゴンでは無く、ネーネシア嬢だ」
「ハハ、ご冗談を姫様。テイムが出来るのは
「ア、アハハ………」
「ク───!」
私はカラカラの愛想笑いを返すと、騎士様の未だ解かれぬゴゴゴ!!! が怖いので、先にクーちゃんの用事を済ませる事にしました。
「クゥ♪♪♪」
「ほぉ………? ヤ、ヤーシの実は下手な刃物では全く刃が立たぬと聞くが………、そ、其方はそれを
「おぉ、ネーネシア嬢。その魔力の流れ、エアロエッジの様にも見えたのだが、一体?」
「も、申し訳ございません。学が浅いもので、き、騎士様の仰る・えあんろえっぢ??? が、どの様な
コ、コレは我々庶民の間では、
やはりお貴族様には庶民の魔法は馴染みが無いのか、ゴリ騎士様に女性騎士様もフルフルとクビを横に振っています。そんな私の居た堪れない様子はまったく無視で、クーちゃんは甘酸っぱなヤーシの実を美味しそうにパクパクペロペロと可愛いです♪♪♪
「それで話を戻すがネーネシア嬢。そのドラゴンの子は、一体? よもや飼っているワケでは無いのであろう?」
「か、飼うなんてそんな!!! この子、クーちゃんは、え、ええと………。
『ク、クレセント、バーゲンセールコールタールファナティックイノセントヴォーパル………?』
い、以下略で、私は憶え切れないのでクーちゃんと呼んでいますが、三年程前から彼方の砂漠地帯の奥地にある大峡谷に住み着いた銀鱗の古龍の子供です。
ま、まぁ
「こ、古龍の子と友………か。その様子では、一応危険は無い様にも見えるが、にわかに…………」
私の苦しい説明に漸くゴリ騎士様のゴゴゴ!!! が収まって来た所で、
「お下がりください姫様ぁぁぁぁ!!!」
「ウワァァァァ!」
今度は村の砂漠側からモモモと這い出て来たサンドリザードさん達の群れに、女性騎士様がまたしても突き飛ばされました………。
ゴリ騎士様が姫様ぁ! と呼んでいるので、た、多分主従の間柄とは思うんです。思うんですが、アレは良いのでしょうか? ゴリ騎士様の無駄に強い『お下がりください!!!』 に、女性騎士様はゴロゴロと無駄な埃とダメージを受けている気がするんですけど………。
「例え素手で古龍には敵わずともこのバルキス、砂蜥蜴の10や20には負けはしま………」
「あ、お疲れ様です。今日もありがとうございました♪
彼処の木箱にお礼の鉱石芋の詰め合わせが置いてあるんで、持ってってください。で、こっちの木箱はクーちゃんのヤーシの実で、この上の袋は古龍様に頼まれていた湧水魔法付与の魔石(超特大)が入ってますので、直に触って魔力吸われない様に気を付けてくださいね、死んじゃいますから。
後、すみませんが今日は来客中ですので、村には極力入らない様にと皆さんに伝達をお願いします」
「モ。」
「ほら、クーちゃん。お迎えだよ?」
「ク?」
「うん。ヨシヨシ、また明日ね♪」
「クゥ♪」
「「「「「モ」」」」」
「はい、皆さんも本当にありがとうございました。またお願いしまーす!」
騎士様にはし、失礼かな? とは思いましたが、私はなるべく足早でサンドリザードさん達とクーちゃんをお見送りしました。よし! コレで大丈夫♪大丈夫♪
「………」
「で、ネーネシア嬢、今の
「へ!? え、ええと………」
なワケ無いですよね、ハハ………。
お二方に向けられるジトリとした視線。特にゴリ騎士様からのゴゴゴ!!! も加わった無言のジト────、からは逃げられそうにありませんよ師匠…………トホホ。
**********
「な、何と!!!? 砂漠の灌漑にモンスターの手を借りている、だとぉ!!!!!?」
「そんなバカな、第一モンスターとテイム以外で意思の疎通などは………」
「………は、はい。あ、い、以前はこの村も、モンスターとは殺るか殺られるかのごくごく普通なDEAD OR DEADの関係だったのですが、こ、古龍様が渓谷に住み着いてからこの辺り一体がその魔力の影響下になったそうで……、全体的に知能が上がった? と言うか、丸くなった? と言うか? そのぉ、か、簡単に言うと少しモンスター達が知的に進化したみたいで。
特に古龍様と和解してからは、
「一応、あり得ないという自覚はある様で安心した………」
「姫様。未だに我が目が信じられませんが、コレは恐ろしく重大な事案ですぞ。
確かに古龍は人語を話しますが、アレ等は人を餌以下の塵芥にしか見ていない。そんな存在と交渉したどころか、友好を結ぶとは是非我が国の今後の為にも参考にしたい!」
仕方なく、実際にサンドリザードさん達に掘り起こして貰った畑(予定地)へ案内すると、お二方は驚いたり呆れたり興奮したりと忙しく顔色を変えています。特にゴリ騎士様は詳しい話を聞きたいと鼻息が近いです………。
「あ、ええと………、わ、私達は偶々古龍様に気に入られただけで運が良かっただけだと思います。それに友好を結んだ一番最初に言われています。
『小娘、貴様は我が娘のお気に入りだから特別だ。だが、もしも貴様の元で我が娘に何かがあれば、我は必ずこの王国諸共全ての
と」
「な、なんと、そのような………」
「ほほぉ〜ん、それはそれは危ない所であったなぁ、バルドス卿?」
「グッ………」
私の話にフンフンと上がっていたゴリ騎士様の
『良〜い? ネーネシア、貴族ってのは執念深いから気を付けなさぁい。もし貴族相手に粗相したらぁ、逃げるか消すか、もしくは同等以上の物で黙らせるの。
貴族なんて大抵キラキラした物に目が無いから、魔法で特大の宝石でも適当に錬成しとけば一殺よん。オ〜ホッホッホ♪』
私は此処ぞと師匠の教えを思い返しながら声を上げます。
「あ、あの! も、もし宜しければ、私が砕いてしまった剣、弁償させてください!」
と………。
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