京都旅行 4
「おっきいお風呂も良かったし、晩ご飯も美味しかった〜」
おっきいお風呂に入ったついでに浴衣に着替えて、布団を早速敷いて、大の字で寝転ぶ。
「刺身とか鍋とか天ぷらとか色々出て来て美味しかったわね」
いや〜。本当に美味しかった。今日は本当に最高の誕生日だ〜。こんなに美味しい物ばっかり食べられて幸せ〜。
そう言って大満足している私の隣に侵入してくる優真。
「ちょっと、狭い〜」
「どうせ一緒に寝るんだから、良いでしょ」
「寝るが本当に違う意味にしか聞こえない〜」
「違う意味の事をするんだから、良いじゃない」
ぐぬぬ……。フィジカル強すぎて、押してもビクともしない。
「紫亜」
「……なに〜」
「好きよ」
そう言ってキスしてくる。優真に愛おしそうな瞳をされて言われると目を逸らせない。
「そんなの……私の方が好きだもん」
ずっと、ずっと出会ってから、私の心を開かせてくれた。そんなあなたが好き。
「今日いっぱい食べたわよね」
「うん。大満足〜」
「本当に幸せそうな顔」
「そりゃあ、大好きな人と来てるからね〜」
「そ。それは嬉しいわね」
おでこや頬、鼻、首筋、鎖骨にちゅっとキスをされていく。
「ん〜。もう。手が早くない?」
「だって、早く抱きたいし」
浴衣に手を差し込まれて、私の帯はもうゆるゆる。
「最近の優真って私を抱きたがるよね〜」
よく考えたら、付き合う前はれーなちゃんの代わりに私を抱く事以外は嫌な事や発散したい事があるから抱けって受け身だった。
「私、好きな人には尽くしたいのよ」
「え、」
「紫亜が私に気持ち良くなってる顔を見るのが好き。紫亜も私に触りたいなら、……抱かれても良いけど、それをされたら紫亜は二倍、私に気持ち良くなってもらわないと気が済まなくなるけどね」
私を組み敷いて、にっこりと綺麗な顔で微笑んでとんでもない事を言うフィジカル激強女。
「え、えぇ〜。そりゃあ、優真に私も触りたい……事はそうなんだけど、それ、結局私が抱かれてない?」
「そうよ。私、言ったでしょ。好きな人には尽くしたい、って」
ちゅっと軽いキスをされたと思ったらどんどん深くなる。浴衣の中から差し込まれた手が背中の素肌に触れる。
「……んっ」
背中を撫でられて声が出てしまう。
私を触る手が本当に大事にしてくれている感じがして、暖かくて好き。
「ねぇ、紫亜」
耳元で好きな人の好きな声で囁かれる。
「好き。好きだから、紫亜の誕生日が終わるまで、たっぷり愛していい?」
ぶわっと身体中、熱くなるのが分かる。
……ずるい。嬉しい。そんなの答えが分かってる癖に私に判断を委ねる優真がずるくて、大好き。
「良いに決まってるでしょ。私も……、私も大好き。愛してるんだから」
「ふふっ。覚悟してね。私でいっぱいにしてあげるから」
そう言って深くキスをされて、満たされていく。
ふわっとブラが浮いた感覚がしたと思ったら、優真にホックをもう外されていた。
下着に優真のスラッとした指先が入ってくる。
「もう大洪水ね。痛くなる心配なさそう」
「そりゃあ、優真に触られてるんだから、そうなるよ」
だって、触られてて気持ち良いし。
私の言葉に優真は嬉しそうな表情をして、目を細める。
「そ。それなら、いっぱい触ってあげる。いっぱい愛を囁いてあげる。紫亜が私の愛で満たされるように」
とんでもなく恥ずかしい事を言ってるくせに顔が良いから、様になってる。本当にずるい。ずるい。嬉しい。
私の心臓がとんでもなく高鳴ってて、心臓が苦しくなる。
指を差し込まれて、ゆっくりと私の様子を見ながら、指先が動く。
「ねぇ、」
「……はぁっ……なにっ……」
「愛してる」
ちゅっと軽くキスされて深いキスに変わる。私は答えられない。余裕も理性もどんどん蒸発していくように消えていく。
「紫亜、大好き」
気持ち良い。
優真の声も心地良い。掠れて低いこの声が好き。大好きだ。
「今日のこの日を忘れないで。最高の誕生日だったって、覚えていて」
忘れない。覚えてる。だって、優真がこんなに私に愛を囁いてくれて、愛してくれているから。
……本当に最高の誕生日プレゼント。
優真がくれる感覚がもう気持ち良くて、気持ち良くて頭の中が真っ白になる。それから、ゆっくり身体から力が抜けていった。
ぐったりしていると優真は私の頭を撫でてくれる。それが気持ち良くて落ち着く。
「紫亜」
「……なに〜」
「まだ、誕生日は終わってないわよ」
「へ?」
ちらりと時計を見る。まだ誕生日が終わるまで二時間以上くらいある。
「言ったわよね。紫亜の誕生日が終わるまで愛してあげる、って」
そう言った優真の表情は眩しい程の笑顔で、私は逆に青くなる。
「そうは言ってたけど、比喩表現くらいのノリで思ってましたというか……なんというか……」
私とは正反対に全然涼しい顔をしている優真に私はゴクリと息を呑む。
「紫亜、」
「な、なに〜」
「まだまだたっぷり愛してあげる」
「お、お手柔らかに〜」
私はぼんやり明日、生まれたての子鹿の様になるかもと覚悟を決めて優真を受け入れる。
……でも、優真に触られるのは気持ち良くて、暖かくて、身体の疲れとは正反対にどんどん心は満たされていった。
「こっちのお風呂もいいね〜」
早朝。私達は客室内露天風呂で朝風呂に入っている。
昨日結局疲れきった私はそのまま寝てしまった。……優真はピンピンしてたけど。本当に体力差を感じる。私はまだ筋肉痛だ。
「そうね。こういう客室内露天風呂の良いところは好きな時間に入れる所ね」
リラックスして伸び伸びしてる優真。確かに源泉垂れ流しだし、外は肌寒いけど、温泉に浸かってればポカポカする。
「優真はあの後、入ったの?」
私はもうダウンしてたけど、優真は元気そうだったし、入ってそう。
「入ってないわよ。だいたい紫亜のオマケで付いてきた奴が紫亜より先に入るのもなんだかな……と思って、私もそのまま寝たわよ」
「意外と気を遣ってくれたんだね」
「意外とは何よ。意外とは」
そう言って軽くおでこをデコピンして、優真はまた浸かり直す。
「ねぇ、紫亜」
「なに〜」
温泉に浸かって、気持ち良い湯加減にだらけきっている私。返事も心なしかそうなる。
「紫亜の名前ってここから取られたの?」
優真の疑問、それは多分私がここの旅館は私の本当の両親の思い出の場所って言ってたからだと思う。
「うん。そうだよ〜。ここの旅館から一文字貰ったんだってお父さんとお母さんに聞いた〜」
ここの旅館の名前が「紫乃」だしね。
「ふーん。そ」
「あ、自分で聞いてきた癖に興味無さそう」
「興味無い事はないわよ。恋人の話だもの」
優真が私の腰をグイッと抱いて来て、結構肌が密着する。
あまりにも不意打ち過ぎてピクりとそんなつもりは無いのに身体は反応してしまう。
「ちょっ、ちょっとぉ〜」
流石にもうこれ以上は無理だと優真の肩を押そうとするも、やはりフィジカル激強女。ビクともしない。ただ私がバシャバシャ水遊びしてるだけに見える。
「いや、ここではしないわよ」
私が何に焦っていたのか見透かしていたのか、穏やかな声で答えてくれる。
「そ、それなら良いけど〜」
ただでさえ、優真が昨日私を愛してくれた印が私の身体に残ってるのに、これ以上痕を付けられたら、この後見る度に鮮明に思い出しかねない。
昨日は本当に……いや、今、思い出すのは辞めておこう。我ながら恥ずかしい。ここで思い出すと本当に色んな意味でのぼせそう。
それから、お風呂から上がって、まだ朝食まで時間があるので大浴場の隣にあったゲーセンコーナーでエアホッケーで遊ぶ。
「ちょっ、優真強すぎ」
「ハンデとして一回でも私の所に入れられたら紫亜の勝ち。良いものあげるから頑張りなさい」
「え、本当!? がんばる〜」
「本当に現金ね」
よし。頑張るぞ〜。
良いものが何かは知らないが、優真はそういう嘘はつかない。だから何かは気になる。
一生懸命、何回優真に点を入れられようが私は優真に一点入れればいいので、かく乱させるように反射させまくって攻撃する。優真の隙を狙って、攻撃チャンスを待つ。
「あ、」
「やった〜!!」
優真はうっかり、攻撃しようとして、振りかぶって勢いよく自分の方に入れてしまった。
「ちょっ、」
「自分でやっちゃったやつでも私の点だから、それでも一点は一点だよね〜」
「……はぁ。まぁ、いいか」
自分で言った事だし仕方ないと切り替えたのか、それからはそんなミスはなく、私の完敗。文字通り優真のミスで入った点しか入れられなかった。
「で、良いものってなに〜」
部屋に戻って、朝食も食べてから、早速優真に聞くと、優真がお土産の紙袋を漁ってからくれた。
「はい。昨日あんたが値段が可愛くないってボヤいてたお饅頭」
「え、いつ買ったの!? あの時はもう買ってたよね??」
「元々、この値段なら紫亜は手を出せないだろうなと思って買ってたのよ。これを買うなら、他のお土産二つ分買うだろうし」
私の性格をよく理解してる。確かにこれなら、他のお土産買うかも〜と諦めた事は事実だ。
「でも、私が買ってたらどうするつもりだったの〜」
「そしたら、紫亜の家族にどうぞって言ってた。……まぁ、紫亜のお陰でここに来れたし、紫亜の家族にありがとうございましたって渡すお土産は買ってるんだけど」
「律儀だ〜」
「いや、代わりとはいえ、来させて貰ってるからそれくらいはするわよ」
まぁ、何だかんだ優真ってそういう所は律儀だしね。やらないとまず優真のお母さんから怒られてそう。
「後、これ」
そう言って優真が渡してくれたのはたい焼きのキーホルダー。
「え、なにこれかわいい〜」
本物のたい焼きよりひと回り小さいたい焼きの食品サンプルのキーホルダー。どことなく可愛い。
「喜んでくれたなら良かった。前にネットで見掛けて、何となく紫亜が喜びそうだって思って買っといたのよ」
「え、わざわざネットで注文してくれたの?」
「元々いつあげようか悩んでたんだけど、紫亜が昨日誕生日だったし、あげるチャンスだと思って、旅行の準備をするついでに持ってきたの。……でも結局昨日あげるの忘れてたから、ダメね。私」
そう言って苦笑する優真。でも、気持ちは嬉しい。
……何となく似合いそうだと言って、くれたこの白猫のピアスの事を思い出す。
「なんかそうやってこの白猫のピアスもくれたよね〜」
今日は付けて来たので、髪を耳に掛けて、白猫のピアスを優真に見せる。
「……なんか、嬉しいわね。紫亜が喜んでくれるの」
優真は私の右耳に付けてる白猫のピアスに優しく触れて目を細める。
「あ、でもこれを誕生日プレゼントにするのはどうかと思ったから、悩んだ……んだけど」
私は首を静かに振る。
「え〜。こういうのは気持ちだと思うから、優真からのプレゼントならなんでも嬉しいよ?」
「そ、それなら良かった、けど」
少し照れ臭そうな優真。こういう優真は珍しい。
……こういう珍しい顔の優真を見られるのも、私の、恋人の特権なのかなと嬉しい気持ちになる。
「……それに誕生日プレゼントはもう他にも貰っちゃったから」
「……何かあげたっけ?」
本気で首を傾げる優真に顔が真っ赤になってく私。
「そ、それはその……昨日の夜……というか! これ以上言うの恥ずかしい!!」
私の反応に何かを察したのか、不敵な笑みを浮かべる優真。
「昨日、紫亜をたっぷり愛してあげたものね」
「もう言わないでよ〜!!」
悪戯っ子のような顔をして、私の頭を撫でてくれる。
「もう〜。からかってる〜」
「ごめんごめん。紫亜が可愛くて」
そんな事を言われたら、余計に顔が熱くなる。
「ふふっ。紫亜、ゆでダコみたい」
「も、もう〜っ!!」
そんな私を優真はまたからかってくるのだった。
旅館も出て、お昼を取った後の帰りの新幹線。
「シンカンセンスゴイカタイアイス〜」
「また頼んでるの? それ」
「うん。今度はホットコーヒーも!」
「そ、ならいいわね」
そう言って優真は一緒に頼んでいたミネラルウォーターを飲んでいた。
やっぱり、昨日は私の為にわざわざホットコーヒーを頼んでくれてたんだ。
「ん? どうしたの?」
「ううん。シンカンセンスゴイカタイアイス、美味しいな〜って」
「そ、良かったわね」
優真はそう言って微笑んでくれた。
何だかんだ優しいんだから、優真は。
家に帰ってから、優真から貰ったたい焼きのキーホルダーは家の鍵に付けようかなと思うのだった。
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