私には不釣り合いなダイヤモンド
@sanomegumi
私には不釣り合いなダイヤモンド
元彼と出会ったのは大学の新入生歓迎会の飲み会だった。明るく楽しそうに話す姿は、自信に溢れキラキラとしていた。また会話の端々から家族仲の良さも伺え、とても愛されて育った人だという印象を受けた。私は一緒のテーブルを囲んだ僅か一時間で、すっかり彼に惹かれてしまっていた。
そして約一年後、幸運にもその彼とお付き合いできることになった。私にとって初めての彼氏だった。
彼はおしゃべりが好きな人で、いつも淀みなく話した。大きな声で笑う彼につられて、私もよく笑い、笑顔溢れる毎日だった。
しかし、徐々に喧嘩が増えていった。彼は誰にでもフレンドリーなタイプで、悪く言えば人との距離を詰め過ぎるために、友人とのトラブルも多かった。恋人ともなれば尚更距離は近く、プライベートな領域を土足で踏み荒らされると、私は我慢ができなかった。育った環境が違う、ということをもっと意識して欲しかった。
私は彼ほど愛されて育った人をこれまで見たことがなく、その幸福な家庭環境を物語るかのような屈託のない笑顔や素直な人柄に惹かれ、憧れていた。感情の一粒一粒が輝いていて、純度の高い喜怒哀楽を躊躇うことなく表出させる彼はとても眩しかった。
しかし、私には眩しすぎたのかもしれない。真っ直ぐな瞳で語られる正論は私を追い詰め、彼への純粋な憧れは、いつしか妬みや憎しみへと変わっていってしまった。
彼に私の痛みは分からない。隣にいればいるほど、自分が惨めに思えた。勝手に比較して傷ついて、痛みを知らない彼をなじった。好きだけれど、側にいることが辛かった。
別れた後のある日、私は戸棚の奥にダイヤモンドのネックレスを見つけた。
記念日に彼からもらったものだ。最初こそ喜んで身につけていたが、普段Tシャツにジーンズ姿の私にはあまり身に着ける機会がなく、とうとう奥にしまいこんでしまっていたのだ。
今でもお店でキラキラとしたモノを思わず手に取ってしまうことがある。自分には似合わないと分かっていながらも、美しさに惹きつけられてしまうのだ。
しかし、私はもう分かっている。美しいものを身につけても自分自身が美しくなれるわけではないと。また、一時身につけたとしても、美しいものと自分を比べてしまい、その差に悩み傷ついて、結局は手放したり距離を置いてしまうということを。
私が今身につけているのはシンプルなピンクゴールドのネックレスだ。ダイヤモンドのネックレスと比べたら華やかではないかもしれない。しかし、ピンクゴールドは肌馴染みが良く、身体の一部のように私の肌にすっと溶け込んでいく。
これからもダイヤモンドを見る度に、思わず目を奪われはするだろう。しかし、私が愛着をもっているのは、必死に働いて買ったこのネックレスだ。
私はダイヤモンドのネックレスを元の場所に戻し、戸棚をそっと閉じた。
私には不釣り合いなダイヤモンド @sanomegumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます