無敵の男

鳥尾巻

むてき

オレは無敵の男だ。

オレに敵う奴はいない。

 

オレが少し微笑むと女はめろめろになり、

少し睨みを利かせるだけで男は足元にひれ伏す。

この世に二人といない、比類なきオレ。

言うなれば天下無双。

なんでも望むがまま。


今日も布団の上に大の字になって寝ていると、

オレの側仕えの女が部屋に入ってきた。

ちょっと寝不足なのか、疲れた顔をしている。

よく労われ。

体が資本だぞ。

オレが優しく女の手を握ると、

彼女は嬉しそうに微笑んだ。


ほらな。

女はオレにめろめろだ。


しかしこの女が倒れたら、

オレの世話をするのはあの召使一人になってしまう。

あいつはイヤだ。

慣れていないのか細かい気配りはしてくれないし、

たまに変な顔をしたり、おかしなことをする。


ああ、腹が減ってきた。

女に飯を催促すると、

慌てて台所に走って行く。


なぜかその間に、男がやってきて、

オレの機嫌を取ろうとする。

おまえ、うるさい。

あっちいけ。

変な唄うたうな。

オレが怒ると、男はオレの足元に跪いた。


そうだ。

それでいい。


あ、な、なにをする。

足を持つな。

服を脱がすな、このへんたい。

下半身をはだかに剥かれ、

あまりに情けない姿にされたオレは泣き叫んで女を呼んだ。

女はオレを助けにすぐに現れた。









「あらあら、どうちたんでちゅか?」

「オムツが濡れたわけじゃないみたいだね。お腹が空いてるだけか」

「はーい、ミルクできまちたよ」


オレは女に抱き上げられ、哺乳瓶の先を口にあてがわれる。

くっ、なんたる屈辱。

しかし背に腹は代えられぬ。

こやつらの処分は腹ごしらえしてから考えよう。


このミルクというやつはうまい。


「たくさん飲んだね。げっぷしよっか」

やめろ、おまえはイヤだ。

バタバタしてみたが、

男に難なく縦抱きにされ、背中をとんとんされる。


げふぅ。


オレは布団の上に戻され、

手足をバタバタ動かして、

召使と側仕えに満足の意を伝えた。


「かわいいダンスでちゅねぇ」

「ほんとだねえ。かわいい。この子は僕が見てるから、君は少し休んでおいでよ」

「ありがとう」


たしか、おまえの名前はパパだったな。

そっちのママという女は疲れているようだから、

特別にオレの傍にいることを赦す。


よきにはからえ。

オレが笑うと、彼らは顔を見合わせて喜んだ。




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無敵の男 鳥尾巻 @toriokan

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