13話 閑話 うんちく その5

うんちく その5


 付与魔法エンチャントについて


 魔法の力でもって物や事象に対して特別な効果を付与する、これがエンチャントの付与魔法である。

 代表的な例を挙げれば鎧や盾の耐久性を上げたり、とおの水晶球の可視化範囲の拡張などがある。

 武器に対しては雷撃付与が非常に効果的。これは攻撃した相手に対して電撃による麻痺効果を与えることができるからである。

 一対一ではまず敵なし。ほとんど反則である。


「ウチの剣撃は宇宙一だっちゅーねん!」


 これはかつて変な訛りで知られた女剣聖が残した余りにも有名な決めセリフ。

 この剣撃という言葉の裏に、雷撃の付与魔法が隠されていたことは今さら説明するまでもないだろう。ネタが割れた今となってはとんだエセ剣聖である。

 但し魔法の素質は本物。エルフでもない者に雷撃の付与などそうそう出来たものではない。


 魔法によるエンチャントには四段階の階梯かいていが存在する。

 付与魔法の第一階梯は、その物が持つ本来の能力を少しだけ強化するというもの。

 効果は僅かではあるものの、これで防具が矢を通し難くなるのであれば生存率はグッと上がる。


 第二階梯はその物を構成する素材自体を、全く別の物に変化させるというものである。

 『布の服』が『まるで鎖帷子』に変わると言えば、効果のほどは容易に想像できよう。初めっから着てこいよという話ではあるが。

 またその逆の場合もこれに相当する。それは本来の姿を偽って、一時的に別の物に偽装するといった場合である。


 第三階梯は特効能力。特定の種族や物質、または魔法や事象に対してで特別な力を発揮するというものである。

 だがこれに関しては今なお原理がはっきりしていないものが多い。

 ではどうして行使できるのかと疑問に思うことだろう。これに関しては付与術師曰く、「システムとしては確認されているから使うよ?」「何か問題でも?」とのことであった。ううむ。

 因みに冒頭部分で紹介した遠見の水晶球に強化と竜特効の付与を重ね掛けしまくったとしたらどうなるか。界隈では竜玉探知機ドラゴンレーダーなるものができないとかできないとか。もしあなたがドキワクなアドベンチャーをご所望な冒険者なら無し寄りの無し。


 第四階梯は魔法の付与である。

 分かりやすい例として、剣にフレイムシュートの魔法を付与した場合を挙げるとしよう。効果は想像の通り。剣を振るえば火の玉が飛んでいく。

 刀身自体にフレイムそのものを掛ければ炎を纏った剣、即席フレイムタンの一丁上がりである。焼肉調理が捗る捗る。せつなら絶対しないけど。


 第三階梯、第四階梯までできればいっぱしの付与術師。

 ちなみに第二階梯以上のものを複数同時に付与するのがマスタークラスエンチャントと呼ばれるものである。エンチャンターの花形と云えよう。


 ここからは完全に余談となるが、ゴブリンの勇者カルスが手にした剣は、この四階梯の付与全てが掛けられたものであった。

 まず勇者カルスが手にしていた剣は青銅の剣などではなく、宝剣フロッティに魔法による擬態が付与されたものであったのである。

 巫女のティアノートが解除リリース魔法をかけた(正確には魔法によるロック外し、物質変換の付与を解いた)ことにより擬態が解け、それをキーに新たに強化、物質再構成、特効、更に二つの魔法、風魔法真空波(ソニックウェーブ)と閃(スラッシュ)の付与が発動したのである。


 おさらいしよう。宝剣フロッティに掛けられていた付与魔法は計六つ――。

 まず第二階梯付与の擬態である。宝剣をなまくら青銅剣だと偽っていた。

 その解除をキーに発動するように重ね掛けされていたのが第一階梯の強化と第二階梯の物質再構成、これによってフロッティは刀身が青白く伸びて見えるようになった。

 そして第三階梯の特効性能(ドラゴンキラー)と第四階梯、二つの風属性魔法、真空波(ソニックウェーブ)と閃(スラッシュ)の獲得である。


 老ダークハイエルフが施したマスタークラスエンチャントがどれほどのものであったかを、窺い知ることができたことだろう。

 ちなみにこれほど重ね掛けされた魔法の解除及び発動には、本来それ相応の魔法技術と魔法力が必要となる。

 それをほとんど負担が掛からない形で実現させたティアートには、明らかにされていない秘密があった。しかしここでは割愛させて頂くこととする。

 以上である。

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