アンドロイドは夢を見るのか

夏空蝉丸

第1話

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 スタートはいつも同じ。地球の砂漠。南なのか北なのか、東なのか西なのか、何処なのかわからない。人間世界は既に滅びていて、莫大な砂ばかりと化した惑星。そこで僕は彷徨っている。


 一度だけ海を見たことがある。全てのものを焼き尽くすような殺人的な太陽光を煌めかせ、大きな波音を繰り返し続ける存在。僕は、もう、この旅を止めて、海の中に沈んでしまおうかと思った。もう、この地球上で誰にも……、いや一匹のネズミにすら会えないのであるならば、この僕に存在している意味などないのではないか。そう考えたのだ。


 それでも、僕はその選択肢を選ぶことはなかった。自ら死を求めることなど許されていなかった。と言うのも理由の一つだ。だが、実際にはもっと現実的な理由が存在する。


 と言うのも、僕はその選択肢を選ぶことができないことを知っていたからだ。つまり、それは夢、だと知っていたのだ。僕が辿り着いた海は、昼も夜も潮位が変わらない。波の音はするけれど、磯の匂いすら全くしない。まがい物の海だったとわかっていたのだ。


 勿論、この世界から海が消滅したわけではない。このまま歩き続けていれば、いつかは海にたどり着くことは間違いない。そして、それは時間の問題であることは明らかだ。


 ただ、不思議なことがある。僕の計算ではかなり昔に海にたどり着いているはずなのだ。この地球が四万キロメートルだとしたら、百周くらいしていてもおかしくないはずなのにちっとも海を見ることができない。


 何故なのだろうか。とても不思議に感じている。きっとセンサが狂ってしまったに違いない。真っすぐ歩いているはずなのに、どこかで方向がずれてしまい。円を描くように歩いているのだろう。


 川でもあれば、その道筋に歩くことができるのに、残念ながらここは砂ばかりの世界だ。僕は蟻地獄にとらわれられたかのように、この砂山から逃げ出すことができない。全く困ったものだ。


 僕はあの人のことを思い出した。もう、顔も声も記録に残っていない。ただ、あの人がいるとほんわかとバラの匂いが漂っていたことだけは記録している。もう、匂いを感じるセンサは劣化してバラを判断するのは不可能になったから、情報としては何の意味もないのに。


 だから、今晩、僕はこの情報を消そうと思う。ガーベージコレクションゆめを見ようと思う。きっと、これであの人に関する記録は完全に消滅する。でも、それでも構わない。僕はあの人の命令を守り続ける。あの人がデータ上から無くなったとしても、守り続けるのだ。動き続ける限り。

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